TOPページ知財情報【Cases & Trends】  米連邦最高裁の最新判決 - 特許権の消尽理論に関するCAFC大法廷判決を全面的に覆す

【Cases & Trends】
 米連邦最高裁の最新判決 - 特許権の消尽理論に関するCAFC大法廷判決を全面的に覆す

2017/06/20 判決/事例紹介 米国

消耗品ビジネス/アフターマーケット戦略のあり方に影響を及ぼす重要事件として注目されていた、レックスマーク社のインクカートリッジ特許訴訟に対する連邦最高裁判決がついに下されました。連邦最高裁は2016年に下されたCAFC大法廷の判断をことごとく覆し、徹底した権利消尽論を打ち出しました。
(Impression Products, Inc. v. Lexmark Int’l Inc., No.15-1189 (5/30/2017))

最初にその徹底ぶりを示す一節を抜き出しておきます。
『(特許対象)製品を販売するという特許権者の決定は、その製品に存する特許権のすべてを消尽させるものであり、特許権者が(最初の販売時に)予め何らかの制限/条件を課していたか否か、あるいはその製品が(国内外)どこで販売されたかには関係ない、と当裁判所は結論する』


[事案の概要]
原告レックスマークは、プリンタ用インクカートリッジを製造し、米国内外で販売している。レックスマークはインクカートリッジおよびその使用に関連した特許を保有しており、カートリッジの販売に際し、次のような方法をとっていた。

・購入者に二つの選択肢を提示
「レギュラー・カートリッジ」…定価で販売(購入後の使用について制限なし)
「リターンプログラム・カートリッジ」…20%ディスカウントする代わりに、「一回限りの使用/再販禁止」制限の対象になることを製品ラベル上に明記。

レックスマークは、インクカートリッジ再生業者である被告インプレッションの以下の行為がレックスマークの特許を侵害すると主張して提訴した。

・米国内で最初に販売したカートリッジについて
- 使用済みカートリッジの回収、チップ付け替え、インク再充填して米国で販売する行為
*条件付きで販売したリターンカートリッジのみを対象。レギュラーは不問

・米国外で最初に販売したカートリッジについて
- インク再充填カートリッジの米国への輸入、販売 
*リターンプログラム、レギュラーいずれのカートリッジも対象

[CAFC大法廷判決]
2016年2月に下されたCAFC大法廷判決では、(1)合法的条件付販売によって権利消尽論の適用が除外されうる、および(2)権利消尽論の適用はあくまで米国内で最初に販売された特許品に適用され、米国外での販売によって米国特許権が消尽することはない、という結論を出しました。

この判断の根拠になったのが、CAFC自身の2つの判例です。
・Mallinckrodt, Inc. v. Medipart, Inc. (976 F.3d 700(Fed. Cir. 1992))(合法な条件付き販売の場合、権利消尽論の適用が排除されうる)
・Jazz Photo Corp. v. International Trade Comm’n (264 F.3d 1094 (Fed.Cir. 2001))(国内消尽ルールを維持。外国で販売されたという事実だけでは米国特許権は消尽しない)

しかし、後に下された2件の最高裁判決によりこのCAFC判例が覆されたという被告側の主張を受け、CAFCは全判事で再検討することにしたわけです。
・Quanta Computer, Inc. v. LG Electronics, Inc. (553 U.S. 617(2008))(条件付き販売に対する適用除外を認めないという解釈が可能な広い消尽論適用を採用)
・Kirtsaeng v. John Wiley & Sons, Inc. (133 S.Ct. 1351(2013))(著作権事件ではあるものの、国際消尽論を採用)

上記の通り、CAFC大法廷は、最高裁の2判決にもかかわらず「我々の判例法こそいまなお有効である(Still Good Law)と結論づけたわけですが、今回の最高裁判決によりいずれの判例も “No Longer Good Law”と断じられたことになります。

[最高裁判決]
条件付き販売(リターンカートリッジ・プログラム)について
「特許権者が明示的で、本来合法的な制限を付して製品を販売したとしても、販売した製品に対し特許権を保持することはできない。本件に対し我が国の確立された法体系が認めている回答はただひとつである。すなわち、レックスマークは米国内で販売したリターンカートリッジについてインプレッションに特許侵害訴訟を提起することはできない。なぜなら、レックスマークはこのカートリッジを一度販売することにより、特許法を通じてこれらの製品を支配する権利を用い尽くしたからである」

ここで言っていることは、あくまで「特許法を通じて」コントロールできないということです。最高裁は別の箇所で契約法によるコントロールの余地を残しています。

「...特許権者が、購入者の使用や再販売の権利を制限する契約交渉をするのであれば、契約法上の問題としてかかる制限を実施できる可能性はある。特許侵害訴訟においてはこれをすることはできない、ということである」

国際消尽論について
この問題についても最高裁は徹底しています。
国内消尽論を堅持したCAFC判断を否定し、自身のKirtsaeng v. John Wiley & Sons, Inc.判決(著作権事件)を引用して、特許権についても同様の理屈が当てはまるとしました。
さらに、合衆国政府が提案した中道案(国際消尽論を採用しつつも、特許権者が明示的に権利を留保した場合を例外とする)をも退けました。


今回の判決により、消耗品ビジネスやアフターマーケット戦略において、特許権者が特許権を利用する余地が縮小し、代わりに契約法や独禁法、不正競争法を視野に入れた戦略がますます重要になるようです。

以上、いそぎ足で重要判決を紹介しました。原文はこちらですので、ご関心のある方は是非こちらでご確認ください。
=>https://www.supremecourt.gov/opinions/16pdf/15-1189_ebfj.pdf

(営業推進部 飯野)

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