TOPページ知財情報【米国トレーニー日記】 第13回:口頭審理(Oral Hearing)について

【米国トレーニー日記】
第13回:口頭審理(Oral Hearing)について

2017/07/24 米国 コラム 連載


独立記念日の花火

 弊社では米国ワシントンDCの特許事務所にトレーニーを派遣しています。米国トレーニー日記、第13回目は2017年3月より駐在中の飯島よりお送りします。

 米国における審査では、審査官の拒絶に不服がある場合に、出願人は特許公判審判部(PTAB:Patent Trial and Appeal Board)に審判を請求できます。審判において、審判請求人は口頭審理(Oral Hearing)を要求することができます。口頭審理は審判官合議体に対して口頭で意見を陳述する機会となります。今回はこの『口頭審理』についてご紹介致します。

 過去の記事において、弊社のトレーニーが米国特許庁へ訪問して審査官と直接面談した様子や、審査官と電話でインタビューした様子をご紹介しています。私自身、審査官インタビューにも同席しましたが、審査官とのインタビューと比較しますと、審判における口頭審理は非常にフォーマルです。例えば、服装です。特に決まりがあるわけではないようですが、インタビューに臨む担当弁護士はノーネクタイで比較的カジュアルでしたが、口頭審理の際はスーツにネクタイを着用していました。また、口頭審理が行われる会場には代理人等が待機する待合室があるのですが、そこの雰囲気には緊張感がありました。持参した案件のファイルを読み込んでいる弁護士や、ぶつぶつとつぶやきながらリハーサルをしている弁護士など、各々が集中力を高め準備しているようでした。

 口頭審理では、審査において提出し審査官に考慮された証拠や審判理由補充書(Appeal Brief)等で記載した証拠のみに基づく陳述しか基本的には許されていません。また、審判請求人側の持ち時間は20分です。よって、弁護士は、発明の内容、審査官の拒絶理由、引例の開示、提出した反論等の証拠などに基づき、審判官合議体に対して自らの意見を20分で説明する必要があります。さらに、合議体は弁護士の説明の最中に質問してきます。この質問は予想がつかないため、弁護士は上記の情報を整理し、あらゆる質問に答えられるようにしておく必要があります。私は口頭審理の前に、担当弁護士にどのように議論を展開するかの説明を受けていました。どのような説明をどのような順序でしていくか、強調したいポイントはどこか、こんな質問があるかもしれない、など担当弁護士の用意は相当入念なものでした。

 私は米国滞在期間中に2回口頭審理に同席することができました。その2回は担当弁護士が異なります。二人とも事前の準備が入念であることは変わりませんでしたが、口頭審理での振舞いには個性が見られました。一方の弁護士は、立て続けに勢いよく言い立てていき、エキサイトしている様子でした。他方の弁護士は、話すスピードは決して遅くはないのですが、ゆっくりと丁寧に説明している様子でした。いずれの口頭審理でも、審判官合議体から弁護士に質問がなされました。私が想像していた以上に合議体の質問は弁護士の議論を遮るもので、事前準備ができていてもなかなか想定通りにはいかないだろうなと思えるほどでした。

 口頭審理に同席したことを担当弁護士とは別の複数の弁護士に話すと、決まって「合議体から質問はあった?」と聞かれました。どうやら合議体からの質問があると、審決は審査官の判断を支持(affirm)、つまり拒絶の維持となることが多いようです。逆に合議体から質問があまりなく、確認程度の質問があるのみの場合は審査官の判断を破棄(reverse)、つまり認可となることが多いようです。あくまでそのような傾向があるという程度のものだと思います。私が同席した2回はいずれも合議体から質問がありました。審決としては、一方は破棄、もう一方は支持でした。破棄となった件で、口頭審理後に弁護士に感想を聞いたのですが、合議体からの質問は非常によい質問だったと言っていました。引例の問題点を確認するための質問であったため、それを回答することが発明と引例の差異、そして発明の効果を説明することにつながり、結果的に合議体の質問が議論の展開を好ましい方向へ導いてくれたようでした。また、審決が支持となった件では、口頭審理において合議体が発言した内容や審決として書面に示された内容から、クレーム補正の示唆が得られました。このように審決が好ましい結果とならなかった場合でも、審査差戻しによる権利化の可能性を確認できることがあります。

 以上のように、事前準備も含め口頭審理に臨む弁護士の作業内容及びその負荷を知ることができ、非常によい経験となりました。また、審決が拒絶支持であったとしても、そこから得られる情報に基づき、権利化可能な方向性を模索できることが理解できました。

(記事担当:特許第1部 飯島)

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