TOPページ知財情報【短期集中連載】欧州単一特許 =新制度の開始に向けて= 第5回:欧州視察報告-後篇-

【短期集中連載】欧州単一特許 =新制度の開始に向けて=
第5回:欧州視察報告-後篇-

2017/10/17 特許/実案 欧州 連載

=>第5回:欧州視察報告-前篇-はこちら


<欧州特許庁>
 情報収集のため、ミュンヘンに位置する欧州特許庁も訪問しました。特許庁の職員と無事面会できましたが、生憎、情報は全てコンフィデンシャルとのことでしたので、大変申し訳ないのですが、詳細は割愛させていただきます。

<特許事務所訪問>
 情報収集のため、複数の特許事務所を訪問して参りました。
 新制度の具体的な開始時期については、事務所ごとの見解にばらつきがありましたが、どの事務所でも一致していたのは、「ドイツの憲法裁判所の件の影響により、制度開始が遅れるであろう」ということです。一方で、イギリスのEU離脱については、ドイツの状況と比べたら制度開始への影響は低いであろうとのことです。
 また、欧州の企業が新制度をどのように受け止めているのかについてもお話を伺いました。欧州企業にとっては、自分たちが望んでできた制度ということもあり、新制度に対して好意的なようです。さらに、UPCの審査官という職業の魅力や待遇の良さから経験豊富な審査官が多く応募しているため、UPCが下す判断は信頼できるであろうという推測も働いているようです。また、移行期間(制度開始から7年、延長の場合あり)の経過後は全ての案件がUPCの専属管轄となりますので、重要な案件以外はオプトアウトせずにUPCの手続きに慣れておく、という考え方もあるようです。
 新しい手続きであるオプトアウトについては、どの事務所も開始に向けた準備はしているようでした。しかし、事務所方針等の最終的な決定は、規則やシステムが固まってからになるとのことでした。

<システム>
 オプトアウトの申請等に用いるCase Management Systemについて、新たなテストサイトが2017年10月9日に発表されました。今回公開された内容は、最終版にかなり近いようです。
 弊社では、現在、テストサイトの確認を進めております。

<まとめ>
 今回の訪問を終えての印象としましては、新制度開始に向けた準備は着々と整いつつあるものの、やはり肝心な批准プロセスが遅れているようです。そして、批准遅れの大きな原因となっているのがドイツの憲法裁判所のケースであり、知財とは異なるフィールドの話ですので、識者にとってもその結果を予想するのが難しいようです。

 では、いつ始まるのでしょうか?
 以下のタイムラインは、欧州の複数の特許事務所、及び、UPCの複数関係者からの最新情報等に基づき弊社にて作成したもので、UPC開始まで円滑に進んだ場合の予想タイムラインとなっています。

 2017年12月 イギリスがUPC協定を批准
        ドイツ憲法裁判所による決定
 2018年03月 ドイツ大統領がUPC協定批准に署名 => UPC協定の暫定適用フェーズ開始(※1)
 2018年09月 ドイツがUPC協定の批准書をEU理事会事務局に寄託 => サンライズ期間開始(※2)
 2018年12月 新制度開始


※1 UPCの暫定適用フェーズ(provisional application phase)は、UPC協定の一部を暫定適用することで、UPC判事の採用等、UPC開始に向けた準備を進める期間です。
※2 サンライズ期間は、UPC開始前に、オプトアウトの申請を可能とする期間です。サンライズ期間中に申請されたオプトアウトは、UPC開始日に有効と見なされます。



 実質5日間で3か国を周る旅ということで、タフではありましたが貴重な経験をさせていただきました。本連載の読者の皆さまからの数多くの反響のおかげで今回の視察が実現したといっても過言ではありません。ご愛読に感謝申し上げます。

 今後の最新情報や詳細な点につきましては、引き続き、弊社ウェブサイト及びメルマガにてお知らせしていきますので、ご期待ください!

(記事担当:特許第1部 田中)
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