TOPページ知財情報冷凍機や空調機に用いるHFO冷媒及び炭化水素冷媒に関する特許出願動向(前篇)

冷凍機や空調機に用いるHFO冷媒及び炭化水素冷媒に関する特許出願動向(前篇)

2014/11/17 特許/実案 技術動向

 モントリオール議定書や京都議定書の採択に応じて、冷凍機や空調機の分野においてもオゾン層破壊や温暖化など地球環境への影響の少ない冷媒開発の試みが続けられてきた。
 今後、空調機器用次世代冷媒として使用される可能性のあるHFO及び炭化水素系冷媒に関する特許出願動向の分析を行った。
 Based on adoption of the Montreal Protocol and the Kyoto Protocol, in the fields of refrigerators and air conditioners, attempts to develop refrigerants having little influence on the global environment such as ozonosphere disruption and global warming have been made.
In this report, we analyzed patent trends concerning the hydrofluoroolefin (HFO) refrigerants and the hydrocarbon refrigerants which may be used as the next generation refrigerants for an air conditioner in the future.
(Patent Landscape About HFO Refrigerants and Hydrocarbon Refrigerants Used for Refrigerators and Air Conditioners Part I)

 モントリオール議定書や京都議定書の採択に応じて、冷凍機や空調機の分野においてもオゾン層破壊や温暖化など地球環境への影響の少ない冷媒開発の試みが続けられてきた。
 空調や冷凍機に用いられる冷媒は、これまでR22などの特定フロン系冷媒から、R410Aなどの代替フロン系冷媒へと移行が行われてきた。代替フロンとして冷媒に用いられるハイドロフルオロカーボン(HFC)は、オゾン層破壊係数が0であるものの、温暖化係数(GWP)は依然として高く、今後さらに、オゾン層破壊係数が0で、GWPの小さい次世代冷媒の開発が注目されている。
 次世代冷媒の候補としては、炭酸ガス、アンモニア、炭化水素などの自然冷媒や、低GWPフッ素含有冷媒が挙げられるが、具体的に求められる次世代冷媒の条件としては、毒性がないこと、可燃性リスクが少ないことなどの安全性や、オゾン層破壊係数が0であること、温暖化係数がきわめて低いことなどの環境性が求められるとともに、LCCP(Life Cycle Climate Performance)が優れ、冷房時の性能がこれまでの冷媒と同等程度あること、妥当なコストで製造可能であること、などが挙げられる(1)。
 次世代冷媒の候補の一つとして、冷媒R32(ジフルオロエタン)が挙げられる。R32は、HFCの一つであり、現在空調機器の冷媒として広く用いられる混合冷媒R410AやR407Cの構成物質の一つであるが、単体でのGWPが675でR410Aの1/3程と低く、微燃性のリスクがあるものの作動効率が比較的良好で、安全面、経済面でも優れていることから、R32単体を作動冷媒とする空調機器が、既に商品化されている。
 また、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)も、GWPが低いことが知られており、次世代冷媒候補として注目されている。その中でも、R1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン)は、カーエアコンとして現在使用されるR134aの代替冷媒として、米デュポン社、ハネウェル社により開発された。EUにおいては,現在のカーエアコン用冷媒の主流であるR134aを、GWP が150 以下の冷媒に段階的に転換することを求めるカーエアコン指令(MAC)が2006年に既に発効しているが、この指令への対応として開発されてきた冷媒である(2),(3)。
 HFO冷媒は、微燃性のリスクがあり、高湿度条件では燃焼性が増加することや、圧損が大きいなどの問題点が指摘されるものの、無毒でGWPが低い(R1234yfはGWP=4)などの点から、上記欧州指令に基づき、カーエアコンへの導入が進められている。現在はまだ定置用の空調機器の冷媒としての実用例はないが、今後カーエアコン以外の空調での冷媒としても応用される可能性がある。
 その他、炭化水素系冷媒(イソブタン、プロパン等)も、代替フロンの転換候補として挙げられる。これまで日本の大手企業も積極的に研究開発を行っており、イソブタンを冷媒とする冷蔵庫など、既に実用化されている(4)。その一方、炭化水素は強燃焼性物質であり、爆発や火災などのリスクが高く、空調機器での冷媒としての適用に関しては、安全性が課題とされている。

特許出願動向
 上述のような技術的背景のもと、今後、空調機器用次世代冷媒として使用される可能性のあるHFO及び炭化水素系冷媒に関する特許出願動向の分析を行った。
 HFO関連特許及び特許出願とは、特許請求の範囲の対象が、HFOの製造や冷媒としての使用に関するもの、他の物質との混合冷媒に関するもの、潤滑油との組み合わせにより冷凍機油を構成するもの及びHFO(混合冷媒を含む)を冷媒として使用した冷凍機又は空調機(圧縮機、凝縮器、蒸発器等の冷凍、空調システム構成要素を含む)に関する特許及び特許出願である。
 同様に、炭化水素関連特許及び特許出願としての抽出対象は、特許請求の範囲の対象が、炭化水素単体を冷媒とするもの、他の物質との混合冷媒に関するもの、潤滑油との組み合わせにより冷凍機油を構成するもの及び炭化水素系冷媒(混合冷媒を含む)を冷媒として使用した冷凍機又は空調機(圧縮機、凝縮器、蒸発器等の冷凍、空調システム構成要素を含む)に関する特許及び特許出願である。なお、石油や天然ガス等エネルギー原料から炭化水素を抽出する技術は、抽出対象外とした。
[HFO冷媒]

(日本特許分析)
 本件技術に関連する830 件の日本特許を対象として分析を行った。日本特許の分析は、2014年10月時点で日本国内で存続中の特許又は出願係属中の特許出願を対象とした。
分析対象の830件中、HFO冷媒に関連する特許として619件、炭化水素冷媒に関する特許として284件を分類し、特許出願動向を以下にまとめた。(使用データベース:Shareresearch)

 分析対象の830件中、HFO冷媒に関連する特許として619件を分類し、特許出願動向を以下にまとめた。
 HFO関連特許について、本格的に出願が確認されるのは、2005年以降であり、2009年以降100件以上の出願がなされ、増加傾向にある。2012年以降の出願については分析時点で、図中未公開であるものが含まれる可能性がある点、ご留意頂きたい。
 次に、HFO関連特許について、発明の特徴が(1)冷媒自体に関するもの、(2)冷凍機油に関するもの、(3)冷媒の作動条件や取扱いに関するもの、(4)冷媒を使用した機器に関するものに分類分けを行った。各4分類での件数推移を下図に示す。


HFO冷媒特許日本特許件数推移


HFO冷媒特許日本特許技術分類別件数推移

 2005年以降、HFO冷媒自体に関する出願の増加がみられる。さらに、2008年以降は、冷媒自体に関する発明のみならず、HFO冷媒を空調機、冷凍機などの装置への適用した発明、作動条件等に関する発明が出願されていることが確認される。この点、HFO冷媒の実用化へむけた具体的な機器の改良に関する発明や、HFOを使用冷媒の一例として視野にいれた機器関連の発明が出願されていると推測される。
 次にHFO関連特許の各4分類での出願人ランキングを以下に示す。
HFO冷媒自体の発明に関しては、R1234yfの開発を中心的に行った米ハネウェル社が上位にあげられる。装置に関する発明については、日本国内空調機器メーカーも積極的に出願をしていることがわかる。

(1)冷媒(Refrigerant)
順位 出願人・権利者 件数
1 ハネウェル・インターナショナル(Honeywell International Inc.) 129
2 アルケマ(ARKEMA) 60
3 セントラル硝子(Central Glass Co., Ltd.) 40
4 メキシケム、アマンコ、ホールディング(Mexichem Amanco Holding) 36
5 イー・アイ・デュポン(E. I. DuPont) 35

(2)冷凍機油(Refrigerating Machine Oil)
順位 出願人・権利者 件数
1 JX日鉱日石エネルギー(JX Nippon Oil & Energy Corporation) 32
2 出光興産(Idemitsu Kosan Co., Ltd.) 16
3 アルケマ(ARKEMA) 3
3 三洋電機(Sanyo Electric Co., Ltd.) 3
5 出光興産(Idemitsu Kosan Co., Ltd.); 豊田自動織機(Toyota Industries); デンソー(Denso Corporation)(共同出願Joint application) 2

(3)作動条件(Operating Condition/Use/Condition)
順位 出願人・権利者 件数
1 アルケマ(ARKEMA) 6
2 三菱電機(Mitsubishi Electric Corporation) 4
2 ハネウェル・インターナショナル(Honeywell International Inc.) 4
4 イー・アイ・デュポン(E. I. DuPont) 2
5 出光興産(Idemitsu Kosan Co., Ltd.); デンソー(Denso Corporation); 豊田自動織機(Toyota Industries Corporation)(共同出願Joint application) 1
5 旭硝子(Asahi Glass Co., Ltd.) 1

(4)装置(Apparatus)
順位 出願人・権利者 件数
1 三菱電機(Mitsubishi Electric Corporation) 58
2 パナソニック(Panasonic Corporation) 43
3 サンデン(Sanden Corporation) 11
4 デンソー(Denso Corporation) 6
5 アルケマ(ARKEMA) 5

(外国特許分析)
本件技術に関連し、米国、欧州特許、中国、インドを出願国に持つ特許ファミリ、1026件を対象として分析を行った。
分析対象の1026件の特許ファミリ中、HFO冷媒に関連する特許として780ファミリ、炭化水素冷媒に関する特許として395ファミリを分類し、特許出願動向を以下にまとめた。(使用データベース:PatBase)
HFO冷媒に関連する外国特許ファミリ(US,EP,CN,IN)の出願推移及び出願国を以下に示す。


HFO冷媒特許外国特許ファミリ件数推移(US,EP,CN,IN)


HFO冷媒特許外国特許ファミリ国別件数推移(US,EP,CN,IN)

(後編に続く)

(IP総研 先端技術分析班)

(参考文献)

(1) -(社)日本冷凍空調工業会 日冷工の温暖化防止と次世代冷媒への取り組み, 2011
(2) Du Pont社ホームページより http://www2.dupont.com/hfo1234yf/en_US/
(3) Honeywell社ホームページより
 http://honeywell.com/sites/JP/News/Pages/JPJRCHFO-1234yf.aspx
(4) 平成19年度特許出願技術動向調査報告書 自然冷媒を用いた加熱冷却(要約版)

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