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「分散型電力システム」に関する特許動向分析(第1報)

2015/02/27 技術動向 サービス

 このたび、IP総研では「固体酸化物型燃料電池(SOFC)に関する特許調査」と題して、特許分析マルチクライアントレポートを作成した。 それに伴い、「分散型電力システム」に関する技術開発の方向性を考察する特許分析をシリーズで配信する。

 大手電力会社の系統電源に依存する一極集中型の電力供給体制から「分散型電力システム」への移行を期待する社会的要請の高まりを背景として、二次電池・燃料電池・太陽光発電・風力発電の応用に向けた活発な研究が自動車、電気機器、素材、化学など幅広い産業を巻き込んで急速に進展している。

 昨年末、トヨタ自動車から固体高分子形燃料電池(PEFC)を搭載した「MIRAI」が一般発売されて本格的な「水素エネルギー社会」の幕開けに向けてインフラ整備など様々な動きが進展した。それに先立つ形で、日本技術貿易IP総研では「リチウムイオン電池材料」「固体高分子形燃料電池(PEFC);燃料電池車(FCV)編」に関する特許調査をベースに、ワールドワイドの技術開発動向をマルチクライアントレポートとして2010年5月、2013年4月にそれぞれ発行している。 これらに続くものとして、今後の展開が更に活発化していくことが期待される固体酸化物形燃料電池(SOFC)に関する特許調査を実施して、冒頭で述べたマルチクライアントレポートをこの度完成させた。

 本稿では各要素の特許出願トレンドの概要と、マルチクライアントレポート「固体酸化物形燃料電池(SOFC)に関する特許調査」の内容の一部を紹介する。


図1 分散型電力システムの構成要素


図2 分散型電力システムの構成要素別の出願件数推移(日本・外国特許)

[構成要素別特許出願動向]
 図2は分散型電力システムの構成要素別の出願件数推移である。商用データベースのPatBaseに収録されている国の全てを対象としており、グラフ縦軸がファミリー単位の発明数、横軸が最先優先年である。

 1990年以降の出願が最も多い二次電池は1990年代半ばから件数が徐々に増え始め、2000年代後半に急激に増加し、直近では年間で15000件以上の出願がなされている。二次電池の出願急増の背景として、製品の普及に伴い電池自体の出願に加えてアプリケーション・システム・制御関連などに発明の技術的な範囲が広がってきたこと、中韓台メーカーが参入して活発に出願を進めている等が挙げられる。

 太陽光発電・風力発電についての2000年代後半から件数の急増は、中国からの件数の急増が主たる要因を占めている。

 一方、燃料電池は2000年前半に急激に件数が増加して2006年にピークを迎え、その後の漸減期を経て近年は横ばい~上昇傾向を示しており、二次電池・太陽光発電・風力発電とは出願動向が異なり、中国からはまだ多くない。燃料電池の件数は、携帯機器用の二次電池の代替技術として2000年頃から固体高分子形燃料電池(PEFC)が注目を集めたことにより増加したが、リチウムイオン電池の性能向上に伴い携帯機器用としては立場を失っている。

 携帯機器用に替わってFCV用・家庭用固体高分子形燃料電池(PEFC)及び家庭用固体酸化物形燃料電池(SOFC)が開発の中核として位置づけられるようになり、FCV用固体高分子形燃料電池(PEFC)ではトヨタ自動車が2000年~2006年にかけて重点的に実施して「MIRAI」の基本構成に到達し、2014年末の一般発売を迎えた。特許出願においてはトヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車の3社が出願を牽引してその出願のピークは2006年となっているが、近年は普及に向けてコスト低減を目的とした材料技術・ハード技術の出願が増加している。

 家庭用燃料電池では2009年に「エネファーム」(PEFC),2011年「エネファーム TypeS」(SOFC)が発売され、国の支援を受けながら販売台数を順調に伸ばしている。

 IP総研では
 ・普及開始期にあって家庭用に加え業務用・発電所用などポスト火力発電への展開が期待できること(表1参照)
 ・PEFCとともに燃料電池の技術俯瞰が可能となること
 ・「セラミックス及びセラミックス生産技術」、「システム/制御技術」が日本が差別性を保有するコア技術となっていること
との判断に基づき、固体酸化物形燃料電池(SOFC)に着目し、マルチクライアントレポートを作成するに至った。


[固体酸化物形燃料電池(SOFC)技術の概要]
 表2はSOFC特許レコードの分類軸とそれらに該当する国内特許件数をまとめたものである。これはSOFCに関する抽出特許レコードからIP総研が独自に分類項目を作成したものであり、マルチクライアントレポートにおいてはこれをベースとしてSOFC技術を俯瞰している。


(上)表1 二次電池・燃料電池の製品普及状況と適用用途
(下)表2 SOFC特許レコードの分類と母集団特許件数(日本特許のみ)


図3 解決手段別SOFC特許レコード数比率の推移(日本特許のみ)

 図3は解決手段別のSOFC特許レコード数比率の推移である。特許レコードに基づく解決手段を分類すると、「材料技術」の比率は漸減傾向,「システム/ハード技術」の比率は横這い傾向であるのに対し、「システム/制御技術」比率は増加傾向を示している。

 家庭用SOFCはトヨタ自動車などによる「システム/制御技術」が加わり性能レベルでは商品化に至ったが、同様に分析したFCV用PEFCにおける推移と比較すると、家庭用SOFCでは普及を可能とするコストなどの課題には更なる取り組みが必要な段階にあることが伺える。

(IP総研 エネルギー分析チーム)
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