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「分散型電力システム」に関する特許動向分析(第2報)

2015/09/14 技術動向 サービス

 前回の報告では、「分散型電力システム」に関する技術開発動向と題して、二次電池、燃料電池、太陽光、風力に関する出願件数推移を示し、各技術の特徴を明らかにした。さらに、二次電池と固体高分子形燃料電池、固体酸化物形燃料電池それぞれの製品化フェーズと特許出願の関係について分析を行った。

 IP総研では、固体酸化物形燃料電池の以下のような特徴に着目し、マルチクライアントレポートを作成している。
  ・普及開始期にあって家庭用に加え業務用・発電所用などポスト火力発電への展開が期待できること
  ・固体高分子形燃料電池とともに燃料電池の技術俯瞰が可能となること
  ・「セラミックス及びセラミックス生産技術」、「システム/制御技術」が日本が差別性を保有するコア技術となっていること

 それを踏まえて前回報告では、マルチクライアントレポートからの内容抜粋として、IP総研独自に設定した分類項目およびその件数分布と、解決手段カテゴリ別の出願比率推移について考察を行った。

 今回の報告では、固体酸化物形燃料電池のマルチクライアントレポートにて行った詳細分析について、そのいくつかを紹介する。


(上)図1 固体酸化物形燃料電池の国籍別出願件数推移(全世界特許)
(下)図2 固体酸化物形燃料電池の国籍別出願比率推移(全世界特許)


(上)図3 主要7課題の全出願における比率(日本特許)
(下)図4 主要7課題の各年における出願比率推移(日本特許)

[固体酸化物形燃料電池の国籍別出願動向]
 図1、図2は固体酸化物形燃料電池の国籍別出願件数推移および比率推移である。2013年の値は暫定値となっている。件数規模は年間300件~900件程であり、2000年代前半に件数が増加、2000年代後半は横ばい、2010年代になりさらに増加傾向を示している。

 全出願の6割程度が日本国籍の出願となっており、他の国と比較しても圧倒的に件数が多いことがわかる。その他の特徴としては米国国籍の出願件数が徐々に減少傾向にあること、韓国国籍の出願が2009年以降急激に増加していることなどが挙げられる。マルチクライアントレポートでは用途分析も行っており、家庭用燃料電池の出願は日本に加えてドイツ・オーストラリア、大規模発電用電池では米国・デンマーク・フィンランド・韓国などが牽引していることがわかっている。

 固体酸化物形燃料電池は1986年に米国のWestinghouse社(現Siemens)が3kWの試験機を開発して以来、業務用(中大型)を中心とする開発が進められた経緯があり、米国籍企業および日本の電力・ガス会社による開発が進められてきた。その後、日本企業を中心に家庭用を想定した技術開発が加速した結果、2011年に家庭用固体酸化物形燃料電池を搭載したコージェネレーションシステムが商品化された。このような開発の動きと特許出願の増減がリンクしていることがわかる。

 ところで、日本国籍の出願の大半は家庭用燃料電池(コージェネレーション)が多数を占めていることが推察される。発電に特化しているためシンプルな構成となっているモノジェネレーションに対して、コージェネレーション技術の特許出願件数は多くなる傾向にあると想定される。そのため開発動向の分析においては、特許レコード数のみではなく、加えて開発ターゲット(用途)を考慮することが必要となる。単純な件数の多少で日本が優勢と述べることはできず、大規模発電用電池をターゲットにしている米国・デンマーク・フィンランド・韓国については別途内容検討が必要となる。


[固体酸化物形燃料電池の課題分析]
 日本特許5372件については発明の課題分析を行っている。図3、図4はIP総研が着目する主要7課題の全出願における比率と各年における出願比率の推移を示している。

 「耐久性/信頼性向上」44%、「発電性能/エネルギー効率向上」23%で課題の大半を占めており、固体酸化物形燃料電池の実用化においては最も重要な課題は耐久性であると言える。このことは出願比率推移からも示唆されている。2011年にエネファームtypeSが商品化されており、「耐久性/信頼性向上」の課題については商品化のベースとなる対策技術の見通しが得られているが、「耐久性/信頼性向上」の出願比率の増加は続き、2008年以降は50%に達している。このことから、固体酸化物形燃料電池にとって「耐久性/信頼性向上」へのチャレンジが最重要課題と位置づけられており、その割合は年々高まっていることが明らかとなっている。


[固体酸化物形燃料電池のセル形状の選択]
 固体高分子形燃料電池の基本構造は「平板」であるのに対して、固体酸化物形燃料電池では「平板」に加えて多様な形状の開発を進められ、基本構造が絞り切れていない。
 
 固体酸化物形燃料電池の発電性能は電気化学反応を進行させる「発電構成材料」によって決定されるが、「固体酸化物形燃料電池の開発競争はWestinghouse社(現Siemens)が円筒縦縞形セルを採用した1980年代後半から実質的にスタートした。」と言われるように、固体酸化物形燃料電池にとって「発電構成材料」とともに、「セル形状」の選択が「機械強度確保」や「内部抵抗低減」などを図る上で重要である。

 具体的には表1のように形状と支持形式に分けられる。また、図5には日本特許5372件におけるセル形状分析の結果を示す。

 円筒縦縞形セルによる機械強度の確保と大量生産性に優れる「共焼成」から「逐次焼成」の生産プロセスが開発されたことにより、固体酸化物形燃料電池の基本構成は収束していくのではないかとの見方もあったが、図5の結果では「平板」、「円筒」、「円筒平板」のいずれにおいても特に偏りがなく、近年は横縞、縦縞ともに増加傾向にあることが明らかとなった。つまり、特許出願件数の推移からは「中空平板」が緩やかな増加基調にあるものの、出願人毎に用途に応じて様々なセル形状による検討が継続している状況が示唆されている。


表1 固体酸化物形電池の支持形式および形状


図5 固体酸化物形燃料電池のセル形状別出願件数推移(日本特許)

[固体酸化物形燃料電池の出願動向に関するまとめ]
 固体酸化物形燃料電池の開発の歴史は古く、これまでに全世界で約1万ファミリーの発明が特許出願されている。最重要課題である耐久性についてはその割合はますます増加しており、今後も耐久性に関する研究は継続していくと予想される。また、形状においては特定の形式に収束せず様々な形状が検討され続けている。さらには近年、韓国国籍の出願が急増しており、中国国籍も増加する可能性がある。国籍や企業によってターゲットとしている用途が家庭用/発電用と異なっているため、求められる性能も違ってきており、状況把握がより困難なものになっていくと予想される。

 このような状況を考慮し、マルチクライアントレポートでは本報告で紹介した以外にも材料軸や手段軸を設定し、読込・分類を行うことで観点別に解析を行い、それらを統合することで各社の強みや今後の動向を分析している。その結果、日本企業が外国企業に対して差別性を保有する「セラミック材料/生産技術」や「システム/制御技術」を生かして、固体酸化物燃料電池システムの開発を牽引している現状が明らかとなった。

(IP総研 エネルギー分析チーム)
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