TOPページ知財情報【巷で話題の新製品:特許Watch!】  ダイソン社の製品戦略:次の一手は・・・?

【巷で話題の新製品:特許Watch!】
 ダイソン社の製品戦略:次の一手は・・・?

2016/06/22 日本 企業動向 メルマガ

ダイソン社は2016年4月27日、同社初となる美容家電「Dyson Supersonic ヘアードライヤー」を発表した。

ダイソン社と言えば、サイクロン型の掃除機を発売し一世を風靡し、その後も、既存の製品には無いデザインや機能で羽なし扇風機、加湿器、空気清浄機などを相次いで製品を市場に投入している。
その得意とするところは、風の流れを操る技術である。
まさに成熟した既存の家電業界に新しい流れを起こす会社として世間では認知されている。

そのダイソン社が、今度はドライヤーというまたしても既に成熟したと思われる分野に進出してきた。今回、ダイソン社が、特許出願から製品化までどの位の期間がかかったのかを考察すると共に、今後の製品化を予想してみようと思う。


まずは検索から始めるが、今回海外特許も含めて検索をする為、IPC・CPCを使うこととする。ドライヤーに関係する分類はいくつかあるがメインは「A45D20/00:髪乾燥装置;そのための付属品」の下位の分類「A45D20/10:手に持って乾燥するもの,例.空気注入器」が適当であろう。

【分類体系】
A45D 理美容またはひげそり器具;マニキュアまたは他の化粧(かつら,入れ毛,またはその類似物A41G3/00,A41G5/00;理髪用の椅子A47C1/04;散髪用具,かみそりB26B)
A45D 20/00 髪乾燥装置;そのための付属品(2/00が優先;乾燥一般F26)
A45D 20/04 ・熱風乾燥器(A45D20/20,A45D20/22が優先)
A45D 20/08 ・・電気的に加熱されるもの(電気加熱素子それ自体H05B)
A45D 20/10 ・・・手に持って乾燥するもの,例.空気注入器

この分類に社名をかけあわせるが、社名は「DYSON TECHNOLOGY LIMITED」、「Dyson Limited」や、創業者である「James DYSON」、DYSON社の前身である「NOTETRY LTD」などもある為、とりあえず名義は「DYSON」と「NOTETRY」で検索することにした。

弊社で利用している特許データベースではA45D20/10と上記名義のAND条件でファミリー単位で35件がヒットした。この35件のファミリーの中でダイソン社のドライヤー関連の最初の出願は、出願日:2013/03/19(優先権主張日:2012/03/30)に遡る。優先権主張日の時点である程度の開発が完了していたと考えると、製品発売までにおよそ4年掛かった事になる。

他の製品でも、同様に検討してみた。サイクロン掃除機では、デュアルサイクロン技術の最初の出願であるUS5090976は1990年であり、製品であるDC01の発売は1993年なので、約3年である。

羽なし扇風機では、最初の出願の最先優先日は2007/09/04であり、発売は2009年なので、約2年で製品を発売していることになる。

結論として、今回の製品は掃除機や扇風機と比べるとやや時間が掛かったという事になる。

さて話は戻ってダイソン社のドライヤーであるが、その大きな特徴は、ハンドル部分にモータを配置したところにある。これまでのドライヤーは、ヘッド部分にモータが搭載されておりヘッドヘビーの状態、つまり頭が大きいという形状をしていた。

ダイソン社の製品は、同社の羽根のない扇風機に搭載された特許技術「エアマルチプライアー(Air Multiplier)」が採用されており、動力源のモータは同社が新たに開発した最小・最軽量のブラシレスDCモータが採用されている。この配置のおかげで、重心はボトムヘビーになり、通常のヘッドヘビーのドライヤーと比較し軽量に感じるとのことである。
小型・軽量でありながらパワーのある送風が可能なドライヤーとして従来のドライヤーには無い価値を生み出した。

そのダイソンの最初の出願であるWO2013144569Aには、図1の様なコンセプトが例示されていた。さすがにこれは奇抜過ぎるデザインの様に思えるが、実施例の中に図2の様な今回の製品とほぼ同じ図があった。


図1. ダイソン社の出願から引用した図面


図2. 発売した製品に近い図面

ドライヤーの話はこの程度にしておき、ここで、ダイソン社が次にどの様な製品を発売するかを予測したいと思う。

ある会社の特許情報から新製品の予測を行う方法として、もっとも簡単な方法は、その会社の全部の出願から、既に製品化されている製品に関連した出願を除いて、残ったものが『新製品のアイデアに繋がる可能性が高い特許出願である』 と予測する手法がある。

上記の”従来の製品”を除く方法は、読込みで除く事が最も精度が良い方法だが、わざわざ読み込みをしなくても、特許分類を用いる手法がある。会社名で検索 した集合の特許分類のランキングを作成し、製品化されている製品に関連する特許分類を除いて、残った特許分類から必要な公報を抽出する方法がある。

今回のダイソン社でもこの手法を取り入れ、ダイソン社の出願から既に製品化されている、下記の製品の特許分類を除いてみた。
・掃除機(A47L)
・ロボット掃除機(B25J)
・扇風機(F04D)
・ドライヤー(A45D20)
あとは汎用性のあるモータの分類(H02P, H02K)も取り敢えず今回は除いた。

上記の様に特許分類のランキングから既存製品に関連した分類を除くと、驚く事に一連の特許分類群が残った。その分類を下記に示す。

A23N 他に分類されない,収穫した果実,野菜または花の球根を大量に処理するための機械または装置;野菜または果実の皮を大量にむくためのもの;飼料を調製するための装置
A23N 1/00 ジュースを抽出する機械または装置

A47J 台所用具;コーヒーひき器;香辛料ひき器;飲料を作る装置[6]
A47J 19/00 家庭用の食料品ろ過機械;家庭用の食料品すりつぶしまたはろ過器具
A47J 19/02 ・かんきつ類果実用圧搾器;他の果実用ジュース搾出装置

A47J 31/00 飲料を作る装置[5]
A47J 31/44 ・飲料製造装置の部品または細部

A47J 37/00 ベイキング;ロースティング;グリル;油揚げ
A47J 37/06 ・ロースター;グリル;サンドウイッチグリル
A47J 37/08 ・・パン焼き器

A47J 43/00 このサブクラスの他のグループに分類されない,食品を調製または保持するための器具
A47J 43/04 ・他類に属さない家庭用機械,例.食料品を粉砕し,混合し,撹拌し,混練し,乳化し,泡立てまたはたたくもの,例.動力駆動
A47J 43/046 ・・底部から駆動される器具を有するもの

B01F 混合,例.溶解,乳化,分散
B01F 7/00 固定容器内に回転攪拌機を有する混合機;ニーダー

賢明な読者の皆様ならば、上記の分類からある程度、既に製品を連想出来たのではないだろうか。

その製品の候補は二つある。一つは「トースター」である。だが私の予想はこの製品ではない。なぜなら、ダイソンが得意とするモータ技術がこの製品のコア技術に使われるものではないからである。この製品のドア部分にはモータが使用されているが、ドアの開閉モータではダイソンのモータの利点が生かせない。

ではもう一つの製品は何かと言うと、「ミキサー」である。ミキサーはご存知の様に、メインモータが回転し、刃を回転させ、材料の粉砕や撹拌を行う調理器具である。まさにダイソン社が得意とするモータが生かされる製品であり、恐らくこの製品が次の本命と考える。

特許出願は5件出されており、いずれも出願は2015年6月1日(優先日2014年6月2日)である。
US2015342409
US2015342408
US2015342407
US2015342406
US2015342405

以上より、ダイソン社の次の一手が特許情報より予想出来た。
製品の発売時期の予想としては、他の製品の事例で出願日(優先日)から2年~4年であるので、今年から来年に掛けて製品発表がなされると予想する。

果たしてこの予想が当たるかどうかは、次のダイソンの製品が発表されるまでのお楽しみにして頂きたい。

(IP総研 技術グループ 主任研究員 本田竜一)


図3. ミキサー関連の出願の図面(全体)


図4. ミキサー関連の出願の図面(内部構成)

日本技術貿易 IP総研では、各種特許調査、日本だけでなく海外の非特許文献、技術動向分析調査なども多数手掛けております。調査でお困りの際は是非ご相談ください。

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参考URL
東洋経済online
掃除機のダイソン、なぜドライヤーを開発?
http://toyokeizai.net/articles/-/118235
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