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特許出願から見た洋上風力発電の現状 (前編)

2012/06/26 特許/実案 企業動向 技術動向

 2010年の世界における再生可能エネルギー(太陽光発電、太陽熱発電、風力発電など)への投資は、前年に比べて32%と増大しており、とりわけ風力発電への新規投資が最も多く、いまや太陽光発電を凌ぐ存在となっている。(*1)
 これは、諸外国において風力発電が間欠的な発電方式ではなく、「変動電源」と見なされている為であると考えられる。なぜならば、「変動電源」であれば、電力系統における変動する需要と供給の一要素と見なされ、電力市場運営に取り込み可能なものと受けとめられるからである。
 欧州(特に、ドイツとスペイン)での太陽光発電の普及は、再生可能エネルギーによって得られた電力を一定期間、固定価格で買い取る制度「FIT(Feed-in tariffs)」によって支えられてきた。ところが、ここにきてドイツのFITによる電力買取価格に変化が現れつつある。ドイツの太陽光発電の電力買取価格は、2004年の約0.45€/kWhから毎年下落を繰り返して、2012年には約0.18€/kWhにまで下がった。それに対し、ドイツの洋上風力発電の電力買取価格は、2004年の約0.09€/kWhから値上がりし、2012年には約0.19€/kWhになっており、ついに太陽光発電の電力買取価格と肩を並べた。
 なお、陸上風力発電の電力買取価格は2004年には、洋上風力発電とほぼ同じ電力買取価格(約0.09€/kWh)であったが、毎年少しずつ値下がりし、2012年には約0.075€/kWhまで下落した。このことからも、ドイツが陸上ではなく洋上風力発電の普及に力を入れていることが伺える。

 2009年には、FITにより太陽光発電が急速に普及したスペインであるが、2011年の電力発電量に占める再生可能エネルギーの割合は約32%で、そのうち15.7%を風力発電が占めている。太陽発電量(太陽光発電と太陽熱発電の合算)の占める割合は3.6%となっており、スペインの風力発電依存度の大きさがわかる。(*2)

欧州では風力発電が主流に
風力発電は1980年代にデンマークに始まり、欧州(デンマーク、ドイツ、スペイン)が陸上風力発電を牽引してきたが、2005年頃までにピークアウトを迎え、その後の風力発電の牽引は米国、中国、インドが担うことになった。(*3)

欧州では、1990年にスウェーデンでの洋上風力発電の試行が始まり、2001年以降の欧州は沿岸の水深の浅さ(30m~50m)を利用した洋上風力発電への転換を開始した。洋上風力発電には、豊富な賦存量と広大な敷地の魅力があり、2009年以降から欧州の風力発電が本格的に再開されたように推察される。(*4)

風力発電所は風が常に吹くような場所に設置されるとはいえ、風力発電の発電出力予測はどの程度可能となっているのだろうか。2012年12月の『EWEA(European Wind Energy Association)報告書』では、気象現象をある程度予測すれば、予測誤差は予備力と電力系統の需給調整との組み合わせで乗り越えられると指摘している。(*5)

 もともと電力需要の変動にも不確実性はあるが、風力発電依存度の高いスペインにおける唯一の送電系統運用会社であるREE(Red Electrica de Espana)社の実績では、現在のところ停電問題が起こってない。この事実*は安定電力源としての風力発電の可能性を強く示唆している。

さらに、2010年10月にEUがまとめた『Energy 2020』では、「2020年までに、EU各国はエネルギー利用のうち、20%を再生可能エネルギーで賄うことを義務的目標値」として掲げており、欧州の風力発電に対する期待の大きさが分かる。(*6)


「洋上風力発電特許」の出願動向を探る
 まずは、出願国/出願地域として、洋上風力発電が話題となっている国/地域について、風力発電特許と洋上風力発電特許に注目する。
 図1から、風力発電特許は中国、米国、欧州、韓国、日本への出願件数が多く、洋上発電特許は欧州、中国、米国、韓国の順に出願件数が多いことが分かる。中国への特許出願件数の多さは、外国企業が今後の中国市場を強く意識しているためと推察される*。
 次に、図1でとりあげた国/地域について、洋上風力発電特許と浮体式洋上風力発電特許に注目する。

 図2の特許出願件数推移から、浮体式洋上発電は2000年代初めには欧州、ドイツ、英国で意識されていたことがわかる。最近では、欧州だけでなく、中国、韓国への浮体式洋上風力発電特許出願件数が多い。中国への特許出願件数の多さは、外国企業が今後の中国市場を強く意識しているためと推察される。また、特許出願件数推移からは、米国での洋上風力発電はこれから発展の段階にあるものとみられる。

 欧州では、今後の風力発電拡大を洋上で実現しようとしているが、欧州沿岸の水深はせいぜい30m~50mなので、洋上風力発電は着床式となる。日本の福島沖では、洋上風力発電検証実験がすでに始まっているが、福島沖水深は100m前後なので、洋上風力発電は浮体式となり、日本の浮体式洋上風力発電は海洋開発技術や石油採掘技術の今後の事業展開分野と捉えられる。

 そして、「海上から陸上への電力輸送」という課題はあるものの、欧州では水深の浅い沿岸への設置となるので、電力輸送は比較的容易であるものと推察される。しかも、電力消費地の近くに洋上風力発電所が設置されれば、電力消費地周辺の電力系統は強固なので、系統連系が容易になるという利点もある。

 次回は、諸外国において、どのような企業が風力発電に取り組んでいるかについてまとめる。


(IP総研)


図1 特許出願から見た洋上風力発電への取り組み*
*特許出願件数 薄青色:風力発電特許、薄桃色:洋上風力発電特許


図2 特許出願から見た浮体式洋上風力発電への取り組み
*特許出願件数 薄青色:洋上風力発電特許、薄桃色:浮体式洋上風力発電特許

(*1)風力発電への投資 “UNEP and Bloomberg new energy finance:Global Trends in Renewable Energy Investment 2011” (2011)
(*2)スペインの風力発電 「スペイン:再生可能エネルギーシンポジウム」 スペイン大使館商務部主催(2012年5月9日) 講演資料「スペインの持続可能なエネルギー政策」 KPMGパートナー、スペイン産業省エネルギー局 前局長 Antonio Hernández氏
(*3)世界の風力発電 http://jref.or.jp/energy/wind/develop.html
(*4)2011年1月 EWEA (European Wind Energy Association)
(*5)EWEA報告書 ”Powering Europe:wind energy and the electricity grid”(発行:2012年2月15日)
(*6)EU “Enegy 2020” 「全エネルギーに占める再生可能エネルギー2020年20%」
http://ec.europa.eu/energy/publications/doc/2011_energy2020_en.pdf
http://www.jbic.go.jp/ja/report/reference/2011-046/jbic_RRJ_2011046.pdf
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