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特許情報から見たシェールガスの現状(前編)

2012/08/27 特許/実案 企業動向 技術動向

特許情報から見たシェールガスの現状(前編)
 地下100~2600mに頁岩(けつがん)という岩盤層があり、ここにシェールガスは封じ込まれている。 シェールガスの流動性は、地中の浅い層にある従来の天然ガスの1万分の1以下であり、地中からの採掘コストが見合わず、これまでは放置されたままの未活用資源であった。
 ところが、2000年代に入り、米国での天然ガス需要補完と価格上昇に支えられ、シェールガスが注目を集めた。米国シェールガス生産量は、2000年の4300億ft3が2005年には4.99兆ft3へと急増し、米国天然ガス生産量の20%超を占めるまでに拡大した。そして、2009年には、米国天然ガス生産量はロシアを抜き、世界一になった。これは欧州などよりも米国・カナダの方が、浅い地層にシェールガスが封じ込められていることに関連する。

シェールガス開発を支える3つの技術
 地下に穴を開けた状態で自然に地上に噴き出てくる石油・天然ガスなどの「在来型資源」と異なり、地下から取り出しにくい「非在来型資源」として、石油系由来のオイルシェール、オイルサンド、シェールオイル(タイトオイル)、タイトガス、シェールガス、さらには石炭系由来のコールドメタンがある。
 石油開発をめぐる環境の変化が石油系由来の油やガスを地上に取り出す技術の進歩を促した。なお、シェールオイルとシェールガスは同様の方法で地上に取り出される(*1)。

 シェールガスを地上に取り出す技術の進歩を支える要素技術は3つある。まず、シェール層に沿って水平に掘り進める「水平抗井(こうせい)」技術が、1水平抗井当たりの生産量を3~5倍に増加させた。つぎに、井戸に注水した水の圧力で地層にひび割れをつくる「水圧破砕(Hydraulic Fracturing)」技術が、井戸から周辺に亀裂を走らせ、枝分かれしたひび割れには砂状物質などを詰めて隙間を保ち、閉じ込められていたシェールガスの流出を図った。そして、地震波観測技術「マイクロサイミック(Microseismic)」が戦略的シェールガス採掘を可能にし、効率的な生産量向上を実現した。  
 水平抗井と水圧破砕は2000年代以前からある技術だが、マイクロサイミックを含めた3つの技術の統合化が、これまで放置されていた未利用資源であるシェールガスの採掘を可能にした。水圧破砕では、頁岩層を貫く井戸の先端から順に、圧力をかける管を後方/地表側に引く「多段階水圧破砕」技術も既に一般化している。水圧破砕で得た割れ目に対する支持材/プロパント(Proppant)で、シェールガス貯留岩から坑井への流路を如何に確保するかが採掘の鍵となる。

 高強度プロパントの探求は、Exxon Production ResearchのClaude E. Cooke, Jr. によって1970 年代半ばから始まった。その結果は、「焼結ボーキサイトを使った水圧破砕特許」(*2)に発展し、セラミック製プロパントが生まれた。1975 年には、樹脂コーティングされた砂粒の利用で、水圧破砕後のフローバック水中の砂の減少が実現した(*3)。当初、垂直ガス井での使用に限られていたプロパントは改良が進められ、2003年ごろから2007年にかけて、水平坑井での多段階水圧破砕に用いられ、米国のシェールガス供給能力急増に大きく寄与した。

 欧州のシェールガスは北米に比べ古い時代の頁岩層にあり、ガス資源も分散しており、北米よりもシェールガス開発コストは高くなるが、割高な価格での販売が可能であり、高い開発コストを吸収できる余地は大きい。
 欧州では、ロシア産天然ガス依存を避けられるとして、シェールガス開発推進意欲が高い東欧国(ポーランド・ウクライナ・リトアニア)だけでなく、政府のシェールガス開発推進策が住民の反対に直面している国(ルーマニア・スペイン)もある。そして、シェールガス開発規制を求める声から、膠着状態となっている国(チェコ・ドイツ)もある。
 さらには、水圧破砕が誘発する環境問題に対する懸念から、水圧破砕技術を禁止する国(フランス・ブルガリア)や論理的アプローチでシェールガス開発推進を狙う国(英国)もある(*4)。

 米国EIAの「世界のシェールガス資源量評価リポート」(2011年4月)(*5)では、中国のシェールガス可採埋蔵量を36兆m3と評価した。これは米国を上回る最も高い評価であり、米国とカナダを合わせた北米並みとなる。一方、中国では都市化と経済発展で天然ガス輸入が増加し、需給ギャップが拡大しており、中国政府はシェールガス開発を本格化することで、エネルギーの安定供給、天然ガス輸入依存からの脱却、さらにはロシアなどの輸入交渉相手に対するバーゲニングパワーにすることを狙っている。

 シェールガス開発の本格化そのものが、米国でさえ数年たらずであり、その開発技術や環境に対する影響が精確に把握されているわけではない。そのため、今後の技術開発動向、さらには「飲料水に活用できる帯水層の保護」を含めた環境への影響評価をしっかり見定めることも必要になる。

 例えば、米国における水圧破砕に用いられるフラクチャリング流体による環境汚染の懸念に対応し、フラクチャリング流体の組成にも変化が起こっている。従来は塩酸をはじめ様々な化学物質が含有されていたが、現在はとても単純な組成構成へと変化している。主流体である水、プロパンと称されるフラクチャー支持体となる砂、バクテリアによる腐食を防止するための殺生物剤、フラクチャリング流体の圧入を容易にするための摩擦低減剤、水に溶解できないために生じるスケール/スラッジの管内付着対策としてのスケール付着防止剤のみから構成されている(*6)。

 それでは、シェールガスとシェールオイルの特許集合をつくる検索式を作成し、シェールガス特許の出願動向を探る。

「シェールガス特許」の出願動向を探る
 特許データベースとして「CPA GLOBL DISCOVER」を用い、特許検索式の検討を行った。

「地中削孔」および「プロッパント」に関わるIPCとして、以下のものに注目した。
E21B43(深掘井から石油,ガス,水,溶解性または溶融性物質または鉱物の懸濁液を採取するための方法または装置)
E21B44(削孔操作に特に適した自動制御システム,すなわち,運転者の介在なしに削孔操作を遂行また修正するために機能する自己操作システム)
E21B47(坑井または井戸の調査)
E21B49(坑井壁の性質の試験;フォーメイションテスト;地中削孔または井戸に特に適用される,土壌または井戸流体の試料を得るための方法または装置)
C09K8(さく井または坑井用組成物;坑井または井戸を処理するための組成物)
シェールガスに相当する単語としてshale gas/gas shaleに注目した。
特許調査の過程でシェールガスが注目される以前に、シェールオイルが注目されていた時期もあることが分かり、シェールオイルに相当するとして単語oil shale/shale oilにも注目した。

上記のIPCおよび単語の組み合わせで、つぎの2つの近似的検索式を作成した。
検索式1「シェールガス特許」の検索式
(IPCR:("E21B43") OR IPCR:("E21B 44") OR IPCR:("E21B 47") OR IPCR:("E21B 49") OR IPCR:("C09K 8")) AND (TI:("shale gas") OR AB:("shale gas") OR CLM:("shale gas") OR DES:("shale gas") OR TI:("gas shale") OR AB:("gas shale") OR CLM:("gas shale") OR DES:("gas shale"))

検索式2「シェールオイル特許(シェールオイルまでを含めた特許)」の検索式
(IPCR:("E21B 43") OR IPCR:("E21B 44") OR IPCR:("E21B 47") OR IPCR:("E21B 49") OR IPCR:("C09K 8")) AND (TI:("shale gas") OR AB:("shale gas") OR CLM:("shale gas") OR DES:("shale gas") OR TI:("gas shale") OR AB:("gas shale") OR CLM:("gas shale") OR DES:("gas shale") OR TI:("shale oil") OR AB:("shale oil") OR CLM:("shale oil") OR DES:("shale oil") OR TI:("oil shale") OR AB:("oil shale") OR CLM:("oil shale") OR DES:("oil shale"))

 まず、シェールガスが話題となっている国/地域について、シェールガス特許とシェールオイル特許の出願件数推移に注目する。


図1 特許出願から見たシェールガスへの取り組み*
  *特許件数 薄青丸:シェールオイル特許、薄桃色:シェールガス特許

 図1から、シェールガス特許の出願は2002年/2003年ころから始まったことが分かり、シェールガス開発に積極的な米国・カナダへの特許出願件数が多い。そして、シェールオイルへの取り組みは古くから行われており、シェールガスへの取り組みはシェールオイル採掘技術発展の一形態と見なすこともできる。
 特許の出願から公開までの期間が通常1.5年であることを考慮すると、単純に考えれば2011年出願件の大部分は未公開のままである。それにもかかわらず、2011年の特許出願件数が急増している中国と、2010年から特許出願件数増加の始まりが見えるオーストラリアの両国については、今後の特許出願動向に注意が必要になる。
 2011年の中国特許出願件数急増は、中国シェールガス可採埋蔵量が北米(米国とカナダ)並みであることを裏付けるものといえる(*5)。

 次回は、諸外国において、どのような企業がシェールガス開発に取り組んでいるかについてまとめる
そして、石油系資源採掘メジャー企業の中国特許出願にも目を向ける。

(*1) 伊原賢 「シェールからのガスや油の生産技術を掘り下げる」(2012年2月17日)
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/4/4600/1202_out_c_shale_prod_tech.pdf
(*2) Claude E. Cooke,Jr.,US3,888,311 “Hydraulic fracturing method”
(*3) Claude E. Cooke,Jr.,US3,935,339 “Method for coating particulate material thereof”
(*4) シェールガス関係の参考資料 (独)石油天然ガス・金属資源機構石油調査部による各種公表資料
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/
(*5)米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)「世界のシェールガス資源量評価リポート」(2011年4月)
“World Shale Gas Resources:An Initial Assessment of 14 regions Outside the United States”
http://americaspetrogas.com/pdf/World-Shale-Gas-Resources.pdf
(*6) 伊原賢 「シェールガス: 安定生産に欠かせない環境リスク克服への技術的考察」(2012年7月16日)
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/4/4394/1106_out_c_k_shale_gas_water_treatment.pdf

(IP総研)
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