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特許情報から見たシェールガスの現状(後編)

2012/09/27 特許/実案 企業動向 技術動向

 前編では、「シェールガス」について、それを取り巻く環境と特許出願状況を取り上げた。後編では、諸外国において、どのような企業がシェールガスに取り組んでいるかを取り上げる。

各企業のシェールガスへの取り組み
 シェールガス採掘技術に関わる企業としては、Halliburton Energy Services(ハリバートン・エナジー・サービス)〔米国〕、Weatherford(ウェザーフォワード)〔スイス〕、Royal Dutch Shell(ロイヤル・ダッチ・シェル)〔オランダ・英国〕、Schlumberger(シュルンベルジェ)〔米国〕、Baker Hughes(ベーカーヒューズ)〔米国〕、ExxonMobil(エクソンモービル)〔米国〕、Grant Prideco(グラント・プリデコ)〔米国〕 、BJ Services(BJサービス)〔米国〕、Smith International(スミス・インターナショナル)〔米国〕、National Oilwell Varco(ナショナル・オイルウエル・バルコ)〔米国〕などがある。
 これらの企業のうち、Royal Dutch ShellとExxonMobilは石油系資源採掘のメジャー企業であり、Halliburton、Schlumberger、Baker Hughesは石油系資源探査サービスを手がける企業である。

 米国でのシェールガス開発の進展に伴い、大手企業の買収攻勢が相次いでいる。
 発端は2008年に、米国最大手の石油系資源採掘機器/部品企業National Oilwell Varcoが採掘ドリル/管を手がけるGrant Prideco買収したことにある。これ以降、石油系資源探査サービス企業が資源探査機器/部品(ドリルや管など)を手がける企業を傘下に収め始めた。
 例えば、SchlumbergerはSmith Internationalを2010年2月に$113億で、Baker HughesはBJ Servicesを同年4月に$55億で、それぞれ買収している。これら一連の企業買収は、シェールガス採掘技術(機器/部品までを含む)をめぐる、「技術の囲い込み競争」と見なすことができる。

 それでは、これらシェールガス採掘に関わる企業について、シェールガス特許およびシェールオイル特許のそれぞれの出願件数と企業動向をまとめ、参入企業の取り組みをみていく。


 図1 注目企業のシェールガスおよびシェールの国別特許累積出願件数*
      *特許件数 薄青丸:シェールオイル特許、薄桃色:シェールガス特許

 ここでは、図1の各企業のシェールガス特許出願件数と企業情報から、どのようなことが読み取れるかを紹介する。
 石油系資源採掘のメジャー企業Royal Dutch ShellとExxonMobilでは、シェールガスに対する取り組みに大きな差がある。現時点のシェールガスに対する対応では、Royal Dutch Shell〔オランダ・英国〕 は関心が低く、ExxonMobil〔米国〕は関心が高いといえる。これは両企業の拠点国がそれぞれ欧州と北米であり、シェールガス資源の採掘は欧州の方が北米よりも困難なことに起因していると推察される。
 石油系資源採掘機器/部品企業では、BJ Servicesの特許出願1件のみが目に着く。これはシェールガス特有の採掘部品が少なく、これまでの石油系資源採掘技術の延長上にあるためと推察される。
 石油系資源探査サービスを手がける企業Halliburton Energy Services、Schlumberger、Baker Hughesの中では、Schlumbergerが先行し、Halliburton Energy Services とBaker Hughesが追走している。そして、各企業とも米国・カナダだけでなく、今後のシェールガス開発対象国/地域となるオーストラリア、さらには欧州への目配りがなされている。

 つぎに、注目企業の中国シェールガス資源への目配りを知るため、中国出願特許の中国語で表記された出願人名の調査を試みる。

中国におけるシェールガスへの取り組み動向
2011年の中国特許出願件数の急増にも関わらず、シェールガスに関わる欧米大手企業の中国特許出願件数が少ないのは、中国企業/企業/研究機関の特許出願件数が主体のためと推察される。  
そこで、シェールガスに関わる中国特許出願18件のAssignee(出願人名)の内訳をまとめてみた。


表1 中国出願シェール特許(18件)の筆頭出願人

 表1には、中国系企業/大学/研究機関の他に、米国石油系資源のスパーメジャーであるChevronやExxonMobil(企業/研究所)、さらにはオーストラリア企業の名前があり、北米に並ぶシェールガス可採埋蔵量をもつ中国(*1)への進出が既に始まっていることが分かる。シェールガスについては、欧米系企業の今後の中国特許出願動向に注目する必要がある。

 シェールガスに対する中国国家政策を知るため、2011年7月4日の人民日報記事を引用する(*2)。
 国家エネルギー局の劉鉄男局長(国家発展改革委員会副主任)によると、現在中国が有するシェールガス開発実験区の井戸は62基に上り、うち24基で工業用ガスを採取している。発展計画によると、中国は2015年までに、中国全土のシェールガス資源の開発潜在力調査・評価を終え、一連のシェールガス探査開発区を構築し、初歩的な大規模生産を目指す。生産量は年間65億m3に達する見通しである。技術面では、2015年までにシェールガス探査開発のキーテクノロジーでブレークスルーを果たし、主要設備の自主生産を実現するという。そして、国家レベルのシェールガス技術標準・規範を打ち出し、シェールガス産業政策体系を整え、第13次中国五カ年計画(2016-2020)期でのシェールガス発展に向け、確固とした基盤を固めるとしている。

 第12次中国五カ年計画(2011-2015)期には、シェールガスの自国による開発と海外協力による開発を同時進行で進める。国内企業には海外の最新技術の吸収を奨励するが、その一方では海外の技術が中国の気候風土に合うかどうかも慎重に見極めなければならないとしている(*3)中国のシェールガス資源は豊富で分布範囲も幅広く、大規模開発に適しているが、地質条件が複雑かつ多様である上に、先進国とは技術面で大きな隔たりがあるため、難関突破とイノベーションの加速が必要とされている(*3)。

 人民日報記事(2011年7月4日)(*2)から分かるように、シェールガス技術でも、中国は技術標準を強く意識しており、これまでのように自国市場規模の大きさを活用した、「中国独自標準」を提唱する懸念がある。

 つぎに、国際技術標準で常に先手を取ろうとする韓国のシェールガスへの取り組み状況に注目する。

韓国のシェールガスへの取り組み動向
 韓国にはシェールガス資源はないようで、シェールガス資源そのものの確保が急がれている。GSカルテックスのイ・ヨンウォン常務は2010年に、中国と日本がシェールガスプロジェクトに取り組んだのに比べ、韓国は2年遅れていると指摘している。その一方で、「シェールガス採掘プロジェクトは莫大な資金が投入されるだけに、複数の企業が共同投資するコンソーシアム形態で進行される」とし、「特に日本の総合商社が先に投資したため、後発企業が入り込む余地を狭めた」と述べており(*4)、いよいよ韓国企業の巻き返し活動が始まるとみるべきであろう。

 ここでは、常に新規市場参入を貪欲に狙う韓国企業のシェールガス市場への取り組み動向をまとめる。

 韓国企業はシェールガス開発のため、既に米国進出を開始している。ポスコはシェールガス開発に投入される高級鋼材市場を狙って参入した(*5)。サムスンエンジニアリングは、2011年に米ダウケミカルのテキサス化学工場(原料:シェールガスに由来する化学物質)建設プロジェクトを$4億で受注した。シェールガス発電所建設が活発になるのに備え、現代(ヒョンデ)重工業は変圧器供給を増やし、今後はタービンやボイラーなどの製品にまで増産を拡大する計画だ。斗山(トゥサン)インフラコアには建設注文が押し寄せ、3年前に閉鎖したノースダコタ州の小型建設装備工場まで再稼働し始めた。SK建設とSKE&Sも、シェールガスプロジェクト参加を模索している(*6)。

 韓国知識経済部も2012年4月にタスクフォースを構成し、シェールガスが韓国の産業に及ぼす影響の検討に入り、5月14日に第1回会議を行った。8月末にはシェールガスの開発や導入についての総合対応を発表する計画だ(*7)。

 メタンハイドライドの日本近海における可採埋蔵量に注目が集まっているが、韓国と同じように地層の新しい日本にも、シェールガス資源はないようだ。だがここにきて、シェールオイル試採掘報道が2012年7月6日に登場した。

日本にあるのはシェールオイル
 石油資源開発株式会社は2012年7月6日、「鮎川油ガス田(秋田県由利本荘市)」で来年にも、「シェールオイル」の試掘に乗り出すことを公表した。これまでシェールオイルの存在は確認されながらも、採掘は難しいとあきらめられていたが、技術の進歩で採算性が見込めると判断した(*8)。

 まず、詳しいシェールオイルの分布を調べるため、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の補助金交付を受け、試採掘の作業を本格化させる。500万バレル程度の採掘が見込める地層が見つかれば、試掘のうえ、来年にも試験生産に着手する計画だ。シェールオイルは広範囲に分布するのが特徴。同社は、周囲地域でも埋蔵が有望視されるとして、探鉱作業のエリアの拡大も検討中だ。これらを合わせれば、国内の年間石油消費量の数%に当たる1億バレルの採掘も視野に入るという。
 ただ、シェールオイルの採掘には、通常の石油掘削と比べ多くのパイプを土中に埋め込む必要がある。先行する北米/欧州などでは環境問題が指摘されており、試験生産に成功したとしても、生産量拡大への課題は多く、今後の動向が注目される。

(*1) 米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)「世界のシェールガス資源量評価リポート」(2011年4月)
“World Shale Gas Resources:An Initial Assessment of 14 regions Outside the United States”
http://americaspetrogas.com/pdf/World-Shale-Gas-Resources.pdf
(*2) 中国人民日報記事 http://www.spc.jst.go.jp/news/120701/topic_3_04.html
(*3) 中国のシェールガス埋蔵地域 大半の中国シェールガスは砂漠地帯に埋蔵されているため、一つの抗井に水1万トンを消費するとされる水圧破砕法を使用するのは難しい。
(*4) 朝鮮中央日報(2012年6月13) http://japanese.joins.com/article/j_article.php?aid=153676&servcode=300§code=300
(*5) 米国市場のシェールガス用高級鋼材需要 シェールガスを開発するためには、地下数kmを掘り下げなければならない。そこで、米国のシェールガス採掘企業はガス流出の危険をなくすため、多少高くても信頼できる企業のパイプを使う。
(*6) 朝鮮中央日報(2012年6月13日) http://japanese.joins.com/article/640/153640.html?servcode=300§code=300
(*7) 聯合ニュース(2012年5月14日) http://japanese.yonhapnews.co.kr/economy/2012/05/14/0500000000AJP20120514001700882.HTML
(*8) 石油資源株式会社ニュースリリース(2012年7月20日) http://www.japex.co.jp/newsrelease/pdf/20120720taitooil.pdf

(IP総研)
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