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特許情報から見た地熱発電

2013/03/25 特許/実案 企業動向 技術動向

 再生可能エネルギー(自然エネルギー/クリーンエネルギー/グリーンエネルギーとも称される)の海外先行事例として洋上風力発電と振動発電を取り上げたが、今回は地熱発電および地熱利用を取り上げる。

 地熱発電能力は世界的に見れば増加傾向にある。図1は地熱開発が本格化した1960年代からの世界の地熱発電能力の総量を示しており、世界最大の地熱発電国である米国の伸びは1990年を境に微増傾向であるのに対し、米国以外の地域や国の伸びが圧倒的に大きいことが分かる(*1)。

 つぎに、「世界の地熱発電能力の2010年実績と2015年予測」(*2)および、「2010年地熱発電能力上位10ヶ国の1990年から5年ごとの発電能力伸び率」(*3)を表1に示す。

 表1から、米国の地熱発電能力の伸びは少ないものの、世界最大の地熱発電国であることに変わりはなく、以下フィリピン、インドネシア、メキシコ、イタリア、ニュージーランド、アイスランド、日本、エルサルバドルがこれに次ぐ地熱発電大国であることが分かる。

 そして、各国別の地熱発電能力の変遷に注目すると、
  ・発電設備拡張の時期は国によって異なることが分かる。
  ・米国は1990年代後半には地熱発電能力を低下させており、
  ・フィリピンやイタリアでも、過去10年間ほとんど発電能力は増えていない。
  ・それに対し、インドネシアやアイスランドは地熱発電の開発を加速させている。
 これら各国の状況は、1990年代後半のエネルギー資源価格低迷による代替電源ニーズの低下や、各国内における開発可能な蒸気溜まりの枯渇への直面などによると考えられる。

 2015年予測から、今後の地熱発電への投資が大きい国としては、インドネシア、フィリピン、ニュージーランド、メキシコ、ニカラグア、トルコであることが分かる。そして、“Geothermal Electricity Market in Europe” (2011)には、2015年までに最も大きな拡張を計画しているのはトルコであるとの指摘がある(*4)。

 欧州指令に基づき、再生可能エネルギー導入に積極的に取り組む欧州(*5)でも、発電用蒸気溜まりが多数存在するイタリア、アイスランド、トルコ以外の国々の地熱発電能力は低水準である。地熱発電はクリーンエネルギーのごく一部にしか過ぎないことが分かる。また、欧州最大の地熱発電国イタリアでも総発電容量に占める割合は0.8%であり、主要な電力源とはなっていない。アイスランドでは地熱が総発電容量の2割以上を占めるが、アイスランドが人口30万人の小国であり、総発電容量が小さいために地熱発電が目立った存在となっている(*3) ことを忘れてはならない。

 表1から明らかなように、アジアと中南米の環太平洋火山帯に位置する国々や、アフリカの火山地帯にある各国では地熱発電開発の勢いが増している。これは経済成長に伴う電力需要の増加だけでなく、
  ・今世紀に入ってからの石油価格の高騰による外貨繰りの逼迫
  ・気候変動の影響による干ばつで、水力発電量が不足
  ・新興諸国による資源争奪戦で、長期間的には資源価格が高騰する見込まれる
ためであり、シェールガスなどの新規エネルギー資源埋蔵の可能性の少ない国にとって、地熱は今後の貴重なエネルギー資源となることが見込まれ、その用途は地熱発電だけでなく、各種の用途が考えられる。


図1 世界の地熱発電能力


表1 「世界の地熱発電能力の2010年実績と2015年予測」および、「2010年地熱発電能力上位10ヶ国の1990年から5年ごとの発電能力伸び率」

 地熱発電関連の出願状況を大まかに把握するために、特許データベースPatBaseで以下の検索を行った。なお、PatBaseはファミリー単位のデータベースであり、件数はファミリーの数となっている。

集合 件数 検索式                            
 1 1,021 IPC=(F03G4/00)
 2 1,674 TAC=(Geothermal) and TAC=(Power or Electric* or Energy) and TAC=(Generat*)
 3 1,570 (1 or 2) and EPD>19930101
※F03G4/00定義:地熱エネルギから機械的動力を生み出す装置

 1993年以降の優先日を持つファミリー件数は1570件となった。表2には5極対応ファミリー件数を示した。
 日本特許件数の多さは、富士電機、三菱重工業、東芝、といった地熱発電に適したタービンを製造する企業の特許出願が多くあるためと考えられる。そして、日本企業の地熱利用関心度が高いことも分かる。
 地熱発電大国であると同時に、地熱利用大国でもある米国の特許件数は多く、しかも地熱利用への関心度も高いことが分かる(なお、米国公開制度は2000 年11月29日以降の出願に適用されていることに注意する必要がある)。

(IP総研)


表2 各国対応ファミリー件数

*1)  ”Geothermal: International Market Overview Report” GEA(2012年5月)
http://www.geo-energy.org/pdf/reports/2012-GEA_International_Overview.pdf
*2) "Geothermal Power Generation in the World 2005–2010 Update Report”
http://geotermia.org.mx/geotermia/pdf/WorldUpdate2010-Ruggero.pdf
*3) 『地熱発電の現状と動向2010・2011年』社団法人火力原子力発電技術協会(2012年3月)
*4) “Geothermal Electricity Market in Europe” (2011)
http://egec.info/wp-content/uploads/2011/12/Geo-Elec-Market-Report-2011-.pdf
*5)  「欧州2020」
http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000777/eu_re_energy.pdf
欧州の地熱利用
http://www.hptcj.or.jp/Portals/0/data0/press_topics/documents/20120111_press_report.pdf
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