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2023.10.19

特許部 牛島倫太郎

【2023年 米国トレーニー日記】カナダ訪問

弊社では、2022年6月から、米国の特許事務所へのトレーニー派遣を再開しました。私(牛島)は、2023年1月に派遣され、同年7月までの半年間の予定でワシントンDCエリアに滞在しています。本稿では、番外編としてカナダ出張に関してご紹介します。

この度、米国トレーニープログラムの中でカナダ出張に行ってまいりました。6月に1週間をかけ、私と同時期に弊社からアメリカへ派遣されているトレーニーの渡邉とともに計7つの特許事務所/法律事務所を訪問しました。この出張のなかで感じたことは、カナダはとても人種が多様で平和的であること、さらにこれから人口も経済ももっと成長していく国なのではないか、ということです。人口が3600万人~3700万人と、まだまだ少ない方ではありますが、広大な土地があること、移民が非常に多いということ、GDPも世界8-9位ということからも、これからもゆっくりと成長していく国なのではないかと感じます。オタワとトロントの街や、鉄道の様子、ショッピングモールの様子などを見ても、街全体の雰囲気が明るく身の危険をほとんど感じませんでした。特にオタワは建物や道がとても綺麗で、行きかう人も落ち着いた様子で、また、多様な人種を見かけることもあり、外国の人が住みやすい環境ではないかと思います。トロントも都会的な雰囲気はあるものの、綺麗な街並みの中に昔ながらの建物も残されていて素敵でした。訪問先の事務所で、トロントの街並みはどこかニューヨークのマンハッタンに似てるね、と話したところ、「トロントのダウンタウンはNew York run by the Swissって言われるよ(要は、綺麗なニューヨークという意味のようです)」という回答が返ってきたのは印象的でした。今もなおトロントやその周りのエリアの開発が進んでおり、トロントはこれからも進化していく街なのではないかと思いました。

正直、アメリカは体格や身長が日本人と比べて大きい人がとても多く、特に私の生活するエリアではアジア系の顔を見る機会も少ないためトレーニーとして駐在していた最初のうちは非常に疎外感を感じていましたが、カナダでは中国人や韓国人、東南アジアや西アジアの人を見かけることが多かったように思います。オタワのリドーセンターというショッピングモールではターバンをした警備員が何人もおり、ワシントンDCエリアではこのような光景を見たことがなかったのでとても印象的でした。アメリカを人種のるつぼと言うのに対し、カナダはモザイクだと話している現地事務所の方もいました。実際にトロントにはチャイナタウンやリトルイタリー、コリアタウン、リトルトウキョーという個々のエリアがあるそうです。カナダは個々の人種や個性を大事にしつつ、みんなで一緒に生きている国のように感じます。また、たばこや大麻に寛容的な国でもあり、トロントやオタワの街のいたるところで煙草屋や大麻のお店を見かけます。

(オタワの街並み その①)

(オタワの街並み その②)

(トロントの街並み その①)

(トロントの街並み その②)

カナダの特許出願件数は年間38,000件程度で安定しており、そのうち日本からの出願は1400件程度で、国別でみると第8位となっています(2021年から2022年のカナダ知的財産庁(CIPO)の統計を参照)。カナダでは、米国及びメキシコとの自由貿易協定に基づく義務として2025年1月1日までに特許権の存続期間を調整するPatent Term Adjustment(PTA)の制度を導入することになっていて、そのための法改正案が2023年4月20日に連邦政府より提出されています。このPTA導入に先立ち、2022年10月3日には審査遅延を抑制するための改正特許規則が発効し、3回目のオフィスアクションに応答する際に追加の審査料の納付を必要とする継続申請請求(Request for Continued Examination)や超過クレーム費用などが導入され、権利化プラクティスが大きく変わっています(参照:https://www.ngb.co.jp/resource/news/4095/)。

なお、ワシントンDCからカナダのトロント、オタワへのアクセスは簡単で、飛行機で1時間程度で行くことが出来ます。入国審査もあまり厳しい印象はなく、行き来はしやすいのではないかと思います。ただ、カナダに行く前には、eTAというアメリカでいうESTA申請のような事前の申請が必要です。また、トロントから帰るときにはトロントの空港内でアメリカへの入国審査があります(カナダからアメリカに行く人が多いためこのような特殊な制度になっているとか)。時間的には20分もかかりませんでしたがこの点注意が必要です。

なおカナダの事務所はどこかに事務所が集中しているというわけではなく、トロント、オタワ、モントリオール、バンクーバーなどの都市に点在していることが多いようで、1回の訪問で事務所をすべて知ることは出来ないかもしれません。ただ、少なくともトロントとオタワに訪問して感じたのは、事務所の方たちはとても温かい方ばかりだったということです。英語も、イギリス系だからなのか、アメリカ人よりも聞き取りやすい方が多かったです。また、地理的に見てカナダとアメリカが隣接しているからこそ、出願をアメリカに絞るだけではなくカナダにも出す方が良いのではないかとある代理人がコメントしておりました。カナダが成長している国であり、アメリカとのやりとりも多いからこそ出願を検討してみるのも良いのではないかと感じます。また、アメリカやEPとの条約締結に応じてカナダの特許法は法改正が進んでおり、実務上もこれから複雑化していくようです。カナダ出願や審査のことで疑問などがありましたら、是非、弊社までお問い合わせください。

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