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2024.06.07

特許部 中辻 啓

USPTO Design Day

弊社で海外意匠を担当する中辻、永田は2024年5月9日に開催された米国特許商標庁(USPTO)の意匠イベントDesign Dayに参加しました。Design DayはUSPTOの意匠審査部ディレクター、審査官や、意匠実務者が数多く参加するイベントで、今年で17回目の開催となります。
 

日本に基礎出願を持つ海外意匠出願は、米国への出願が中国に続き2番目に多くなっています。意匠は特許より国際的なハーモナイズ(部分意匠制度や関連意匠制度、公告延期制度など)がされておらず各国独特の実務を有しており、弊社では米国独自の制度や実務に対する理解を深め、最新情報のアップデートを目的として参加しました。

* WIPO ip statistics data center参照

当日は様々な統計データも共有されましたがその多くはUSPTOが提供しているPatents Dashboardでも確認できます。例えば、最初のOffice Actionまでの期間、登録までの期間や認可率が公開されています。
https://www.uspto.gov/dashboard/patents/design.html
当日は、最近は登録までの期間が22か月を超えており、これを減らすべく審査官の数を増やして対応しているとの説明もありました (さらに採用予定)。

また、全体の出願数は近年増加傾向であるとの紹介もありましたが、よくよくその増加要因を調べると中国からの出願の増加が主な要因でした(米国内や日本からの出願は減少傾向です)。

普段あまり見られない統計データも共有されました。例えば、意匠出願後の最初のOffice ActionのタイプなどはPatent Dashboardでは確認できませんが、約4割が拒絶なく認可となっています。また、8%が限定要求であることは、少なくともこの程度は複数の実施例を含んだ出願であることがわかります。

また、2024年1月から運用が開始されたDesign Patent Agent制度*はまだ3人しか登録がなかったとの説明がありました(2024年4月現在)。
その他、ハーグ出願の利用状況、手続きの国際調和を目指したDesign Law Treatyの状況や、審判官(PTAB Judge)のパネルディスカッションが行われました。そして最後は、最近の地裁、CAFC判例、審判例の紹介が行われ、それらの判例に基づく図面作成、出願、審査時の注意点などが共有されました。

当日は、意匠実務者の参加も多く、意匠関係の知り合いに会ういい機会でもありまた。また、その後DCエリアに滞在し米国意匠をリードする複数の弁護士と意見交換を行い米国意匠実務についての理解を深めることができました。
NGBではみなさまに有用な情報を提供するべく、引き続き実務理解及び最新情報のキャッチアップを進めてまいります。

* 通常のPatent Agentは理系のバックグラウンドを持つことが試験を受けることの要件でしたが、これを緩和してデザイン系のバッググラウンドを持つ人はDesign Patent Agentとして受験資格を得られることとなっておりました。

 

 

 

中辻 啓 弁理士 米国パテントエージェント合格
米国・中国での駐在経験を活かし、電気・機械分野の特許/意匠の権利化や模倣品対策などの係争について海外での豊富な実績を持つ。欧州異議案件のスペシャリストとしても社内外から信頼を寄せられる存在。

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