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2021.07.21

特許第2部:木下 遼祐

【特許・意匠ニュース】 インドネシアにおける医薬用途クレームに関する新審査ガイドラインの概要

インドネシア特許庁は、2019年10月25日に新審査ガイドラインを発行し、同日から施行しています。現地代理人によると、新審査ガイドラインはインドネシア特許庁内のみで運用されており、2021年1月になってその情報を入手できたとのことです。

新審査ガイドラインのAppendix 1(英訳タイトル”CHEMICAL-PHARMACEUTICAL FIELD”)のChapter 5(英訳タイトル”DISCOVERY”)には、新規または未知の医薬品/化合物の新規用途等に関する発明について特許適格性を認める旨が記載されています。そして、クレームの記載方法について、下記のとおり例示しています。
・Compound X for use as medicament of disease Y(EPC2000タイプ)
・Use of compound X for treating disease Y
・Use of compound X for manufacturing medicine for treating disease Y(スイスタイプ)

また、既知の医薬品の新規用途等に関する発明については、EPC2000タイプが許容されることも明記されています。

ここでの「用途等」とは、特定の疾患の治療に向けられたものとされており、作用機序により用途等を限定するクレームは、疾患の種類を特定できず、その作用機序を有する医薬品がどの程度有効か不明なため、不明確であるとみなされます。
新審査ガイドラインに記載されている例では、” Compound A for use as histamine receptor inhibitor「ヒスタミン受容体阻害剤としての使用のための化合物A」”というクレームについて、ヒスタミン受容体阻害剤という特徴では、化合物Aを含む医薬品が、何の疾患の治療に作用するかということが決まらないので、不明確であり特許適格性は認められない旨が記載されています。

新審査ガイドライン発行の経緯について、以下の2点が主な理由ではないかと考えられます。
・インドネシア特許法第4条(f)注では、既知の医薬品の新規用途を発明とは認めないと規定している一方、新規化合物の医薬用途クレームについても拒絶されることがしばしばあったこと。
・審査官の間で、医薬用途クレームの形式についての解釈が一致していなかったこと。

なお、新審査ガイドラインの発行により、既知の医薬品の新規用途等に関する発明についても特許適格性が認められるようになったと解することができるかと思います。しかし、実務への影響については、現行法の下で当該新審査ガイドラインによって特許が付与された出願はほとんどなく、現地裁判所がそのような特許をどのように考慮するかということについて明らかではないことから、現状では不明となっています。

弊社では、引き続き情報収集および調査を進めて参ります。

注:インドネシア特許法第4条(f)では、以下を発明から除外しています。
1. 既存の及び/又は既知の製品の新規用法;及び/又は
2. 既存の化合物の新たな形態であって、有意な効能の改善が認められず、その化合物の既知の関連する化学構造との差異がないもの

(参考)
・ジェトロ仮訳 インドネシア特許法
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/idn/ip/pdf/tokkyo_2016.pdf
・情報源:Spruson & Ferguson Intellectual Property事務所(Jakarta)
(”New patent examination guidelines for medical use claims in Indonesia” Adelia Lin and Nadhia Gotama, May 6, 2021 )

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