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2021.08.04
特許第2部:梶本 陽子
イノベーション特許制度の段階的廃止規定を含む改正法案が2020年2月5日にオーストラリア連邦議会の両院を通過したことを受けて、2020年2月からイノベーション特許制度の廃止準備が進められてきました。現在はその移行期間にあたり、イノベーション特許出願の新規受付は2021年8月25日で終了となります。ただし、以下のような出願については、例外的に、2021年8月26日以降も受け付けられます。
・2021年8月25日以前に出願された親出願からの分割イノベーション特許出願
・2021年8月25日以前に出願された標準特許出願をイノベーション特許出願に変更する出願
また、既存のイノベーション特許および2021年8月25日以前の出願日を有する出願に基づくイノベーション特許については、出願日から最長8年間の存続期間の満了まで有効となります。
イノベーション特許制度は、1979年に創設された小特許制度を改正した制度であり、2000年改正特許法により導入されました。イノベーション特許制度は、ライフサイクルの短い製品について迅速に特許を付与する制度であり、イノベーション特許の存続期間は最長8年間となります。また、標準特許で要件とされる進歩性に対して、イノベーション特許では進歩性よりも緩やかな基準である革新性(an innovative step)が要件となります。イノベーション特許出願は審査を経ることなく特許が付与されますが、権利行使のためには審査を請求して有効性が証明される必要があります。
イノベーション特許制度の廃止はオーストラリアの中小企業のニーズに沿うためのものであり、オーストラリア特許庁はイノベーション特許制度を廃止する理由を以下のように説明しています。
・大企業や外国企業が中小企業の商品の周辺技術を網羅するような大量のイノベーション特許出願を行い、中小企業のビジネスにとって妨げになっている。
・低水準かつ審査を受けていないイノベーション特許の存在によって、中小企業の事業活動の自由に不確実性が生じ、真のイノベーションと競争の妨げとなっている。
・外国特許出願の基礎とできない一方、イノベーション特許によって発明が開示された場合、海外で模倣される恐れがあり、輸出ビジネスに不利益となる可能性がある。
なお、2021年4月7日に、オーストラリア特許庁は、大量のイノベーション特許出願を処理しているため、認可までに時間がかかっていると発表しています。
(参考)
・オーストラリア連邦議会 法改正情報
https://www.aph.gov.au/Parliamentary_Business/Bills_Legislation/Bills_Search_Results/Result?bId=s1216
・オーストラリア特許庁の発表(2021年4月7日付)
https://www.ipaustralia.gov.au/patents/applying-patent/innovation-patent-application-process/phase-out-innovation-patent
https://www.ipaustralia.gov.au/about-us/news-and-community/news/delays-granting-innovation-patent
・オーストラリア特許庁のイノベーション特許制度の説明(2018年11月22日更新)
https://www.ipaustralia.gov.au/patents/applying-patent/innovation-patent-application-process