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2005.05.02
それよりも、いま特許取得コストの高騰に頭を痛める米企業の法務部長達が真剣に検討をしているらしいのが、インドへの特許明細書作成作業アウトスース。テキサス・ローヤー誌(2005.4.4)がこの辺りの事情を紹介しています。それによると、いまや特許出願書類の作成を外部弁護士に依頼すると、1件1万ドルかかることも珍しくないといいます。(他に、「ソフトウェア特許出願のドラフティング費用:10,000~30,000ドル。特許取得までの費用はさらに10,000 ~ 20,000ドル要する」 “Obtaining and Litigating Software Patents” Wayne M. Kennard 430 PLI/PAT 193,208 (1996)参照)
そこで、高い能力を持ったインドの技術者への明細書ドラフティング作業外注が非常に魅力的になってきているというわけです。ただし、出願前のセンシティブな情報をインドなりその他の外国に持ち出すという行為には、さまざまな法的リスクが伴うことになります。
たとえば、発明秘密保持法(Invention Secrecy Act of 1951: 特許法第181条~188条を設置)によれば、米国でなされた発明について最初に米国に特許出願することなく外国特許出願をすることを望む場合、出願人は米国特許庁の外国出願許可を得ることが要求されます。この発明秘密保持法が意図するところは、発明者が自らの発明技術を外国に広める前に、国防上の利害について米特許庁に判断させることにあります。ここで、このような新技術情報をファクシミリやeメールで外国へ送信し、米国特許出願書類を作成させ、再びファクシミリやeメールで返送させて、最初の特許出願を米国に提出する、という行為はどう捉えるべきでしょうか。発明秘密保持法の文言自体は遵守しているようですが、他に違反リスクを考慮すべき技術輸出管理諸規則が存在します。武器輸出管理法に基づき国務省が規制する軍事転用可能な技術の規制や、商務省の産業・安全保障局による技術輸出規制など、特許法以外のさまざまな法の網が張られているのです。たとえば商務省が管理する規制品目リスト(Commerce Control List: CCL)は、輸出前に特別許可が必要な技術、そうでない技術を、さらに仕向け地別に細かく分類しています。出願明細書作成のため技術情報を米国外へ出すのであれば、その前にこの細かな分類のチェックと、万が一の場合に責任を回避するための適切な記録保持が欠かせません。
生み出される技術がほぼ特定分野内にあり、CCL分類のチェック費用その他輸出管理規則の遵守コストと違反リスクが低い場合は、優秀なインドのドラフティング・サービスを検討する余地はありそうです。その逆であれば、逆に法遵守コストと違反リスクがあまりに大きくなり、本末転倒といった事態にならないとも限りません。特許業務コスト削減の切り札として、インド・アウトソースを・・・とまではまだ明言できないようです。
(渉外部・飯野)