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2006.03.15
競合入札者が学区域に自社特許製品を入札仕様書に含むように説得することで競業者に見込まれる経済的な利益の妨害および不正競争に関する故意を認めた原判決を取り消す。「営利法人が自社製品に有利な仕様を獲得しようとする努力は違法なものではなく、詐欺または不正行為にはあたらない。」
(FieldTurf International, Inc., et al. v. SportFields LLC, et al., CAFC, 1/5/06)
FieldTurf International, Inc.とFieldTurf, Inc.(以下、FieldTurfと総称)が有する「人工芝」に関する米国特許第5,958,527(以下、「’527特許」)および同第6,338,885(以下、「’885特許」)は、充填物に低温ゴムを含有し、無塵で角のとれたケイ砂を開示している。
カリフォルニア州Folsom-Cordova統一学区域は、その運動場建設に際して、地域の公園に設置されているFieldTurfの人工芝と類似する製品を使用することを希望しており、同学区域建築課による提案依頼書には、「FieldTurf製造のサッカー人工芝・プロシリーズ・・・または同等と認められる人口芝」と指定されていた。その仕様は、繊維のデニール、高さ、タフティング、多孔性の補助裏地、砂とゴムによる充填物層構造といったFieldTurf製品が有する特徴を含んでいる。
Sprinturf, Inc.、Empire and Associates, Inc.、SportFields LLC、Orion(以下、SportFieldsと総称)は、人工芝を製造する競業者であるが、同学区域に対して、その入札仕様書はFieldTurf製品のみを調達するようにしているため、カリフォルニア州法になじまない単独応札に該当する旨、申し立てた。
それに対して、同学区域は仕様書を改訂し競争入札を確保する旨、応じた。SportFieldsの営業担当役員は、同学区域に対して、仕様書に記載されている砂とゴムによる充填物層構造や多孔性の補助裏地を使用しない「PerfecTurf」を提案し、同学区域責任者に「PerfecTurf」設置のデモを行なった。一方、FieldTurfは、同学区域に対して、幾つかの製品の品質を比較すべきであることを提案し、FieldTurf製品が優良であることを強調した。
入札仕様書は改訂されたが、改訂版には、FieldTurf製品が有する要素、該特許クレームに相当する低温ゴムを含有する充填物の要件がつけられ、三番目の改訂版には、「FieldTurf・・・または同等と認められる」の文言は削除されたが、FieldTurf特許クレームの要素である「無塵で角のとれたケイ砂」の要件が追加されている。さらに、同改訂版は、入札者に入札製品は他の製造者の特許を侵害しないこととする旨、要求している。仕様書は代替製品を認めることにしたが、早急に同意するよう求めている。SportFieldsは、改訂版の仕様書が明確に代替製品を認めているものではないとして不服を申し立てたが、同学区域建築課は、仕様書をさらに修正するには遅すぎるとして、SportFieldsに対して、とにかく入札書類を提出すべき旨、通知した。
当該事業計画には、SportFields、FieldTurf、その他の者が入札したが、最低価格でSportFieldsが入札しており、SportFieldsが落札することになると、同学区域は発表した。SportFieldsの入札書は、代替製品を特定せず、仕様書の変更を求めておらず、また、特許侵害についての記載はない。
FieldTurfは、SportFieldsと同学区域に対して、SportFieldsの入札は、特許法271条(a)、「販売の申し出」に相当する特許侵害であり、特許権を行使する旨の警告状を送付したため、同学区域は、すべての入札を拒絶し、提案依頼書を撤回し、仕様書をさらに改訂した。提案依頼書の新版においては、砂とゴムの充填物は全ゴムタイプに変更され、FieldTurf特許を回避し、「FieldTurf・・・または同等と認められる」という文言が削除された。FieldTurf は再入札せず、同事業計画は再びSportFieldsに落札された。
FieldTurfは、SportFieldsに対して、最初の落札が米国特許法271条(a)による販売の申し出に基づく特許侵害にあたり、経済的見込利益を意図的に妨害する不法行為、また、カリフォルニア州法に基づく不正競争違反により、カリフォルニア州東部地区地方裁判所に提訴した。一方、SportFieldsは、侵害を否定し、FieldTurfに対して、経済的見込利益を意図的に妨害する不法行為および不正競争違反に基づく反訴を提起した。地裁は、SportFieldsによる非侵害の抗弁、反訴に係る請求を支持し、弁護士費用を認めた。
これに対して、FieldTurf は、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)に控訴した。
一部確認、一部破棄、一部取消
判旨
(1) 特許法271条(a)、販売の申し出に基づく特許侵害
1994年、特許法271条(a)は改正され、侵害の要件に「販売の申し出」が追加された。米国法と諸外国法とのハーモナイズを目的とした改正である。
(…… 以下略)
*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。