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2006.07.10
今回のご質問は:
アメリカ特許庁が、特許出願のクレーム数を制限する等のルール改正を予定しているらしいと噂に聞きました。詳細を教えて下さい。(その2)
実は先日、アメリカ特許庁のHPで、新しい早期審査制度を採用する旨の告知がされているのを見つけました(6月26日付)。
Changes to Practice for Petitions in Patent Applications To Make Special and for Accelerated Examination
この制度によれば、今年の8月25日以降、下記の条件を満たした上で特許出願を行えば、出願から12ヶ月以内に特許性の有無の判断が行われます。
(1)出願と同時に申請書を出し、所定の費用を納める。
(2)~(4)・・・省略
(5)独立クレーム数を3以下、全クレーム数を20以下とし、マルチの従属クレームを含まない。また、独立クレームの特許性と、そこに従属する従属クレームの特許性を別個に議論することは出来ない(従属クレームの特許性は、独立クレームの特許性に委ねられる)。
(6)発明が単一性を有する。
(7)審査官との面談に応じる。
(8)出願前に先行例調査を行ない、調査日/調査分類/DB名/検索式等を報告する。
(9)審査促進支援ドキュメント(an accelerated examination support document)を提出する。該ドキュメントにおいては、(A)IDS及び先行例を提供し、(B)各先行例のどの記載が、クレームに対してどの様な制限(limitation)をもたらしているかを特定し、(C)先行例を踏まえての各クレームの特許性を説明し、(D)発明の有用性を述べ、(E)クレームの制限(limitation)をサポートする記載が明細書のどこに開示されているかを示し、(F)103条c項に基づいて引例適格を除外される先行例があれば、それを指摘することが必要。
最初にこれを見たとき、 問題の “Claims Practice” の要件とよく似ているため、1月3日付のルール改正案が方々からの批判を受けて、早期審査制度(即ち出願人側の権利)という形で決着したものかと思いました。しかし特許庁HPのどこにもその様な言及はありませんし、アメリカ人弁護士に確認したところでは「両者の間には直接的な関連は無い。互いに独立した、共存し得る制度である」とのコメントを得ました。従って、ルール改正案(1月3日付)は依然として「生きて」おり、何時、どの様な形で正式なルールとして発表されるか、引続きのウォッチが必要です。
一方ではHighway Pilot Program(日米特許庁における特許審査ハイウェイの試行開始についてを参照)が7月3日から始まっていますし、アメリカ特許庁の審査促進・滞貨解消に向ける努力には、何やら執念の様なものを感じます。
(渉外部 柏原)