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2006.07.15

特許/裁判管轄権/対人的管轄権行使と適正手続の要件

州外の被告が一般的管轄権に服しない場合であって、請求原因と被告の活動に関連性がある場合には、特別管轄権を行使できる。特別管轄権を行使できるかを決定するにあたり、2段階の調査をする。第1に、州のロングアーム法が認めていること。第2に、適正手続の要件を満たしていること。適正手続条項は、十分な「最小限の関連性」が存在し、訴訟の維持が伝統的な概念であるフェアプレーと実質的な正義に反しないことを要求している。

当該州内に事業活動の本拠を置かない場合であっても、当該州内において販売行為を行っている者との関係を通じて、目的をもって活動し、その者の販売またはマーケティング活動を管理する権利を有している場合には、法廷地との関連性が認められ、対人管轄権を肯定することができる。(Breckeridge Pharmaceutical, Inc. v. Metabolite Laboratories, Inc., et al., CAFC, 4/7/06)

事実概要
Metabolite Laboratories, Inc.(以下、Metabolite)は、心臓病や血管系疾患のリスク要因である高ホモシステイン血症をコントロールする方法(血清代謝物のレベルを上昇させる)に関する特許の所有者であり、主に当該特許を製薬会社に許諾する事業を行っている。Metabolite特許の独占的ライセンスにより、共同被告であるPamLab, L.L.C.(以下、PamLab)は、ビタミンB12、葉酸、B6 から成る特定の調合によるFOLTXという名称のビタミン処方薬を製造販売している。FOLTXは、全国の医師および臨床医に販売されている。

Breckeridge Pharmaceutical, Inc.(以下、Breckeridge)は、フロリダに本店所在地を有しており、ジェネリック薬品を取り扱っている。“Folbee”という名称でFOLTXと類似の製品を製造し、これを代用品としてWalgreens、Eckerd、Rite Aid 等の大手薬局や小売業者に販売している。

2003年12月18日、MetaboliteとPamLabは、FOLTXと同等のジェエリック薬品Folbeeに関して、Breckenrigeが卸売業者および小売業者に対して販売の申出をすることにより、Metabolite特許を侵害していると主張して、コロラド地区連邦地方裁判所に提訴した。2003年12月23日、地裁は、原告の一時停止要求(TRO)の申立を斥け、原告は訴えを取り下げた。

数週間後、Metaboliteは、PamLabと協力してビタミンの販売代理店と小売業者に対して、Metabolite特許とPamLabとの独占的ライセンスについて記載した10ないし20通の書簡を送付し、そのうち3通がフロリダのBreckenrigeの顧客である Publix Super Markets、Eckerd、Winn-Dixie に送付された。これらの書簡には、Breckenrigeという名称の記載はなく、また侵害訴訟を提起するという強い警告の文言はない。書簡の概要は下記の通りである。

1社以上の小規模ジェネリック薬品会社がFOLTXと同等のジェネリック製品を販売しており、Metaboliteは特許権者としてFOLTXに係る特許の権利範囲について警告します。FOLTXを適法に処方または注文するかわりに、そのジェネリック製品を販売、調剤、または代用することを内容とする契約を締結しようとする場合には、特許弁護士に相談することをお勧めします。

Metaboliteは、PamLabの連絡先情報を記載したPamLabのパンフレットを同封したが、価格表や注文書は同封しなかった。尚、PamLabは、Breckenrigeの顧客に対する書簡はMetabolite単独で送付されたと主張するが、この主張は意味をなさない。たしかに、Metaboliteの代理人の署名だけがあるので、これらの書簡がMetaboliteによって「送付された」ことは真実であるが、Metaboliteの共同所有者であるRobert H. Allen博士は、PamLabの副社長であるBarry LeBlancがこれらの書簡を送付する目的でフロリダにあるBreckenrigeの顧客情報、住所名称を提供した旨、宣誓証書において認めているからである。PamLabの協力が「なければ」、これらの書簡は送付されなかった可能性がある。

書簡が送付されたことを知ってからおよそ8日が経過した2004年1月29日に、Breckenrigeは、非侵害の宣言判決を求め、同時に、不法行為による干渉および不正競争を理由とする州法に基づく請求を主張して、フロリダ南部地区連邦地方裁判所にMetaboliteとPamLabに対する訴訟を提起した。Metaboliteは、対人管轄の不存在を理由に請求を却下するように申し立て、2004年12月3日、地裁は、裁判管轄に関するディスカバリー手続の後、この申立を認めた。2005年5月17日、地裁はすべての請求についてPamLabの主張を認めて略式判決を下した。Breckenrigeは、別々の控訴審において異議を申し立てたが、両控訴は、連邦巡回区控訴裁判所において併合されている。

破棄、取消し、差戻し

判旨
(1)州ロングアーム法の適用要件と管轄権の行使
 被告が法廷地の一般的管轄に服しない場合であっても、請求原因が被告の内国活動から「発生」、またはそれに「関連」している場合には、地裁は、被告に対する特別管轄権を行使することができる。Burger King Corp. v. Rudzewicz 事件 (471 U.S. 462, 472-73 (1985))。州外の被告が管轄に同意しない場合には、当該被告に対して特別管轄権を行使することができるか否か決定するにあたり、2段階の調査をしなければならない。
(…… 以下略)

*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。

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