- 知財情報
- アーカイブ
2006.08.15
補足意見として、あるクレーム用語の解釈により非侵害が判断され、争点になっているその他のクレーム用語に関して審理せず、裁判所が沈黙することは、特許の範囲、有効性の上に不確実性の雲を残したままになるので、控訴に提示されている争点のクレーム用語すべてを審理し判断すべきであるとの見解が示されている。(Inpro II Licensing, S.A.R.L. v. T-Mobile USA, Inc. et al., CAFC, 5/11/06)
Inpro II Licensing, S.A.R.L.(以下、Inpro)は、米国特許第6,523,079号(以下、’079特許)を有する。当該特許は、個人用携帯情報端末(以下、PDA)モジュールに関し、従来から利用されているPDAシステムに伴う様々な欠点、問題点を克服するための設計に利用される。’079特許の開示によると、従来のPDAモジュールは、高価で大きめであり、データ伝送の際、時間を要し、エラーを起こしやすく、費用がかかる。’079特許は、その図面によると、クレジットカードサイズのPDA用に設計され、ホストコンピュータ上の対応するベイに差し込むことにより、「接続(docked)」される。また、サムホイール(指回し式円形操作板)、ユーザー・インターフェイス、ホストコンピュータと接続するためのホスト・インタイフェイス、プリンタ等の外部装置と接続するための二次外部コネクタを有する。’079特許の説明によると、ホストコンピュータに接続されるまでは、PDA自体の内部CPUにより独立して動作するよう設計されている。ホストコンピュータに接続すると、そのホストCPUが制御して、PDAの記憶装置とその他の機能装置にアクセスできる。
Inproは、T-Mobile USA, Inc.、 Research in Motion Limited、およびResearch in Motion Corporation(以下、総称して、T-Mobile)に対して、’079特許のクレーム34、35、36に関する特許侵害訴訟をデラウェア地区連邦地方裁判所に提起した。T-Mobileは、非侵害と無効性に関して、確認判決を求めて反訴請求した。地裁は、Markmanヒアリングを行い、’079特許クレームの争点となっている用語、8件について解釈した。Inproは、被疑侵害クレームのいずれについても、直接・間接侵害、文言上・均等論上、地裁解釈において、主張を認めさせることはできず、地裁は、Inproの請求におけるすべての特許クレームに関して、T-Mobileによる非侵害の主張を認め、終局判決を確定した。また、’079特許の無効性に関するT-Mobileの反訴請求を斥け、控訴において地裁に差し戻されることとなる場合には、T-Mobileの反訴請求が復活することを認めた。
Inproは、当裁判所に控訴した。
原判決確認
判旨
当事者双方は、地裁による8件のクレーム用語解釈の内、3件について、控訴している。即ち、「host interface」、「docking with the host computer」、「digital assistant module」についてである。また、上記のクレーム用語の内、前者の2件について、即ち、「ホストインターフェイス」、「ホストコンピュータ接続」に関して、地裁が正確に解釈していれば、文言侵害はないことに同意している。両者は、「デジタル・アシスタント・モジュール」の地裁解釈が、特許無効性認定に関して、広く解しているか否かについて争っている。
(…… 以下略)
*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。