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2006.09.15

特許/既判力/請求遮断効と将来の訴訟提起留保の認定要件

通常の請求遮断効に関する原則の下において、争点の請求を再度主張することは認められない。請求遮断効に関する通常のルールに対する例外事項が存在するのは、「当事者が、明確に、事実上、合意して、原告が請求を分離し、または被告がそれに同意する」場合である。

先の侵害訴訟において、和解合意が締結され、将来の争点特許を争う権利を留保していると解するには、明確な留保の文言が認められることが要件となる。実施料支払義務の終了条件としての特許無効が合意されているだけでは、将来、特許無効および権利行使可能性に関する訴訟を提起する権利を明示的に留保しているとは認められない。(Pactiv Corporation v. Dow Chemical Company, CAFC, 6/5/06)

事実概要
Dow Chemical Company(以下、Dow)は、米国特許第5,424,016号(以下、’016特許)および同第5,586,058号(以下、’058特許)を有しており、1995年、Pactiv Corporation(以下、Pactiv)に対して、上記特許に基づき、侵害訴訟を提起した。Pactivは、特許無効、権利行使不能を主張して、反訴請求した。この訴訟は、和解・実施許諾に関する合意(以下、1998年合意)により、取り下げられた。その後、紛争の争点は、1998年合意と当該合意に基づく判決の効力に関する。

1998年合意に基づき、Pactivは、Dow に対し’016特許および’058特許に関して、実施料を支払うことに合意した。しかしながら、2002年後半、Pactivは、支払を停止した。2003年11月4日、Dowは、Pactivに対して、実施契約の重大な違反であること、その違反を解決しない場合には、Dowの特許を実施する権利を失うことについて、勧告した。Pactivは、Dowに対して、当該特許が無効であること、また、その理由により実施料を支払うつもりはないことを通知した。その後まもなく、2003年12月30日、Pactivは、Dowに対して、’016特許および’058特許に関する非侵害、特許無効、権利行使不能を主張して、確認判決を求める訴訟を提起した。Dowは、連邦民事訴訟規則第12条(b)(6)に基づき、請求却下を申し立て、Pactivの提訴は、既判力(請求遮断効)により認められないとした。

当事者双方は、以下の点を除いて、先の取り下げは、除外されることに同意している。すなわち、1) 1998年合意は、Pactivが将来、本件特許に関して争う権利を留保している、2) Pactivによる特許無効および権利行使不能の請求に関する訴訟を提起する十分で公正な機会が否定されているため、判決は効力をもたない。

地方裁判所は、各種の合意事項を検討し、Pactivによる確認判決を求める訴訟提起は、先の裁定により認められず、合意の平易な文言から、明示的には、Pactivに将来訴訟を提起する権利を留保していないとの結論に達した。地裁は、Pactivが先の裁定において、十分で公正な機会が奪われているとの主張を特に考慮していない。地裁は、Dowによる第12条(b)(6)に基づく申立を認め、Pactivによる確認判決を求める申立を斥けた。Pactivは、適時、控訴した。

Pactivは、実施契約に違反しており、訴訟に対する合理的な懸念を有しているため、地裁は、Pactivによる確認判決を求める訴訟に裁判権を有する。Gen-Probe Inc. v. Vysis, Inc.事件(359 F.3d 1376, 1380 (Fed. Cir. 2004))参照。連邦巡回区控訴裁判所は、28 U.S.C. § 1295(a)(1)に基づき、裁判権を有する。

確認

判旨
(1)請求遮断効の適用に関する巡回区の法
まず、当裁判所は、Dowの主張について、請求遮断効に関する争点は、当裁判所の法が適用されることを検討する。本件において、請求遮断効の問題は、「特許事件に関する個別に適用するいかなる法のルール」にも依存しない。したがって、当裁判所は、当該地裁が属する地の巡回区の法を適用する。本件では、第二巡回区である。
(…… 以下略)

*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。

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