IP NEWS知財ニュース

  • 知財情報
  • アーカイブ

2007.01.15

特許/AAA第15条・FAA第3条/仲裁可能性を判断する主体

仲裁条項を有するライセンス契約において、米国仲裁協会の仲裁規則(AAA規則)を導入していることが認められることにより、当事者が、明らかに間違いなく、仲裁人に仲裁可能性の問題を委ねるべく意図していることが証明される。

裁判所は、事実上、仲裁できるものか否かの決定を行うのではなく、単に、当該ライセンス契約に基づく仲裁可能性に関する主張が「まったく根拠がない」ものであるか否かを決定するだけでよく、そうではない場合には、争点の仲裁可能性に関する判断を仲裁人に委ねるべく、訴訟の事実審理を停止すべきである。(Qualcomm Incorporated, et al. v. Nokia Corporation, et al., CAFC, 10/20/06)

事実概要
無線通信は、共通の技術標準に適合した移動局とインフラ装置を要する。主な移動体通信の基準としては、二通りあり、すなわち、Code Division Multiple Access standard(以下、CDMA)とGlobal System for Mobile Communications standard(以下、GSM)である。Qualcomm IncorporatedとSnapTrack, Inc.(以下、Qualcommと総称)は、CDMA技術を開発して、その技術に関する特許を所有し実施許諾している。Nokia CorporationとNokia, Inc.(以下、Nokiaと総称)は、携帯無線電話と無線通信事業者に利用される電気通信インフラ装置を製造している。

2001年7月、QualcommとNokiaは、「加入者設備とインフラ装置に関するライセンス契約」(以下、2001 Agreement)を締結し、Qualcommは、Nokiaに対して、数件のQualcomm特許に関する通常実施権を設定し、CDMA技術を導入した製品の製造販売を認めた。2001 Agreementには、仲裁条項があり、「本契約から生じ、または本契約に関するいかなる紛争、請求、論争、もしくは本契約に関する違反または有効性」についてその対象とし、かかる紛争はいかなるものも、「米国仲裁協会の仲裁規則(以下、AAA規則)に基づき、仲裁によって解決されるものとする」と規定している。2001 Agreementは、また、カリフォルニア州法に基づき解釈されるものとする旨、明示している。

2005年11月4日、Qualcommは、Nokiaに対して、特許侵害訴訟をカリフォルニア南部地区連邦地方裁判所に提起し、訴状において、Nokiaは、12件のQualcomm特許を侵害していると主張した。Qualcommが訴状を提出した後、2005年12月20日、Nokiaは、Qualcommに対する仲裁手続を開始した。Nokiaによる仲裁請求は補正され、Qualcommとの紛争を解決するために仲裁人に付託された主な点は、以下の通りである。(1) Nokiaは、Nokiaによる禁反言の抗弁において、Qualcommの行為はNokiaに対して、Qualcommが発行特許または出願中の特許を所有していないという誤解を招くものであり、NokiaのGSM製品に対して主張することを意図しているとし、(2) Nokiaによるライセンスに関する抗弁において、Nokiaは、CDMA技術を導入している製品の製造、輸入、使用、販売、販売の申し出、リース、あるいは、譲渡するために有効で実施可能なライセンスを有しており、また、Qualcommによる当該製品に対する侵害の請求は、2001 Agreementによって認められない旨の宣言を求めている。これら二件の争点は、直接、Qualcommの訴状に挙げられていないが、Nokiaは、Qualcommによる侵害請求に対する積極的抗弁として主張している。

また、Qualcommの訴状に応答して、Nokiaは、地裁において、次の二件の申立てを行っている。(1) 連邦仲裁法(以下、FAA)第3条に基づく地裁審理停止の申立て、(2) 訴え却下の申立て、または選択的に、より明確な主張を求める申立て。2006年3月14日、地裁は、Nokiaの審理停止または訴え却下の申立てを否定したが、Nokiaが選択的に求めたより明確な主張に関して、要求を部分的に認めた。Nokiaによる停止の申立てに対して、地裁は次のように認定した。禁反言の抗弁は、本件には成立しない。本件は、Nokiaが12の争点特許を侵害しているという主張に関している。訴状に列挙された製品は、CDMA製品ではない。しかるに当裁判所は、本件の争点特許が、CDMA製品を対象としており、仲裁に言及されていない2001 Agreementに対して、いささかも関与していないと認定する。したがって、当裁判所は、9 U.S.C. § 3に基づき、本件に関係する争点が仲裁に言及しているとは理解しない。

Qualcommは、より明確な主張を求める地裁命令に応じて、その訴状を補正し、CDMAではなく、NokiaのGSM製品のみに侵害請求を限定した。Qualcommによる第一補正訴状第23項および第24項は、以下の通りである。

23 情報と確信に基づき、Nokiaは、第三次パートナーシップ計画により推奨され、公表され、採用されたGSM系の技術標準と技術仕様に準拠した製品を米国内製造、使用、販売、販売の申出および/または輸入している。

24 本訴状に基づく被疑侵害のNokia製品は、2001年7月2日付け2001 Agreementに基づき許諾されたいかなるNokia製品も除外する。

しかしながら、Nokiaは、第23項が、2001 Agreementに基づき許諾されていると信ずる技術であるUniversal Mobile Telecommunications Systems(以下、UMTS)の技術標準を推奨する第三次パートナーシップ計画により推奨される技術標準に関する請求を含んでいると主張する。Nokiaによると、第23項は、GMS製品同様、UMTS製品をも被疑侵害製品であるとするから、第24項は、2001 Agreementに基づき許諾された製品を除外しており、Nokia製品が2001 Agreementに基づき許諾されているかに関して、紛争が存在する。

裁判所が、仲裁手続き係属の申立てを否定したのに基づき、Nokiaは、地裁が認めた連邦巡回控訴裁判所に対する控訴の係属申立てを行った。

地裁の裁判権は、28 U.S.C. § 1338に基づいており、地裁命令は、28 U.S.C. § 1292(a)(1)に基づき控訴要件を満たし、控訴裁判所は、28 U.S.C. § 1292(c)(1)により控訴裁判権を有する。

取消し、差戻し

判旨
連邦仲裁法(以下、FAA)第3条は、以下の通り規定する。

いかなる訴えまたは手続きも、いずれかの合衆国裁判所に提起された場合には、書面による合意に基づく仲裁に関するいかなる争点についても、かかる訴訟が係属中である裁判所は、その訴えまたは手続きに関与する争点が、当該合意に基づく仲裁に関していると認められる場合には、かかる仲裁が当該合意条件に合致するまで、当事者の一方による申請に基づき、訴訟の審理を停止するものとする。但し、停止を申請する者に、当該仲裁手続きにおいて懈怠がないことが条件となる。
当事者間の論争点は、上記第3条、次の文言に基づいている。
(…… 以下略)

*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。

関連記事

お役立ち資料
メールマガジン