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2007.03.01
トルコ特許庁は、トルコの首都アンカラにあり、特許・意匠・商標を取り扱っている。特許部で50人、意匠部で40人、商標部で100人(審査官含む)という人員構成であり、近代的な庁舎の中に入っている。2006年度の特許出願件数は4,500件、意匠出願は6,000件、商標出願が60,000件となっている。
意匠は無審査、特許及び商標は審査主義をとっている。さらに特許には、以下の3種類の制度がある。
(1)サーチ・審査を経た20年の存続期間のある通常特許
(2)サーチのみ、審査のない存続期間7年の短期特許
(3)サーチ・審査を経ない存続期間10年の実用新案
このうち、(1)の通常特許に対しては、ナショナルルート、PCTルート、EPCルートの3ルートがある。外国人がトルコで特許の取得を目指す場合は、通常はトルコだけをターゲットにする事態が想定されにくく、EP諸国を含めたEPCルートがお奨めできる。
なお、PCTルートで国際予備調査の見解が肯定的な場合はそのまま認可するとのコメントが特許庁より出ており、迅速な権利化を目指す場合はPCTルートによってもよいだろう。
7年特許、及び、実用新案の有効性は裁判所で判定される。判定後でなければ権利行使は出来ない。商標に基づく税関差し押さえ制度はあるが、継続的なサービスを提供できる環境ではない。ましてや特許に基づく制度は存在しない、とのこと。
特許法など法律面の整備はなされているが、権利行使の状況においては、まだまだ権利者が主導で動かなければ、模倣品対策などは出来ないと言える。
専門裁判所がアンカラ・イスタンブール・イズミルに設置されているが、その有効性については今後の進展を見守っていく必要がある。現地の弁護士に尋ねたところ、特許紛争に関して有名な訴訟事件はまだ存在していないとのことであった。
年間凡そ4,500件の特許出願のうち、日本企業における出願は100件に満たず、国別の順位では第10位にすぎない。これに対し、ドイツは1,000件近く、アメリカでも500件を超える。権利行使の場の整備はまだ不十分であるが、将来に備えて、日本企業も今後はある程度出願数を増やしていく必要があるだろう。
(特許部 牧野)
(NGBウェブマガジン2007年3月号掲載記事より)