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2007.03.15

特許/第102条(b)/方法特許発明に関するon sale barによる無効理由

方法クレームにかかる特許発明に関して、当該発明によるシステム自体が約因を伴うトレードショウに展示された場合には、当該発明によるシステムの制作方法が販売されたのではない以上、on sale barに基づく無効理由には相当しない。(Plumtree Software, Inc. v. Datamize, LLC, CAFC, 12/18/06)
事実概要
Datamize, LLC(以下、Datamize)が有する米国特許第6,460,040号(以下、’040特許)および同第6,658,418号(以下、’418特許)は、Datamizeの代表者、Kevin Burnsの発明にかかる米国特許第6,014,137号(以下、’137特許)の継続出願特許であり、「コンピュータによる情報提供システムのためのオーサリング・システム」に関して共通の明細書を有する。

本件特許発明は、他のコンピュータ・プログラムを作成するために利用されるコンピュータ・プログラムであって、オーサリングツールと呼ばれ、コンピュータ・プログラムを作成する方法とそのソフトウェアの双方にまで範囲を拡張している。’040特許は、方法クレームを含み、’418特許は、方法と装置の双方のクレームを含むと主張されている。オーサリングツールは、カスタマイズされたキオスク(インターネット等により利用できる電子情報ブース)を制作するために利用される。一例を挙げるとスキー場において利用される電子キオスクを制作するために利用される。すなわち、スキー場の状態、現地の宿泊施設、レストランについての情報を顧客に提供し、タッチスクリーンまたはキーパッドで利用する。また、本件特許発明は、キオスク自体ではなく、キオスクを制作するためのソフトウェアと制作方法に関する。

Plumtree Software, Inc.(以下、Plumtree、尚、現在、BEA Systems, Inc.)は、コンピュータソフトウェア会社であり、「企業ポータルサイト(Corporate Portal)」のソフトウェアを制作している。企業ポータルサイトは、ウェッブを使用したソフトウェアであり、多様なアプリケーションと情報をカスタマイズされたデスクトップ画面に表示し、団体の従業員が分散してアクセスできるようになっている。Plumtreeは、先駆けて、この企業ポータルサイトに関して、社内イントラネットを構築しようとする企業に商業化した。

2002年5月17日、Datamizeは、Plumtreeに対する侵害訴訟をモンタナ地区連邦地方裁判所に提起(以下、モンタナ訴訟)して、’137特許の侵害を主張した。同日、Datamizeは、Plumtreeに対する書簡を送付して、以下のように通知した。

Datamizeは、Plumtreeが’137特許を侵害し、とりわけ、カスタマイズとパーソナライズ機能を導入したポータルサイトやキオスクの運営を可能にするソフトウェアを提供していると確信する。当社は、また、その継続特許出願が特許として発行されると、Plumtreeが、当該クレームを侵害することになると確信する。先に通知したように、Plumtreeは、Datamizeの特許権との関係を評価していないようである。

強調された部分は、後に、’040特許として発行される特許出願に関している。Datamizeは、’040特許出願のクレームを書簡に添付して、クレームは、認可された旨、通知した。当該特許は、2002年10月1日に発行された。

2002年11月23日、Plumtreeの申立てに基づき、予審判事は、Plumtreeに関する対人管轄の欠如により、’137特許に関するモンタナ訴訟を却下することを勧告した。2002年12月4日、予審判事の勧告が地裁に承認される前に、Plumtreeは、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所において、確認判決訴訟を提起(以下、カリフォルニア第一訴訟)し、’137特許を侵害していない旨の判決を求めた。Datamizeは、侵害に関して、反訴請求した。2003年7月8日、モンタナ地区判事は、予審判事の勧告を承認して、対人管轄の欠如により、モンタナ訴訟を却下した。

2003年9月3日、Datamizeは、三番目の訴訟をテキサス東部地区連邦地方裁判所に提起(以下、テキサス訴訟)して、’040特許の侵害に関して、Plumtreeを含まない9被告を対象とした。’418特許が、2003年12月2日に発行された後に、Datamizeは、’418特許に基づく侵害クレームをテキサス訴訟に追加するよう申し立てた。’040特許と’418特許の類似性に照らして、被告代理人は、この追加の可能性を考慮しないのは、非常に意外であると主張した。テキサス訴訟において、質問書が送達され、Datamizeが、「争点特許のクレーム発明を導入または実施化しているとDatamizeが主張する被告以外の者により製造、使用、販売の申出、または販売された各製品」を一覧にするよう求めている。Datamizeは、応答して、PlumtreeのCorporate PortalとEnterprise Web Suiteを挙げた。

2004年7月9日、カリフォルニア第一訴訟において、地裁は、Plumtreeによる略式判決の申立てを認めて、’137特許のクレームは、特許法第112条に基づき、記載要件不備のゆえに無効であると判断した。すなわち、「美学的に見て美しい(aesthetically pleasing)」の用語が、主観的であるとされた。

同日、Plumtreeは、’040特許と’418特許に関して、確認判決訴訟を提起(カリフォルニア第二訴訟)した。両特許は、’137特許と類似しているが、「美学的に見て美しい(aesthetically pleasing)」の文言はない。2004年10月15日、Plumtreeは、略式判決を求めて、’040特許と’418特許が、on sale bar(販売による特許性喪失事由)により無効であるとして、申立てを行なった。すなわち、当該特許クレームの方法は、出願日より一年以上前の基準日前に販売され、または販売の申出がなされたとする。三日後、Datamizeは、事物管轄の欠如に基づく却下を申し立て、Plumtreeは、Datamizeによる’040特許と’418特許の侵害訴訟に関する「合理的な懸念」を証明していないと主張した。

Plumtreeによる略式判決の申立ては、争いのない以下の事実を証明している。
1993年初期に、EmmettとKevin Burnsは、Multimedia Adventures(以下、MA)を設立したが、後に、その特許は、Datamizeに譲渡された。1994年12月までに、Kevin Burnsは、双方向のキオスク・システム制作用のオーサリングツール開発を完成した。1995年1月17日、MAの代表者は、スキー産業トレードショウを主催するSki Industry of America(以下、SIA)の代表者に対して、プレゼンテーションし、トレードショウにキオスクの創設を申し出た。1995年1月25日、SIAは、MAに書簡を送付して、MAがトレードショウにキオスクを提供する見返りに、SIAが、電子情報センター参加に協賛する費用一万ドルを放棄することを確認した。トレードショウは、基準日である1995年2月27日の直後、1995年3月3日から7日の期間中、ラスベガスで開催された。キオスクは、ショウ初日の終了間際に完成され、展示された。記録が証明するところでは、SkiPathキオスクが、オーサリング・システムによって制作され、Datamize特許三件すべてのクレームを実施化していた。

地裁は、まず、事物管轄の欠如により却下すべく、Datamizeによる申立てを考慮した。裁判所は、確認判決訴訟の管轄権は、’040特許と’418特許の双方に関して事件性と紛争が存在するため、適切であると結論づけた。’040特許に関して、裁判所は、Datamizeの2002年5月17日付け書簡は、侵害訴訟の合理的な懸念を生ずる明確な脅威または他の行動を示しているとした。書簡が送付されたのは、Plumtreeが確認判決訴訟を提起する二年前であるが、裁判所は、Datamizeによる’040特許の被疑侵害訴訟提起の意図が、変化したことを示す証拠はないと認定した。裁判所は、2002年5月17日付けの書簡が、’418特許に言及していないことを確認している。しかしながら、総合的に状況を鑑みて、裁判所は、Plumtreeが、’418特許に関する訴訟の合理的な懸念を有すると結論づけた。Datamizeが、すでに’137特許に関してPlumtreeを訴え、’040特許と’418特許に関してテキサスにおいて他の被告を訴えて、両特許侵害にPlumtreeの名を挙げているからである。したがって、2002年5月17日付け書簡、’137特許侵害訴訟、テキサス訴訟を併せると、Plumtreeが、訴訟の合理的な懸念を有することになると、裁判所は表明した。

次に、地裁は、Plumtreeによる略式判決の申立てを審理し、’040特許と’418特許の双方は、on sale barにより無効であると判断した。裁判所は、on sale barに関して、基準日前に方法クレームを実施する合意がなされていたため、事件の事実に照らして、認められると結論づけた。この認定の根拠は、1995年1月17日の会議上、MAは、1995年3月のトレードショウの期間中、双方向電子キオスク・システムの展示を申し出ている事実であり、MAは、「一等地」を与えられ、キオスクを展示するために費用は免除されていることから、MAは、対価を得ていると、裁判所は認定し、MAとSIAとの1995年1月17日に行なわれた会議と引き続きなされた合意の双方は、ともに、1995年2月27日の基準日前であることを確認した。裁判所は、さらに、SIAとの合意が、’040特許と’418特許のすべてのクレームを具体化していることは、トレードショウのキオスクの展示に鑑み、認められると表明した。したがって、裁判所は、Plumtreeによる略式判決の申立てを認めた。

Datamizeは、適時、連邦巡回控訴裁判所に控訴した。裁判権は、28 U.S.C. § 1295(a)(1) (2000)に基づき認められる。

取消し、差戻し

判旨
i) 確認判決訴訟の裁判権に関する認定
確認判決訴訟は、「訴えの利益を有する」当事者間に「現実の紛争」が存在する場合に提起しうる。28 U.S.C. § 2201 (2000)、Aetna Life Ins. Co. v. Haworth事件(300 U.S. 227, 239-40 (1937))、BP Chems. Ltd. v. Union Carbide Corp.事件(4 F.3d 975, 977 (Fed. Cir. 1993))参照。当裁判所は、「現実の紛争」が存在するか否かを決定するのに、two-part テストを実施して、(1) 侵害訴訟に直面するという合理的な懸念を確認訴訟の原告に抱かせるような特許権者による明白な脅威またはその他の行動、(2) 侵害を構成しうる現在の活動、または、かかる活動を実施する意図をもってなされた具体的な行動、の双方が存在するかを確認する。Sierra Applied Scis., Inc. v. Advanced Energy Indus., Inc.事件(363 F.3d 1361, 1373 (Fed. Cir. 2004))参照。尚、連邦最高裁は、MedImmune, Inc. v. Genentech, Inc.事件(No. 05-607 (U.S. May 15, 2006))において、上記テストに関する「合理的な懸念」の分岐点は、不当に制限されているか否か、憲法第三条に関する最高裁解釈と矛盾しないかを考慮している。当裁判所は、当該問題について、本件においては検討しない。当裁判所は、合理的な懸念は存在すると認める。本件において、当事者は、二番目の分岐点については、争いがない。したがって、当裁判所は、一番目の問題についてのみ検討する。すなわち、Plumtreeは、’040特許と’418特許の侵害訴訟に直面する「合理的な懸念」を有するか否かについてである。
 (…… 以下略)

*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。

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