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2007.04.01

【アジア・東欧プロジェクト】 第3回:ブラジル特許庁訪問記(前編)

NGBでは2006年秋より「第3次アジア東欧プロジェクト」が進行中です。本コーナーでは各国の訪問が順次済み次第、成果の一部をご報告していきます。
ブラジルは北部に広大なアマゾン地域を抱える一方で、近未来的な人工都市で首都のブラジリアを始めサンパウロやリオデジャネイロなど、気候も景観も全く異なる大都市を擁している。その中でも人口700 万人を超えるリオデジャネイロは、サンパウロに次ぐブラジル第二の都市というだけではなく、世界3大美港の一つと讃えられるグアナバラ湾の景観 コルドバードの丘からの眺望など、いくつもの素晴らしい景観を兼ね備えている。

ブラジル特許庁(INPI: Instituto Nacional da Propriedade Industrial)は、首都ブラジリアではなく、そのリオデジャネイロの中心街にあった。
 
ブラジル特許庁は22 階建てのビルに入っており、一部のフロアに国家衛生監督庁”ANVISA(Agencia Nacional deVigilancia Sanitaria)”が入っている他は、殆どのフロアを特許庁が用いている。このビルは既に老朽化しているため、丁度、特許庁は移転作業を行っている最中であった。旧庁舎から新庁舎へは徒歩5 分ほどの移動距離であり、いずれも市内中心部に位置する。新庁舎は新築ビルではなく、郊外に移転した一般企業の本社ビルであったそうだ。商標部門はすでに、移転が完了しており新庁舎で業務を行っている。特許部門などその他の部門はこれから移転を行ない、2007 年度に移転完了の予定。旧庁舎はファイル倉庫として使用するという。

特許審査官は技術分野によって6つのセクションに分かれている。2006 年12 月の時点で正式な審査官が約100 名、新規に採用され審査官となる研修を受けているスタッフ(審査官補のようなもので、実際に審査実務を行っていると思われる)が約120 名程在籍しており、現在、220 名程の審査官が審査に従事している。さらに、2007 年1 月に新規採用の人員が約120 名ということである。また、その他法務担当弁護士や一般事務スタッフ等を合計すると、ブラジル特許庁の職員数は約600 名である。(2006年12月時点)

ブラジル特許庁は、欧州特許庁(EPO)、米国特許商標庁(USPTO)など、他国特許庁との業務協力提携を結んでいるが、審査官をEPO に派遣し、審査実務の研修を行っている。EPOへの研修生派遣以外にも、日本特許庁やUSPTOへも派遣している。また、逆に南米の他の国々の特許庁からの研修生をブラジル特許庁は受け入れている。
 
コンピュータシステムの導入により商標出願については、電子受領、電子包袋化が既に開始しているが、特許についても包袋の電子化、出願の電子受領が計画されている。
 
ブラジル特許庁(INPI)に出願される特許出願のうち、約70%が多国籍企業(ブラジル国
内企業ではない海外企業)であり、ブラジル国内の企業からの特許出願は30%程度である。海外企業は基礎研究を海外(自国など)で行い、応用研究/開発や製造をブラジルで行なっているケースが多い。

意匠出願件数は年間5,000 件であり、無審査であるため出願から3 ヶ月で登録される。(権利期間は、出願から10年、延長により最長で25 年。) 従って、意匠に関してはバックログの問題は発生していないという。ちなみに、一つの製品に対して立体商標と意匠、両方の権利を取得することが可能である。商標自体が新規なものであり、意匠出願で新規性が確保出来れば、より強い権利で製品を守れる可能性が高まると言えよう。

(IP総研・技術グループ 米須)

(NGBウェブマガジン2007年4月号掲載記事より)

ブラジル特許庁(旧庁舎)外観

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