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2007.05.15

商標/一事不再理/立体形状の保護を求める前審との変更点の認定要件

一事不再理の法理の適用は、先の審理および現在の審理に関与する者が同一当事者であり、同一訴因である場合には、一般的な前提条件が満たされていると認められる。しかしながら、前審以後、条件、事実、事情の変更が認められる場合には、一事不再理、請求遮断効の適用は、適切ではない。
 
曲線状の立体形状デザインに商標の保護を求める際に、実質的に同義語と認められる用語で形状の表現を使い分けることによっても、事実の変更があるとは認められない。また、任意的、偶発的、装飾的外観をデザインの一部分に有する場合には、機能性による拒絶理由を解消できるとする法の変遷が、前審以後、認められるとしても、保護を求める対象として提示された任意的な部分が、単に、デザイン全体の一部分であると認められ、前審同様、そのデザイン全体が機能的である以上、商標による保護は認められず、事情変更の抗弁を主張できない。(In re Bose Corporation, CAFC, 2/8/07)
事実概要
Bose Corporation(以下、Bose)は、1995年9月26日、「ラウドスピーカー・システム」に関する右デザインを商標として登録出願した。

出願書類には、当該標章の登録を受けようとする書面が添付されておらず、Boseは、出願を補正して、標章について説明する書面を提出した。すなわち、「当該標章は、筐体から成り、弓なり状の一辺を有する実質的に五角形の最上部とそれと平行して同形の底面部を有する実質的に五角形の断面の形状から成る」とした。Boseは、さらに、審査官の指令に応答して、提示した標章は、商標出願第73/127,803号に関するものと同一である旨、説明した。

上記商標出願第73/127,803号に関する標章は、かつて、連邦巡回控訴裁判所(以下、CAFC)において審理され、機能的であるので商標登録されない旨、認定された。In re Bose Corp.事件(772 F.2d 866 (Fed. Cir. 1985)) (Bose I)参照。商標審判部(Trademark Trial and Appeal Board、以下、Board)が、当該立体形状は機能的であると決定したことを確認する際に、CAFCは、In re Morton-Norwich Products, Inc.事件(671 F.2d 1332 (CCPA 1982))において採用された基準を適用し、Boseの販促資料は、かかるデザインに関して、機能性を説明しているとした。また、当該スピーカー筐体の立体形状は、Bose特許(米国特許第4,146,745号)の発明に関するスピーカー・システムの一部であり、五角形の断面を有する筐体は、機能性すなわち有用性に関する一組のパーツであるとして、スピーカー・システムの要素として筐体に内在することをBose自身が、表明した。競業者は、スピーカー市場において、五面体のスピーカーを使用しなくても、競争できるとするBoseによる主張は拒絶され、「Boseの筐体デザインは、スピーカー・システムの性能の観点から最良のものである」という結論を支持するBose自身による説明を検討する必要があると判断された。さらに、CAFCは、Boseデザインの特徴は、低コストの製造を可能にし、この点において優れたデザインの部類にあることに留意した。

本願、商標出願第74/734,496号において、争点である同一の標章を提示することに関して、Boardは、審査官による登録拒絶査定を確認し、審判請求は、一事不再理(res judicata)の法理により認められないと結論付けた。Boardは、Boseが、前記Bose I 事件の同一出願人であり、CAFCが、同一標章に関する法律上の機能性に関する争点において、同事件の最終決定を下したのであり、法律上の機能性に関する争点に対する結果のいかなる条件、事実、または事情も、先の決定に変更をおよぼさないと判断した。

Boseは、出願人と標章が、先の審理と同一であることを認めたが、事実も事情も、Bose I 事件以来、変更しており、本件において、一事不再理による請求遮断効の適用は、適切でないとの趣旨により、Boardに対する主張を展開した。また、先の審理における標章は、弓なり状の(bowed)一辺を有するが、本件においては、曲線状の(curved)一辺を有するので、重要な事実の相違点が双方の事件には存在するとのBoseの主張に関して、Boardは拒絶し、弓なり状の(bowed)前面の一辺を有する先の出願の特徴と、曲線状の(curved)前面の一辺を有する本願の特徴においては、意味のある相違点は、認められないとした。Boardは、Boseによる事情変更の抗弁を拒絶して、公衆が認識しているBoseデザインは、20年以上も名声を得ており、そのデザインが、法律上、機能的であるという先の決定に相違点を生じさせていないと結論づけた。

Boardは、本件とIn re Honeywell事件を区別した。同事件において、審判請求は、一事不再理の法理の適用によって、却下されていない。8 U.S.P.Q.2d 1600 (T.T.A.B 1988)参照。また、同事件において、登録出願の対象デザインは、円形のサーモスタット・カバーであり、Boardは、機能的であるとして拒絶した。その後、Honeywellは、先に登録されたデザインの別バージョンを登録しようとした。Boardは、Honeywell事件において、各標章は異なっており、円形の立体形状は、出所の表示を目的として選択され、構成要素は、当該立体形状に適合するよう設計されており、事件は、デザインに関しており、実用新案、特許に関係がないとし、さらに、選択的に、たとえ、CAFCが、一事不再理の争点に関して、破棄するとしても、提示されたデザインは、ラウドスピーカーに関して、法律上、機能的な立体形状から成っていると判断した。

Boseは、Board審決の再考を請求したが、Boardは、否定した。In re Bose Corp.事件(Serial No. 74734496 (T.T.A.B. Oct. 4, 2005))参照。Boardは、審決再考を否定する意見書において、Boseが、先の審決以後、事情の変更があり、特に、TrafFix Devices v. Marketing Displays事件(532 U.S. 23 (2001))判決により、法律上の機能性の争点に関する法に変更が生じている旨、主張するのを拒絶した。Boardは付言して、特許出願になされる説明においては、デザインの機能性を提示することができ、デザインが機能的であると看做される場合には、裁判所は、選択的なデザインの機能性を考慮する必要はないとし、法律上、機能的である有用性を要件とする特許に関する包括的な分析によって示されるデザインの特徴は、時間の経過、販売促進の努力または販売増加によって、法律上、機能的ではないとはならないとして、結論づけた。

Boseは、適時、控訴した。CAFCは、28 U.S.C. § 1295(a)(4)(B)に基づき、裁判権を有する。

確認

判旨
本控訴において、Boseの主張は、再度、先のBose I 事件以来、事実と事情に変更があるとし、一事不再理の法理は、提示されたデザインを商標として登録することを妨げないとする。Boseによると、曲線状の(curved)前面の一辺は、Bose I 事件の争点ではなく、裁判所は、機能性の判断において、五角形のデザインを審理しさえすればよいとし、曲線状の(curved)前面の一辺を有するデザインは、Bose I 事件において、審理も判断もなされていないと主張する。次に、Bose I 事件以後、トレードドレスについての機能性の審理に関する法律的な基準において変遷があり、事情の変更が存在すると主張する。Boseによると、最高裁TrafFix判決は、さらに追加の検討事項が、機能性の分析に適用されるべきであるとしており、追加の証拠として、当該標章の有用性を強調する販売促進資料が欠如することを挙げており、Boardが軽視していると主張する。また、Boseによると、追加の証拠は、Morton-Norwich事件の機能性分析に影響を与えている著しく変更した事情を提示しているとする。最後に、一事不再理の法理の適用は、劇的な救済方法であるため、限られた状況においてのみ用いられるべきであり、本件は、かかる状況にはないと主張する。
(…… 以下略)

*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。

(図)

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