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2007.05.15
今回のご質問は:
アメリカで、先願主義への移行を含む特許法改正案が議会へ再提出されたとの報道がなされました。今度こそ・・・?
『アメリカの「発明の才」は我々の経済をずっと支えている。我々は新しいアイデアを保護し、改革・創造に対する投資を保護しなければならない。特許は、新技術を生み出す動機づけとなり、新技術を公開してそこへの投資を促す誘因となることにより、技術の進歩を促す制度だ。今やかつてないほど、特許の発行の現場においてその効力を確実にすることと質を向上させることが重要となっている。もし我々が、世界経済の最前線に立つ地位を維持し、研究開発及び製造の分野で引続き世界を導いていこうとすれば、質の高い特許を生み出す有効で円滑な特許制度を採用して、足を引っ張る訴訟を制限することが必要だ。
知的財産の創造と保護ほど、アメリカ経済の強化にとって重要なものはない。アメリカのIP産業はアメリカの全輸出額の半分以上を占め、経済成長の40%に相当し、1,800万人の雇用を生み出している。知的財産の強化は経済成長と雇用創出へと繋がり、アメリカは世界の羨望を集めることになろう。本法案はそれに向けた第一歩である。
Hatch上院議員(共和党)と私(民主党)は昨年8月、本法案の旧バージョンS.3818を提出した。以来、我々はあらゆる種類の関係団体から意見を聞くことに時間を費やした。実際、我々は、S.3818の提出に先立つ2年間に学んだと同じくらい多くのことがらを、S.3818を提出してからのわずか数ヶ月で学んだ。
本議会では、協働体制は超党派であるだけでなく、両院に及んでいる。我々は、(議場内の)通路を渡るのみならず“the Hill”(議事堂中央のドームのこと)をも横切って、上院と下院、民主党と共和党を結びつける法案を提出するところまで来た。我々は本日上院にLeahy-Hatch法案を提出するが、これは下院に提出されるBerman-Smith法案と同一内容である。こめたメッセージは力強く、そして明瞭だ
– 即ち、アメリカの特許制度を改善するための、統一された断固たる途を提供する。』
Leahy上院議員のコメント全文はこちらをご参照下さい。
http://leahy.senate.gov/press/200704/041807a.html
Leahy議員のコメントを読んで改めて気付くことは、「アメリカが日欧に譲歩して先願主義を採用するか?」という我々の期待が、実は的はずれであるということです。コメント中には「協調(cooperation)」とか「調和(harmony)」という単語は一つも見つかりません。彼ら法案提出者が特許法改革の目的として挙げているのはただ一つ – アメリカの国益をいかに守るか? ということだけです。
一方でこれと対象的なポジションに立つのが行政の府、アメリカ特許庁です。特許改革法案2007の提出に遅れること2週間。特許庁は5月3日、官報で特許法改正に関するパブリック・コメントの募集をアナウンスしましたが、タイトルからしてまず「世界の特許制度を調和させる試みに関するコメント募集」です。「背景」にも、WIPOの先進国会合において制度の調和が永らく議論されてきたこと、今年も持たれるその会合のために議長であるアメリカ特許庁がコメントを募集すること、などが説明されています。ちなみに上記官報では、4月18日の法案提出については一言も触れられていません。
昨秋「41ヶ国協議の場でアメリカが先願移行を公約した」旨の新聞記事が世間を賑わせました。今回の法案提出により今後こうしたニュースを目にする機会が増えていくことと思いますが、情報の発信源が「議会」なのか「特許庁」なのか、まず最初に確認されることが重要であろうと思います。
追伸
今年の7月から、アメリカ特許出願する場合、優先権証明書の提出が不要となるようですね。現段階での、ささやかな「協調」。
http://www.jpo.go.jp/torikumi/kaisei/kaisei2/pdf/14_isyou_syourei/01.pdf
(渉外部 柏原)