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2007.08.01

【アジア・東欧プロジェクト】 第7回:ウクライナ特許庁・ベラルーシ特許庁訪問記

NGBでは2006年秋より「第3次アジア東欧プロジェクト」が進行中です。本コーナーでは各国の訪問が順次済み次第、成果の一部をご報告していきます。
第3次アジア・東欧プロジェクト第5ワーキンググループは、2007年5月31日から6月9日にかけて、ウライナ、ロシア、ベラルーシの各首都キエフ、モスクワ及びミンスクを訪問した。

アエロフロートで成田を発した5月31日、モスクワ経由で深夜キエフ到着。翌6月1日(金)、朝一番でウクライナ特許庁を訪問。同日午後と翌2日(土)にかけて特許法律事務所を数社訪問。翌3日(日) 、モスクワへ移動。翌4日(月)と5日(火)に、別働部隊(モスクワとサンクトペテルブルグを調査対象とする第4ワーキンググループ)に合流。ロシア特許庁、JETROモスクワ、特許法律事務所等を訪問。 翌6日(水)にミンスクへ移動し、当日と翌7日(木)、ベラルーシ特許庁と特許法律事務所を数社訪問し、6月9日に成田に帰国。慌しい「三都物語知財ツアー」から今月は、ウクライナとベラルーシへの訪問について報告する。

1.ウクライナ

ソ連邦の一部だった1986年にはチョルノーブィリ(当時はチェルノブイリ)で原発事故が発生(放射能汚染は今なお懸念されている)、最近では2001年のシベリア航空機墜落事件やロシアの航空機の墜落事故、そして直近ではオレンジ革命とユシチェンコ大統領の毒殺未遂事件など、何かときな臭いイメージのつきまとうウクライナであるが、首都のキエフという町は、寺院や歴史的建造物が立ち並ぶ落ち着いた雰囲気の町並に加え、公園には開放的な若者達の姿もみられるごく普通のヨーロッパの都市であった。

ウクライナの独立宣言は、1991年8月24日。ウクライナの国土は日本の1.6倍(60万3700km2)。人口は、約4700万人(2006年7月人口調査;46,710,816人)、首都キエフの人口は300万人ほど。

ウクライナ特許庁(正式名称:ウクライナ教育科学省国家知的財産部” State Department of Intellectual Property of Ukraine, Ministry of Education and Science of Ukraine”)は、2000年4月に、産業財産権と著作権等管理を担当していた行政組織を、教育科学省下で一つの組織として統合設立された組織。

今回、ミコラ・パラディ(Mr. Mykola Paladiy) 長官、シェルバコバ(Ms. Scherbakova O.O.)欧州統合国際協力部長他、ペトロバ(Ms. Petrova N.L)特許・実用新案審査部長、サブチェンコ(Ms. Savchenko V.B.)商標出願実体審査部長、スクヒノバ(Ms. Sukhinova S.M.)国際商標登録部長、バニコフ(Bannikov V.K.)商標・産業意匠出願審査部長、シクリティンコ(Mr. Siklitenko V.V.)裁判手続部長と面談した。

彼らの主張するところによれば、2006年は独立後の知的財産権制度発足15周年ということで、WTO加盟を視野に入れた法改正(例えば、知財侵害に対する刑法上の刑罰強化など)を行う一方、EU(EPO)やドイツ等欧州先進国との協力体制を強めるとともにWIPO国際会議等でも積極的に活動してきたとのこと。その結果、ウクライナの知的財産制度の枠組み国際スタンダード、特に欧州諸国のマネジメント体制に沿ったものになっており、特許審査のレベルも欧州特許庁と遜色ないものに向上しているとの認識を持つに至ったようで、日本企業もより積極的に同国における特許出願等による知財保護を図られてはどうか、と提案を受けた。

特許出願件数は2002年と2003年が3000件レベル、2004年から2006年が5000件レベルに増加。2006年で出願が多い外国は米国(613件)、ドイツ(534件)、フランス(166件)、スイス(126件)、ロシア(92件)、ベルギー(91件) 、スエーデン(88件) 、オランダ(83件)、英国(70件)、デンマーク(68件)。

2.ベラルーシ

2006年のGDP成長率はおよそ9%(2006年)、2007年も8から9%程度の成長率となる見込み。インフレ率は3.2%(2007年1月から5月)。海外からの投資額は40億ドル(2006年)で、ロシア、イギリス、スイス、オーストリア、キプロスなどが多い。

 ベラルーシの特許庁(正式名称”National Center of Intellectual Property”;通称Belgospatent)、1992年設立。)を訪問し、Yu. L. Bobchonok長官代理、Alexander A. Chenado情報部門副部門長、Evgeny V. Zinkevich商標審査部長、Anzhela V. Chvyrova法務部長、Valiantsin Rachkouski長官補佐、エレナ・パブロブナ知財教育センター長等と面談。法務部長、長官補佐のお二人はまだ20歳代前半くらいの若い方だった。

 ベラルーシは17の条約・協定・議定書に加盟。特許庁は著作権、集積回路、植物品種を含む知財に関連する全ての知的所有権を取り扱っている。特許審査官は40名(審査官補佐10名含む)。審査部門は5つ(技術分野ごとに4部門、及び情報処理部門)。年間約1500件を審査。出願から18ヶ月経過後には審査に着手し、拒絶率は18%くらいとのこと。

 2004年に若者向けのIP教育機関を設立。研究開発やIPマネジメントのスキルを取得するための特別コースなど全部で12コースを設置し、知的財産専門家の育成に力を入れている。ベラルーシの主要産業は化学・機械・光学系とのこと。今後の発展を期待している産業分野としては情報技術分野とナノテクなどがある。

 特許の出願件数2006年は1377件(但し、ユーラシア特許出願は含まない)。外国からの出願(PCT含む)はその1割強。外国からの出願は昨年に比べて8.6%増。PCT出願(国内移行)は21.3%増。主要な出願国としては、ドイツ、アメリカ、ロシア、ウクライナ、イタリア。日本からの出願件数は2006年で、特許8件、意匠5件、商標90件程度。

 商標出願件数は同じ2006年に10208件、うち半数以上はマドプロ経由である。外国からの出願では、アメリカ、ロシア、ウクライナ、スイス、イギリス国籍の出願件数が多い。主要な区分としては、第30類(加工した植物性の食品等)、第29類(動物性の食品等)第41類(教育、訓練等)、第32類(飲料及びビール)などが多いとのことであった。

(IP総研・法務グループ 平沼)

(NGBウェブマガジン2007年8月号掲載記事より)

ウクライナ出願件数推移
ウクライナ特許庁前
ベラルーシ特許庁の玄関
ベラルーシ特許庁職員と代理人

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