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2007.09.15

【最近よくあるご質問】 アメリカ特許庁新ルールについて (1) Continuation Practice (継続出願等の回数制限)

お客様から頂いた各種お問合せに対し、渉外部員が担当部門の協力を得て、お答えします。
今回のご質問は:
アメリカ特許庁がこの度採用する特許出願の新ルールについて、ポイントや対応を教えて下さい。(その1)
まず「Continuation Practice」 (継続出願等の回数制限)について、ご案内申上げます。以下、説明が冗長になるのを避けるため「だ・である」調を用いますこと、お許し下さい。

新ルールの原則
一の「出願ファミリー」において、嘆願書を提出することなく継続出願可能な回数は2回まで、同じくRCEは1回のみ。

「出願ファミリー」とは、共通の原出願(Initial Application)を有し、互いに特許的に区別されない(≒発明の単一性を有する)一群の出願のことを言う。例えば、1件の原出願(Initial Application)をベースとして継続出願やRCEが行われている場合、それら複数の出願は、互いに一つの「出願ファミリー」を構成する。新ルールはこの「出願ファミリー」内でなされる継続出願/RCEの件数(合計数)を制限するものである。一方、限定指令に基づく分割出願を行った場合は、その分割出願は親出願とは別の「出願ファミリー」を構成し、新たな分割「出願ファミリー」内で同様の制限がかかる。言い換えれば親「出願ファミリー」で2回以上の継続出願/1回以上のRCEを既に行っていたとしても、分割出願から新たな継続出願等を、嘆願書を提出することなく、行うことが出来る。ちなみに、限定指令に基づかない分割出願は“継続出願”として取り扱われるため、親「出願ファミリー」内の継続出願1回としてカウントされる。

新ルール適用の対象案件
継続出願に対する制限
 ・2007/11/01以降にアメリカへ出願される特許出願、又は
 ・2007/11/01以降にアメリカへ国内移行されるPCT出願
RCEに対する制限
 ・2007/11/01以降に請求されるRCE

アメリカ特許庁が提供する資料の文言をそのまま和訳したが、特に継続出願に関する説明が誤解を招きやすい。現地代理人に確認したところ、ここでいう「出願」とは、原出願(Initial Application)ならびに継続出願、その両方を意味すると考えるべきとのこと。即ち、11月1日以降にアメリカへ初めて出願する案件の「出願ファミリー」は、上述の回数制限を当然受ける。一方、11月1日より前に出願された案件をベースに11月1日以降に継続出願する場合も、その「出願ファミリー」内での継続出願1回として制限数にカウントされる。注意すべきは、後者の場合「出願ファミリー」内で過去になされた継続出願の回数も合算されて、制限を受けることである。従って「出願ファミリー」内の継続出願の回数が既に2回の制限を上回っている場合は、11月1日以降は、新たな継続出願は原則として嘆願書の提出を要求される(ただしこの点に関しては、後述するように例外規定(経過措置)が設けられている)。これらの状況を踏まえて、継続出願に対する制限が適用される対象案件を“意訳”すれば、「11月1日以降に係属(pending)している出願案件をその一員として含む『出願ファミリー』」ということになるだろう。

経過措置(継続出願に対する制限の例外規定)
・2007/08/21以前にアメリカへ出願された特許出願、又は
・2007/08/21以前にアメリカへ国内移行されたPCT出願
については、一の「出願ファミリー」内で、嘆願書を伴わず「あと1回」の継続出願が認められる(ワンモア・ルール)。

この「出願」も上と同様、原出願(Initial Application)及び継続出願の両方を含むそうだが、実務上・管理上は、最先の出願日を持つ(筈の)原出願(Initial Application)の出願日として理解した上で、こちらも「8月21日現在係属(pending)している出願案件をその一員として含む『出願ファミリー』」と再定義したい。本件経過措置は、こうした「出願ファミリー」に対し、過去の継続出願の回数に関わらず(2回以上の継続出願をしていたとしても)、11月1日以降更に「あと1回」の継続出願を、嘆願書の提出なしに、認める規定である。ただしこの規定の適用を受けるためには、“8月21日から11月1日までの間に「出願ファミリー」内において1回も継続出願を行っていない”という条件がつく。問題なのは、「あと1回」の嘆願書なしの継続出願が“いつ”認められるのか、アメリカ特許庁が明言していないことである。現地代理人の間でも“8月21日以降説”と“11月1日以降説”とで意見が分かれているが、ここでは「ワンモア・ルール」適用を受けるための上記条件や、そもそも施行日という言葉の定義を鑑みて「11月1日以降」を採用する。
ちなみにRCEに関しては同様の例外規定は設けられておらず、「出願ファミリー」内で11月1日より前にRCEを1回以上行っていれば、11月1日以降に新たなRCEを請求する際には嘆願書の提出が必要となる。

施行日までに採り得る対応
継続出願:
8月21日現在係属(pending)している出願案件をその一員として含む「出願ファミリー」については、「ワンモア・ルール」適用の要否を検討する。
(1)「ワンモア・ルール」の適用を受ける。即ち、11月1日以降に嘆願書無しで継続出願を1回行う権利を獲得するため、11月1日より前の(10月31日までの)継続出願を保留する。
(2)「ワンモア・ルール」の適用を受けない。11月1日より前に(10月31日までに)、必要な件数の継続出願を行う。

出願人にとっては上記2つの選択肢が与えられているわけだが、実は(2)を選んだ場合には、もう一つの新ルール「Claim Practice」の適用対象となって、新たに行った複数の継続出願の合計クレーム数が25個以内(うち独立クレーム5個以内)という制限を受けるリスクがある。一方(1)を選択して継続出願の出願日を上手にコントロールすれば、「Claim Practice」の適用を免れて、一つの「出願ファミリー」あたり最大75個(うち独立クレーム15個)のクレームを権利化出来る可能性がある。「ワンモア・ルール」適用の要否を検討することは一見利にかなってはいるが、特にその工数等を考慮すれば尚更、あまり実益があるとは言えないのではなかろうか。なお、8月22日以降に原出願(Initial Application)を出願した「出願ファミリー」は「ワンモア・ルール」の適用対象外であるため、上記(2)と同様、継続出願の要否とリスクを併せて検討する。

RCE:
「出願ファミリー」内の出願でRCEを請求する必要がある案件を選び出し、11月1日より前に(10月31日までに)必要数のRCEを請求する。特に「出願ファミリー」内で既に1回以上のRCEを請求している場合に実益が大きい。

以上

本件ご案内は、NGB渉外部が、特許部や複数の現地代理人と協議の上作成したものです。正確な情報を提供する様細心の注意を払っておりますが、内容の信頼性・安全性を保証するものではありません。実際の案件に当られましては、出願代理人様のご提案に沿って運用して頂けますようお願い申上げます。

(渉外部 柏原)

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