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2007.11.15
今回のご質問は:
当社も最近は自社製品の模倣品が中国でぽつぽつ出回るようになって来ました。現地における知財権の権利行使は、果たしてどの程度有効なのでしょうか?
今回は「最近よくある」というより、10年以上前から何度も何度も耳にしてきた種類のご質問ですね。先日、NGB特許部では、中原信達知識産権代理有限責任公司(China Sinda)と共同開催にて「中国における模擬特許裁判」をとり行いましたので、そのご報告を中心にご回答申上げます。
[事件概要]
アメリカの老舗万年筆メーカー「アルトス社」は自社製品を中国市場へ導入して大きなシェアを占めていたが、ある時点より月ごとに売上げが減少していることに気付いて調査を行ったところ、類似の万年筆が市場に出回っていることを突き止めた。「アルトス社」は同万年筆を北天市(架空の大都市)にあるデパートで購入して解析を行い、自社保有の中国特許を侵害していると判断した。被疑侵害品の万年筆には製造者名・住所の記載が無かったが、「天利」ブランドが付与されていたため、「アルトス社」は「天利」商標権の保有者である「広東天利公司」をその製造者であると認定。「アルトス社」は「広東天利公司」に対し、被疑侵害品の製造販売を中止するよう警告したが、同社からは何ら誠意ある対応が見られなかったため、北天市中級人民法院に対し、同製品の製造販売停止ならびに損害賠償を求めるよう提訴した。
このような背景の下、
・ 被告が保有する商標権と同一のマークが被疑侵害品に付与されていることだけを以って、被告は被疑侵害品の製造者と特定され得るか。
・ 原告特許のクレームと被疑侵害品との技術的特徴の差異は、均等論適用の範囲内か。
・ 原告が特許の出願係属中に主張した先行技術文献との差異は、禁反言を構成するか。
等を争点に審理は進みます。果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのか・・・?
後谷陽一氏:
前 JETRO北京センター知的財産部長
現 特許庁総務部普及支援課特許情報企画室長
「素晴らしく合理的な審理だ。北京・上海等の大都市においては本件のようなまともな審理が行われるようになってきている。残念ながら地方では依然として“地元有利”の感が否めないが、現地駐在の日本企業からは改善傾向にあるとも聞いている」
張廣良氏(模擬裁判の裁判長役):
前 北京市第一中級人民法院裁判長(2007年6月まで)
現 中原信達知識産権代理有限責任公司(China Sinda)上級顧問
(「現実に北京の裁判所では同様の審理が行われているのか」との質問に対し)
「そうだ。私が裁判長を退いた後も、志を同じくする同僚や友人が頑張っている」
これら識者のコメントを聞く限り、管轄裁判所を(可能な限り)上手に選択することによって、欧米なみの論理展開に基づく権利主張・権利行使は「有効」であると言えるでしょう。事実、かつては「勝ったところで雀の涙」と担当者を嘆かせた損害賠償の額も、最近は億~数十億円レベルの支払命令が出ている様がマスコミの記事で散見されます。一方では現地企業による侵害の手口も巧妙になってきているとの話もよく耳にします。
このような環境の変化の中、権利主張の原資となる知財権をある程度の件数、取得・保有しておくことはやはり必要であり、更にはより権利範囲の広いクレームを正確な翻訳で取得するよう気を配っていかなければなりません。そのためには国内外の代理人と密にコンタクトをとり、良好なパートナーシップを築くことの重要性が一層増していくといえるでしょう。
以上
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(渉外部 柏原)