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2008.01.15
特許出願と特許訴訟の代理人による法律過誤に関する州法上の請求事件に関して、先の訴訟における代理人による法律過誤がなければ、原告が勝訴したであろうことを証明する必要がある場合であって、特許侵害の証明が、過誤行為の原因にとって必須の要素である場合には、異州籍問題がなくても、特許法上の実体的な問題を有する以上、連邦裁判所は、28編第1338条の管轄権を有する。
(Air Measurement Technologies, Inc., et al. v. Akin Gump Strauss Hauer & Feld, L.L.P., et al., CAFC, 10/15/07)
本件は、異州籍問題のない当事者間の法律上の過誤に関する事件であって、特許出願中および特許訴訟中の代理人による過失行為が争われている。
Air Measurement Technologies, Inc.、North-South Corporation、およびLouis Herbert Stumberg(以下、総称して、AMT)は、その訴状の中で以下の事実を申し立てている。StumbergとそのパートナーであるJames A. Fulton(現在は故人となっており、訴訟当事者ではない)が開発した技術は、酸素補給を要する消防士およびその他の救急隊員のための安全装置に関している。自給式呼吸器(以下、SCBA)に統合した安全装置は、利用者に残存する空気の時間を計算し、体温を測り、利用者が、火災現場またはその他の危険な状況に安全に居残れる時間の合計を割り出す。その装置は、また、装着者がある一定の時間動かなくなった場合に、音を出す警報を含んでいる。StumbergとFultonは、Air Measurement Technologies, Inc.とNorth-South Corporationとともに、その装置の開発、ライセンス、販売について合意した。1989年、Stumbergは、特許弁護士として、Gary Hamiltonを選任し、その安全装置と関連技術の特許保護を確保しようとした。尚、Hamiltonは、テキサス州において、法律実務の資格を有しており、米国特許商標庁に対する代理を認められている。
Hamiltonの知るところでは、StumbergとFultonは、1989年にその発明のプロトタイプを販売し始めた。Hamiltonが最初の特許出願として提出したのは、1991年8月6日であって、米国特許第5,157,378号(以下、’378特許)として、1992年10月20日に発行した発明の名称は、「Integrated Firefighter Safety Monitoring Alarm System」である。Hamiltonは、また、継続出願を代理し、それらは、米国特許第5,689,234号(以下、’234特許)、同第5,910,771号(以下、’771特許)、同第6,201,475号(以下、’475特許)、および同第6,310,552号(以下、’552特許)として発行した。特許出願中は、Hamiltonは、Akin Gump Strauss Hauer & Feld, L.L.P.とBranscomb, P.C.(以下、総称して、Akin Gump)に所属しており、現在は、Hamilton & Terrile, L.L.Pとして法律実務を行なっている。
AMTは、SCBA製造者に対して、テキサス西部地区連邦地方裁判所に六件の侵害訴訟(以下、先の訴訟)を提起している。申立てによると、Hamiltonは、2000年に最初の特許訴訟に関する提起を遅延したとされ、Stumbergは、新たな代理人をたてて、2002年に係属中の特許訴訟を依頼した。六件の訴訟すべては、2001年から2003年の間に、総額約1000万ドルで解決したが、AMT特許の侵害、無効性、または実施不可能に関する司法決定は出さなかった。
先の訴訟の過程で、AMTは、新たな代理人の支援をえて、特許出願中および特許訴訟中にHamiltonが行なったと申し立てられている多くの誤りを発見した。申立てによると、その誤りは、Hamiltonによる(1) 特許法第102条(b)の販売による不特許事由としての1年以内の最初の特許出願の提出懈怠、(2) 二件の先行特許とその他の事実に関する特許出願の出願係属中の開示懈怠、(3) ’771特許となる出願に関する発明の最も広いクレームを含む形式での適時な提出懈怠、(4) 先のDraeger訴訟における和解にかかる損害賠償額算定上の誤り、(5) 受任者の義務としてのその誤りに関するAMTに対する通知懈怠、(6) 先の訴訟当事者による販売不特許事由と不衡平行為による防御の存在に関するAMTへの適切な通知懈怠、(7) AMTに対する虚偽表示、である。
AMTは、Hamiltonといくつかの法律事務所に対して、2003年5月28日、テキサス州裁判所に訴訟を提起(後に和解)し、法律上の過誤、過失、過失による虚偽表示、受任者の義務違反といったすべて州法上の請求を行なった。AMTの主張では、先の訴訟において、Akin Gumpの誤りによって、当該特許の市場価値を大きく下回ることになるよう和解させ、先の訴訟の被告が、無効性(販売による不特許事由)と実施不能(不衡平行為による)に基づく防御を行なうことができるようにしてしまい、それらの事由は、代理人の誤りなくして存在しないとした。
Akin Gumpは、2003年6月27日、裁判所および裁判手続に関する法律第1338条に基づいて、事件をテキサス西部地区に移送して、AMTによる訴訟の解決は、特許法上の実体的な問題に関する決定を要すると主張した。Akin Gumpは反訴請求して、いくつかの根拠に基づき特許無効性の確認を求め、また、当該特許が、代理人の行為によって、第102条(b)に基づく不衡平行為または無効による実施不能になることはない旨の確認を求めた。
AMTは、2003年7月18日、差戻しの申立てを行なったが、2003年9月5日、地裁はこれを斥けた。AMTの訴えは、「連邦特許法に関する実体的な問題の解決に必然的に依存している」からであるとし、勝訴するためには、AMTは、「その侵害請求が、他の理由からも有効であって、Hamiltonの過失が、その特許に関して、被告による特許法に基づく防御を可能にしたことを証明しなければならない」からであると理由づけた。Christianson v. Colt Indus. Operating Corp.事件(486 U.S. 800, 809 (1988))参照。
2006年6月23日、すなわち、事件移送の3ヶ月と少し後、当事者は、立場を変えた。Branscomb, P.C.は、第1338条の事物管轄が欠如していると主張して、事件を差し戻すよう申し立てたが、AMTは、反対した。尚、Akin Gump Strauss Hauer & Feld, L.L.P.は、後に、この差戻しの申立てに加わった。地裁は、第1338条に基づく管轄権は存在するとの根拠により、差戻しの申立てを斥けた。そのように判断する際、地裁は、Grable & Sons Metal Products, Inc. v. Darue Engineering & Manufacturing事件(545 U.S. 308 (2005))が、その管轄権を否定しなかったこと、さらに、裁判所および裁判手続に関する法律第1292条(b)に基づく抗告に関する下記の争点を証明したことに関して認めた。
テキサス州法により、特許出願と特許訴訟に内在する法律過誤に関する請求は、必然的に、実際、争われている実体的な連邦特許法の問題を生ずるか否か、また、連邦裁判所は、連邦と州との司法責任に関して、立法府によって認められた均衡を乱すことなく審理することができる。
2006年10月13日、Akin Gumpは、裁判所および裁判手続に関する法律第1292条(b)に基づく控訴の許可に関する請願を行なった。連邦巡回控訴裁判所は、その管轄権を行使して、2006年11月2日、請願を認めた。
確認
判旨
本件控訴は、当裁判所において先例のない事例の争点を提示している。争点は、本件の状況に照らして、地裁が、AMTによる法律過誤に関する訴訟に対して、第1338条の管轄権を適切に行使したか否かである。尚、AMTは、法律上の過誤、過失、過失による虚偽表示、および受任者の義務違反について請求しているが、地裁判断の焦点、ゆえに本件控訴のそれは、AMTによる法律過誤に関する請求に当てられる。ゆえに、当裁判所は、AMTによる追加の訴訟原因に対する第1338条の管轄権が存在するか否かを審理しない。当裁判所は、地裁の管轄権に関する判断に基づくことなく審理する。Bd. of Regents v. Nippon Tel. & Tel. Corp.(414 F.3d 1358, 1362 (Fed. Cir. 2005))参照。本件のように、異州籍問題が存在しない場合には、連邦問題の管轄権は存在する。裁判所および裁判手続に関する法律第1331条、同第1332条、同第 1338条参照(地裁に異州籍と連邦問題の事件に対する事物管轄を認めている)。AMTの主張によると、管轄権は、第1338条に基づき適切であって、「特許に関するあらゆる法律によって生ずるいかなる民事訴訟」に対しても、地裁に専属的な連邦管轄権を認めているとする。第1338条(a)参照。
(…… 以下略)
*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。