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2008.04.24
カラオケ装置は、音源に加えて視覚映像と歌詞の視覚表示を格納しているため、視聴覚著作物に関する法令上の定義の各要素を充たしている以上、それはレコード盤ではなく、カラオケ装置には、レコード盤を主題とする第115条の規定は適用されない。
第115条に基づき締結された強制実施のメカニカルライセンス(一般的なCDやレコード制作に関する作曲家からのライセンス)は、レコード盤を製作し頒布するのに必須であって、カラオケ装置のように、収録された音楽とタイミングをあわせて歌の歌詞の映像を表示するには、シンクロナイゼイションライセンス(映像を伴った音楽を対象とするライセンス)を保持することが要求される。
(Leadsinger, Inc. v. BMG Music Publishing, et al., 9th Cir., 1/02/08)
本件は、著作権法がカラオケ装置にどのように適用されるかに関する検討を要する事件であり、カラオケ装置が必然的に著作物と関わっている理由は、楽曲とそれに伴う歌詞の双方が、その演奏にとって本質的なためである。BMG Music PublishingとZomba Enterprises, Inc.(以下、総称して、BMG)は、楽曲の著作権を所有して、管理しており、そのライセンスの代理人であるthe Harry Fox Agencyを通じて、カラオケ装置製造業者であるLeadsinger, Inc.(以下、Leadsinger)に対して、著作権法第115条に基づく著作権で保護された楽曲に関して、強制実施のメカニカルライセンス(一般的なCDやレコード制作に関する作曲家からのライセンス)を設定した。強制実施権の確保に要求されるメカニカル印税に加えて、BMGは、Leadsingerとその他のカラオケ会社が、「歌詞転載(lyric reprint)」印税と「シンクロナイゼイション(映像を伴った音楽を対象とするライセンス)印税」を支払うよう要求した。Leadsingerは、これらの追加の印税について支払いを拒み、カリフォルニア中部地区連邦地方裁判所に確認判決を求める申立てを行ない、歌詞の印刷頒布と同様、自ら既に有する第115条に基づく強制実施権より多くの権利を保持することなく、視覚的に歌詞をリアルタイムに表示する権利を有するか否かを解決するよう求めた。
Leadsingerは、その訴状において、自ら製造するカラオケ装置は、「マイク一体型の再生機」であって、マイクの中には、マイクロチップに内蔵した歌を収録していると記述している。マイクがモニタに接続されると、歌が再生されると同時に歌の歌詞がモニタ上に表示され、利用者がその歌詞に合わせて歌うことができるようにする。ほとんどのカラオケ会社は、その曲をカセットやコンパクトディスクに収録するか、コンパクトディスク・プラス画像(CD-G)またはDVD形式を利用しているが、これら他社のカラオケ装置は、Leadsingerのものとよく似ており、歌詞が画面に表示されるのは、モニタに接続される装置で再生が実行されるときである。
Leadsingerの装置は、ときおり、許諾されたスチール写真の複製を表示し、画面上の歌詞の背景画像として使うことがある。また、ある場合には、Leadsingerは、その装置に歌詞のプリントコピーをつけて、マイクロチップ上に収録した歌に対応させることがある。Leadsingerの訴状によると、プリントされたものと画面表示された歌の歌詞の両方がある目的は、「利用者が歌詞を読むのと録音された音楽に合わせて歌うのを楽にする」ためであるとしている。さらに、Leadsingerが主張するところによると、カラオケの事情に関するか否かにかかわらず、プリントされた歌詞を添付することは、購入者が歌の歌詞を理解する手助けとなり、また、親たちが、「歌詞の内容について子供たちが耳にする」のをひかえさせることができるようにする。
地裁は、第115条の強制実施権は、Leadsingerに対して、視覚映像と歌詞を音楽と同時に表示する権利を認めるものではないとし、Leadsingerの訴状にある主張は、その公正使用の請求を支持するものではないと判断した。Leadsinger, Inc. v. BMG Music Publ’g事件(429 F. Supp. 2d 1190, 1193-97 (C.D. Cal. 2005))参照。地裁は、Leadsingerの訴状に関して、補正は意味がないと判断し、補正の許可を認めずに斥けた。事件は、第9巡回区に控訴された。
確認
判旨
当裁判所は、地裁がした申立てを斥ける認定に関して、de novo(最初から第一審として)審理する。Silvers v. Sony Pictures Entm’t, Inc.事件(402 F.3d 881, 883 (9th Cir. 2005))参照。却下が、請求の趣旨の欠如ゆえに正当なものとされる場合は、「外観上、疑う余地なく」、被申立て当事者が、「自らを救済するのに相応しい一連の事実を証明できるものがない」場合だけである。Vazquez v. L.A. County事件(487 F.3d 1246, 1249 (9th Cir. 2007))参照。この決定を行なう際に、当裁判所は、すべての申立てを真実であるとして受け容れ、訴状に関して被申立て当事者に最大限有利に解釈する。当裁判所は、裁判所および裁判手続に関する法律第1291条に基づき裁判管轄権を有する。
本件は、著作権法、17 U.S.C. §§ 101-1332が、どのようにカラオケ装置に適用されるかを決定することが要求される事件であり、当巡回区にとっては、先例のない事例である。
(A) 著作権法が保護する著作物
地裁がLeadsingerの訴状を適切に斥けたか否かを判断する際、当裁判所は、著作権法の文言を指針とする。著作権法第102条は、著作権の保護に関し、とりわけ、創作的な著作者の著作物、言語著作物、音楽著作物(これに伴ういかなる歌詞も含む)、および録音物を対象とする。第106条は、著作権者に排他的な権利を認めて、「複製物またはレコード盤」中の著作権保護された著作物を複製すること、および「販売により公衆に対して著作権保護された著作物の複製またはレコード盤を頒布すること」ができるとしているが、第115条は、レコード盤に関しては、著作権者の排他的な権利を制限している。
(…… 以下略)
*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。