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2008.07.25

米国判決速報:連邦最高裁/Quanta Computer v. LG Electronics事件

米国判決速報:連邦最高裁/Quanta Computer v. LG Electronics事件
皆さんのライセンス戦略は大丈夫ですか? ~連邦最高裁が明確にした特許消尽論の適用~

2008年6月9日、米国連邦最高裁判所は、Quanta Computer v. LG Electronics事件において、CAFC判決を破棄し、方法特許に特許消尽論を適用しないとするCAFC判断を斥けた。
以下、本判決の概要について、現地法律事務所の許しを得てその速報をご紹介する。

Legal News Alert *** June 2008***FOLEY & LARDNER LLP www.foley.com
Quanta Computer Inc., et al., v. LG Electronics Inc.(U.S. Sup. June 9, 2008)

判決は、現在も採用されている特許ライセンス戦略の運用可能性に影響を与えるもので、連邦最高裁判所は、特許消尽の法理を明確にした。150年以上もの間、最高裁は、特許消尽論を採用して、特許製品を最初に許諾販売した後の特許権を制限してきた。Quanta Computer, Inc. v. LG Electronics, Inc.事件(No. 06-937, Slip Op. (June 9, 2008))において、最高裁は、全判事一致で、連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)判断を破棄し、当該販売がライセンス契約によって許諾されていないから、消尽論は方法特許には適用されることはなく、また、さらに適用されることはないとするCAFC見解を斥けた。
 最高裁の意見書が示す三点の重要な判断は、以下の通りである。第一に、方法に関する特許クレームは、特許方法を実施した製品の販売によって消尽される。第二に、ある製品が、消尽論の適用対象となる特許を実施していなければならないとする範囲に関するテストを明確にした。第三に、争点のライセンスの詳細を論じて、特許消尽を回避するために、将来、契約を検討する際の指針を提示した。

方法クレームは消尽する
 従来、CAFCの判断では、方法クレームは、特許消尽論の影響を受けないとしてきた。Glass Equip. Dev., Inc. v. Besten, Inc.事件(174 F.3d 1337, 1341 n.1 (Fed. Cir. 1999))、Bandag, Inc. v. Al Bolser’s Tire Stores, Inc.事件(750 F.2d 903, 924 (Fed. Cir. 1984))参照。最高裁は、この絶対的な原則を破棄し、方法クレームは、クレーム方法を実施した装置の販売によって消尽されうると判断した。Quanta Computer事件(slip op. 9-11)参照。CAFCによる反対の判断を斥ける際、最高裁が明示的に認めたことは、その対照的な判断は、当事者に、特許審査経過において、装置クレームを方法クレームに変更するよう促すものであって、それで、「消尽をうまく回避する策」になるとした。さらに、「かかる結果として、特許製品が、『一度、適法に製造販売されると、特許権者の利益になるような利用に制限がないという』従来からの原則に反することになるであろう」と説示した。

二段階テストによって販売が特許を消尽するか否かを決定する
 特許は、その特許を実施する製品を最初に許諾販売することによって消尽される。不完全な製品の販売は、特許を消尽させる。最高裁は、その意見書において、不完全な製品の販売が、その製品の特許権を消尽させるか否かを決定する二段階のテストを提示した。
 第一に、不完全な製品には、特許を実施する以外の合理的な使用が存在することはない。この判断に至る際、最高裁は、発明が、特許発明の本質的な特徴または特許方法の進歩性を具体化しているか否かに留意した。また、最高裁は、特許の実施と特許侵害を区別した。ゆえに、消尽論は、特許を侵害することなく、特許技術を使用する外国販売の可能性によって、無力になることはない。
 第二に、不完全な製品は、「実質的に特許を具体化する」ことになり、また「すべての特許を完全に実施する」ことになる。ゆえに、不完全な製品の販売によって、特許を消尽することになる場合とは、特許を実施するのに必要な唯一の工程が、標準的な部品を追加する通常の工程を適用する場合である。この結論に至るにあたって、最高裁は、特許の唯一の進歩性が、クレームされた既知の要素の具体的な組合せである場合に、争点の特許をいわゆる「組合せ特許」と区別した。
 実務上、このテストは、多くの場合に適用しにくい。具体的な製品が、発明を「実質的に具体化するか」否か、または、特許が、この意見書に記載された原則の範囲外に該当する「組合せ特許」であるか否かは、将来的な訴訟の主題になる可能性がある。

契約書作成上の留意点
 本件の具体的な部分にもどって、最高裁は、特許権者と実施権者との契約の詳細を分析した。最高裁は、実施権者が、これらの販売を行なう権限を与えられたと判断する一方、最高裁の理由では、将来のライセンスは、特許消尽の適用を回避する方法で作成されうることを示唆している。特に、最高裁は、販売が許諾されるのは、ライセンス契約が、いかなる方法においても製品を販売するためであるとして、実施権者の資格を制限していないからであると判断した。唯一、実施権者に課せられる条件は、実施権者がその顧客に対して、特許権者は顧客にライセンスを許諾していない旨の通知を示すことである。最高裁は、この条件が消尽から特許を守ることはないと判断し、その理由を以下のように示した。(1) 実施権者が求められる通知を提示していないことの証拠が存在しておらず、また、(2) 通知の要件がライセンスの中に盛り込まれていないが、別の契約で合意されているためであるとした。さらに、最高裁は、単に消尽が特許権の主張を斥け、またライセンス契約に謳われている他の権利を必然的に制限することはないことに留意した。
 最高裁の分析によると、特許権者は、実施権者の販売する権利を制限するよう契約を注意深く行なうよう示唆している。かかる契約は、特許権の消尽を回避するか、または契約条項違反を促進する可能性がある。もちろん、特許権者がそのような制限を課す能力、すなわち、実施権者が甘受するかは、状況の具体的な事実に多く依存している。

まとめ
 Quanta Computer事件は、特許権がより容易に消尽しうることを意味しているので、特許権者は、ライセンス許諾というリンゴには、たったひと齧りしかできないことになりうる。ゆえに、この判断は、注意深いライセンス戦略が重要であることを示し、ライセンス契約の設定に特別な注意を促している。

上記の戦略、または、Quanta Computer, Inc. v. LG Electronics, Inc.事件に関するご質問は、下記Foley事務所弁護士までご連絡くださいますと幸甚です。

KAMINSKI, Michael D. (MKaminski@foley.com)
AGARWAL, Pavan K. (pagarwal@foley.com)
BEST, George C. (gbest@foley.com)
GILLS, Jeanne (jmgills@foley.com)

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