IP NEWS知財ニュース

  • 知財情報
  • アーカイブ

2009.01.06

【企業特許分析】ギブン・イメージング社~カプセル内視鏡のパイオニア~

カプセル内視鏡とは、その名の通りカプセル型の内視鏡である。患者がこれを錠剤のように飲み込むことで、従来のチューブ型内視鏡の様に体内の状況を検査することが可能であり、患者への負担を大幅に軽減できる機器として、その開発に注目が集まっている。最近では、オリンパスメディカルシステムズが、日本メーカーとして初めて小腸用カプセル内視鏡システムを国内発売して話題となるなど、さらなる普及が期待される機器である。
このカプセル内視鏡を世界で初めて実用化したのがイスラエルのギブン・イメージング社(Given Imaging Ltd.)である。ギブン・イメージング社は、イスラエル国防省の軍事技術研究機関の技術者によるカプセル内視鏡の開発から始まって1998年に設立された後、現在もイスラエルを拠点とし世界各地でカプセル内視鏡を普及させている。

NGB IP総研では、カプセル内視鏡製品のパイオニアとして注目されるギブン・イメージング社の特許出願状況について調査を実施した。データベースDWPIにより、ギブン・イメージング社の特許を検索したところ166レコードがヒットした。

図1(下図)は1995年から2007年の日米欧の公開・登録特許発行件数の年間推移を示したグラフである。

図1を見ると、公開特許(折線)は2000年を越えたあたりから発行件数が伸びており、登録特許(棒グラフ)も米国では2002年、日本・欧州では2006年から徐々に発行件数を伸ばしはじめている。ギブン・イメージング社のカプセル内視鏡は、欧米では2001年、日本ではやや遅れて2007年に発売が開始され、現在普及段階に入っており、今後もこの増加傾向は継続することが予想される。

また、同図より、会社設立前年の1997年に米国で最初の特許(US5,604,531)を取得していることが確認でき、該特許を軸として会社設立、その後の事業展開がなされたことが予想される。該特許を引用文献としている米国特許を検索(USPTO Patent Full-Text and Full-Page Image Databasesを利用)すると92件がヒットし(内37件が自社引用)、その件数の多さから、自社および他社からも重要な特許として位置づけられていることが分かる。

図2, 3(下図)はそれぞれギブン・イメージング社出願特許の優先権主張国分布および出願国分布を示したグラフである。

図2の優先権主張国分布を見ると、2位の本拠地であるイスラエルを大きく引き離し、米国が8割以上を占めている。図3の出願国分布を見ると、オーストラリアに80件以上の出願があり、米国、日本、欧州に続いてオーストラリアに注力している様子が窺える。ギブン・イメージング社は米国、ドイツ、フランス、日本、オーストラリア等に子会社を持っており、各国進出戦略と特許出願戦略との間に相関性があることが見受けられる。また、その他の国でも、件数は少ないが韓国、中国、インド等に出願されている点が確認できる。

以上、ギブン・イメージング社の大まかな特許出願状況を把握した。

カプセル内視鏡技術については、チューブ型内視鏡で世界一のシェアを誇るオリンパスメディカルシステムズの追随や、長野に拠点を置くアールエフも開発を発表するなど、日本国内でも複数の会社が開発を行っており、今後のシェア争い、技術競争がより一層高まるものと予想される。この技術のパイオニアであるギブン・イメージング社の今後の動向に注目したい。

[参考文献]
・Nikkei Business「技術フロンティア」2007年3月5日号 118-120頁
・化学工業日報「ギブン・イメージング、3年で売上高倍へ、カプセル内視鏡が保険適用」2007年10月4日 8頁
・化学工業日報「オリンパス、カプセル内視鏡を発売、日本メーカーで初」2008年9月11日 8頁

(IP総研・研究員 中根寿浩)

カプセル内視鏡
(US5,604,531より引用)
図1 特許発行件数推移(1995-2007年)
 
図2 優先権主張国分布               図3 出願国分布

関連記事

お役立ち資料
メールマガジン