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2009.02.18
このたび行われた中国の特許法改正について、要点を教えて下さい。
特実・並行出願の要件(第9条)
旧法では言及されていなかったダブルパテントの禁止を明文化するとともに、その例外規定として、同一の発明につき特許と実用新案の双方を出願~権利化する要件が設けられました。即ち、
(1)出願人が同一である
(2)出願日が同一である
(3)実用新案が権利満了していない(権利存続中である)
という3つの条件を満たしている場合に限り、出願人は、無審査ゆえ先に登録となっている実用新案を放棄することと引き換えに、認可通知を受けた特許出願に対して権利を受けることが出来ると定められています。
ここで問題となるのは、条件(3)でしょう。この条文を文字どおりに読めば、特許出願の審査終了時点で出願から(実案の権利期間である)10年を超えていた場合には条件(3)を満たさず、当該特許出願は権利を受けることが出来なくなります。現実には審査期間が10年を超える可能性は低いとしても、10年以下か10年超かで権利の得喪を分けることに合理性が感じられず、大いに疑問が残ります。事実、中国人弁護士のあいだでも「発明について拒絶される」という代理人と、判例を根拠に「特許権を付与すると断言」する代理人とで意見が分かれており、実際の運用や特許庁の見解発表に、今後も注意を払っていく必要があります。
未公開先願の地位拡大=自社先願例外規定の排除(第22条2項)
第22条については前回も絶対新規性の採用という観点からご紹介しましたが、この条文にはもう一つ、新規性の定義について重要な修正が加えられています。即ち、引例として採用され得る未公開先願(出願日時点で公開されておらず後日公開された先願)の出願人の範囲が、旧法の「他人」から「あらゆる機関・組織・個人」に拡張されて、同一の出願人も含まれることになりました。日本の特許法でいえば、第29条の2から但書「~出願人とが同一の者であるときはこの限りではない」が削除された状態です。
未公開先願の開示部位はクレームに限定されず明細書・図面全て(whole contents)が対象ですので、先行する自社出願の片隅に書いた一言が、新しい出願の新規性を喪失させるという事態も考えられます。こうした“自社先願例外規定”を持たない国としては、代表的なところではEPCがありますので、これらの国々へ出願される場合には併せてご注意下さい。
つづく
(渉外部 柏原)