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2009.03.19
連邦証拠規則第702条は、「科学、技術、またはその他の特殊な知識が、証拠の理解または争点の事実判断をするのに、事実審理の助けとなる場合には、証人は、知識、技能、経験、・・によって専門家としての資格を有するならば、鑑定意見またはその他の方式によって、・・証言することができるものとする」旨、規定している。先例は、第702条が「科学に関する」証言にだけではなく、すべての専門家証言に適用されると判断した。その他のすべての事件同様、特許事件にも規則第702条が適用される。特許事件における専門家に関する特別なルールを取り分ける根拠は存在しない。
先例は、裁判所が特許法の専門家に「特許出願の経過にかかる包括的な手続」に関して証言を認めることができるとしているが、特許法と手続に長年の経験を有している特許弁護士の証言であっても、同氏が特許法の専門家であって、技術専門家であることに言及されておらず、当該技術の通常の技能を有する者であることを示唆されておらず、争点特許の当該関連技術であるトラックまたは防水シートの分野における技術的な経験がなく、エンジニアとしての実務経験が一年半の間のエンジンとその類に関する分野おいてである以上、連邦証拠規則第702条に鑑みて、関連技術における「知識、技能、経験、・・によって専門家として資格を有する」ものではなく、事実審における技術専門家として、いかようにして同氏が「事実審理の助けとなって、証拠の理解または争点の事実判断をするのに資する」のか理解できない。
技術専門家として要請を受けたのではなく、技術専門家として適任ではない者に、地裁が非侵害または無効性の争点に関する専門家として証言することを許可するのは、裁量権の濫用である。証言が当該技術の専門知識をもたない証人によって提示される場合は、連邦証拠規則第702条に基づく証拠能力の基準を欠くものとなる。特許の法律家は、多くの場合、技術専門家として適任であるが、かかる適格性は、関連技術における法律家の技術的な適格性から引き出されるものでなければならない。技術に適格性のある専門家が自明性の基本的な問題に関して証言することができるかは、当然に地裁の裁量権に委ねられているが、ある証人にクレーム解釈に関して陪審の前で証言することを認めることは不当である。専門家が陪審にクレーム解釈に関して見解を示すとき、陪審を混乱させる危険性が高い。
事実概要
Sundance, Inc.、Merlot Tarpaulin and Sidekit Manufacturing Compay, Inc.(以下、総称して、Sundance)が有する米国特許第5,026,109号(以下、’109特許)の対象とする格納可能な区分されたカバー・システムは、「多くは構造物またはコンテナ」として、トラック・トレーラー、水泳プール、ポーチ、およびパティオといったものに使用されている。
Sundanceは、DeMonte Fabricating Ltd.とQuick Draw Tarpaulin Systems, Inc.(以下、総称して、DeMonte)に対して、ミシガン東部地区連邦地方裁判所に、’109特許の独立クレーム1を唯一の争点クレームとする侵害訴訟を提起した。
事実審において、DeMonteは、二件の先行技術引例を陪審に提示して自明性判断の根拠とした。すなわち、米国特許第4,189,178号(以下、Cramaro)と同第3,415,260号(以下、Hall)である。Cramaroは、格納可能な防水シートのカバー・システムであって、その用途をトラック用としている。当事者が同意していることは、’109特許のクレーム1に開示されたカバー・システムとCramaroのカバー・システムとの相違点は、Cramaroが「区分された防水シート(segmented tarps)」を含まないことである。さらに、当事者は、Hallが開示しているのは、多数の「フレキシブルな遮蔽部材(flexible screen members)」に区分されたカバー・システムであることに同意している。Hallは、そのシステムが、「トラック用カバーとして使用されることがある」と示唆している。DeMonteの特許法の専門家として、Daniel Blissは、当該技術の通常の技能を有する者は、CramaroとHallを組み合わせるよう動機付けられるであろうと意見を示した。尚、Sundanceは、無効性と非侵害の争点に関して、Bliss氏の証言を認めることに異議を唱え、同氏は、技術上の専門家として適任ではなく、単に特許法上の専門家であると申し立てた。地裁は、Sundanceが異議を唱えた、その証言を誤って採用した。陪審は、’109特許のクレーム1が自明であると決定した。
連邦最高裁判所判決がKSR International Co. v. Teleflex Inc.事件(127 S. Ct. 1727 (2007))において示される前の判断では、地裁は、SundanceによるJMOL(法律問題としての判決)を求める申立てを認めており、「当該技術の技能を有する者が、HallとCramaroを組み合わせて本件発明であるトラック用カバーに使用される区分された防水シートに到達したであろうと、陪審が結論付けるような十分な証拠は存在しない」と判断した。Sundance, Inc. v. DeMonte Fabricating Ltd.事件(No. 02-73543, 2006 WL 2708541, *5 (E.D. Mich. Sept. 20, 2006))参照。特に、地裁は、Hallが「区分された防水シートを使用するトラックの環境を除く先行技術」であって、「区分されたプール用カバー」であり、「区分されたトラック用ではないカバー」であると結論付けた。
その判断において、裁判所は、Bliss氏が「その結論を支持するためにHallまたはCramaroのいずれかを引例として示さずに」、当該技術の通常の技能を有する者はそれらの参照例を組み合わせる動機を有するであろうとしたことに言及した。また、裁判所は、両参照例を「組み合わせようとする当該技術における示唆」のいかなるものも認められないとして、Cramaroをトラック用カバーとし、Hallをトラック用ではないカバーとして特徴づけた。裁判所の理由によると、DeMonteが、当該技術の技能を有する者はHallとCramaroを組み合わせるであろうと陪審が結論付けるような十分な証拠を挙げていない、という裁判所の結論は、「当該技術の技能の水準が低いことと、トラック用カバーに使用される防水シートに焦点を当てているという事実に鑑みて、とりわけ真実」だからであるとした。さらに、地裁は説示において、「二次的な考慮は」、・・「長年の切実な未解決の必要」と「複製」を含む「非自明性の認定を支持する」とした。最高裁がKSR事件を判断した後に、DeMonteは再考慮を求める申立てを行ない、地裁による拒絶は、その元の分析において、教示、示唆、および動機のテストを厳格に適用していないと申し立てた。
DeMonteは、適時に控訴し、また、Sundanceは、適時に交差控訴した。連邦巡回区控訴裁判所は、裁判所および裁判手続に関する法律第1295条(a)(1)に基づき裁判管轄権を有する。
破棄
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