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2009.05.07

【世界の知財プロに聞く】第9回イギリスMICHAEL JOHN Alge氏

今回は、MARKS & CLERK事務所でパートナーをされているMICHAEL JOHN Alge氏にインタビューを行いました。Alge氏は南アフリカで10年間知財業務に従事された後、現事務所に移りイギリス及び欧州共同体商標関連の業務に従事されております。25年以上知財業界で活躍されている弁護士です。Alge氏の業務内容は、商標のプロセキューションから訴訟まで多岐にわたります。MARKS & CLERK事務所は、イギリス国内に12のオフィスを構え、Solicitor(事務弁護士)だけのオフィスもロンドンに有しております。また、ルクセンブルク、パリ、香港、シンガポール、北京、上海、およびオタワにブランチを構えており、すべて知財に特化した事務所となっております。
Q1. 学生時代は主に何を専攻されていましたか、またどのようなきっかけで知財の仕事に携わることになったのですか

私の専攻は法律でした。 私はいつもメーカーやデザイナーが陶磁器に使用しているマークや、芸術家・彫刻家が使用しているモノグラムや識別できない署名などに興味を持っていました。そして、幸いにも知財に特化したDM Kisch Inc.からオファーをもらえました。 私は、すぐに商標が一般法律業務よりも興味深いことに気づき今日に至ります。

Q2. どんな専門性を持った人たちが知財業界に進んでいますか知財は人気の分野ですか

私の事務所では、法律や言語学のバックグラウンドがある人が商標の業務に携わることが多いです。また、知財は非常に人気で権威のある職業となっています。

Q3. 知財保護のための啓蒙活動は教育分野などで積極的に行われていますか

はい。商標(ITMA)と特許(CIPA)機構には、トレーニーを商標・特許弁護士としてふさわしい人間に育てるための洗練された厳しい教育・試験制度が用意されています。
また、ほとんどの事務所は無料のトレーニング・技術アシストをトレーニーに対して提供しています。

Q4. 日本の企業にCTM登録だけではなく、イギリス登録も取得することの利点について簡潔にアピール下さい

イギリス登録のメリットは主に3点あります。
1. 11条1項に基づき、指定商品の範囲内において侵害者に対する権利行使が容易になります。
2. かつての植民地国にイギリス商標登録に基づく出願をすることができます。
3. CTM登録の保険となります。CTMはカバーする範囲が広いため取消される可能性も大きくなります。登録後5年間は取消される可能性があるため、その間の保険としてイギリス登録を取得されておくことをお勧め致します。重要な商標や狙われやすい大手の企業には特にお勧めです。尚、第三者に対するコモンロー上の権利の証明は、手間も費用もかかります。また、異議申立では、イギリス登録、CTM登録、マドプロのCTM登録はどれをベースとしても違いはありません。

Q5. イギリスへの出願が多い国はどの国ですか。また、どういった産業に関する商標が多く出願されていますか?サッカーなどに関する出願は多いのでしょうか

ほとんどの商標がイギリスの企業と個人によって出願されています。 また、外国からの出願は、米国、日本、中国、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、韓国、カナダ、南米、ノルウェー、スイスから出されています。CTM出願が開始されてからも、当初予想されたほど大きなインパクトはありませんでした。また、プロサッカーチーム関連の商標出願は多く出されています。

Q6. 外国からのイギリス特許・意匠出願は活発ですか。また、どの産業に関する出願が多く出されていますか

出願全体のおよそ半分の特許出願がイギリスの企業と個人によって出願されています。 また、外国からの出願が残りの半分を占め、国は米国、日本、カナダ、中国、韓国、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドから出されています。特許出願の多い産業は、製薬、生化学、電子、農学、テレコミュニケーション、交通、工学などです。
次に、ほとんどの意匠出願がイギリスの企業と個人の出願です。およそ1/3が外国からの出願であり、米国、日本、カナダ、中国、韓国、南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリアなどから出願が出されています。

Q7. 不況の時でも商標出願を行うことは重要だと思うのですが、何かアドバイスをいただけますでしょうか

限られた予算の中できちんとブランドを保護することはこれまで以上に重要です。理由は、不況により短期間で利益を得ようとする輩が権利侵害をする可能性が高くなるからです。また、生活の困窮により有名ブランドをそのビジネスにおいて重要な地位を占める未登録の国で登録してしまおうとする輩が増えると思われます。ですから、将来的な第三者からの妨害を避けるために、貴社のビジネスにおいて重要な国で商標を登録されておくことをお勧め致します。

Q8. どのような商標が主流(好まれる)ですか

文字商標、ロゴ、文字とロゴの商標、アルファベットや数字の商標、外国語の商標、スローガンなどの商標(しばしば結合商標の一部)が主流です。

9. 米国と同様に、使用により商標権が発生し、未登録であってもコモンロー上の権利が認められているとおもいますが、米国と何か違いはありますか

イギリスは基本的に先願主義を採用しています。コモンロー上の権利を立証したければ、1.reputation & good will特にgood willが必要。2.misrepresentationがあること3. likelihood of confusionがあることを証明しなくてはなりません。また、商標、トレードドレス、色彩、形状、パッケージに関するパッシングオフに対する差止めをコモンロー上の権利を根拠に請求することができます。

Q10. イギリス本土以外にイギリス登録が有効な海外県、海外準県などをおしえて下さい

イギリス商標登録で自動的にカバーされる海外県(準県)は、マン島とフォークランド諸島です。 また、アンギラ、バハマ、グレナダ、セントルシア、ツバル、バミューダ、ジャージー、モンツェラート、ソロモン諸島、アンティグアバブーダ、ケイマン諸島、ジブラルタル、キリバス、セントクリストファーネヴィス、およびバヌアツを含む多くの国でイギリス商標登録に基づく登録を得ることができます。

Q11. 一昨年法改正がなされておりますが、簡潔に改正された点についてご教示いただけますでしょうか

主な改正の特徴は相対的登録事由が審査されなくなったことです。2007年10月1日以降、絶対的登録事由のみが審査されるようになりました。先出願・登録は、検索されますが引例として挙げられることはありません。ただ、イギリス・イギリスを指定したマドプロ先出願・登録の権利者にその通知が出されます。CTMの先出願・登録者には通知されるように選択しない限り通知されません。

Q12. お勧めの観光地をおしえて下さい

ロンドン大観覧車、ロンドン塔、大英博物館、ロイヤルアカデミー、 テイトギャラリーとテート・モダン、ロンドン土牢、バッキンガム宮殿、ウィンザー城、自然史博物館、ビクトリア・アンド・アルバート美術館、湖水地方、ヨークシャームーアズ、ノーフォーク・ザ・ブローズ、ブレコンビーコンズ、ザ・ビクトリー(ポーツマス港の)、グリニッジ、海洋博物館、ハイランド、ネス湖、エディンバラ、グラスゴーなどがお勧めです。

Q13.弁理士にもバリスターとソリシターのような違いはあるのでしょうか

いいえ、Patent AttorneyとTrademark Attorneyの違いはありますが、イギリスの法律家のカテゴリーは以下の様になっております。
1.Patent and Trademark Attorney 8つのレポートで資格取得可能。法学部卒の必要性はない
2.Solicitor (attorney)法学部卒、high courtでの弁護を認められている
3.Barrister (advocate)法廷弁護士、トレーニングフェイズを経て資格が与えられる。
4.European Trademark Attorney各国ごとに基準があり、それをクリアすると資格が与えられる。OHIMに対して手続きを行うことが可能。
例えば商標案件の異議申立てなどでは、まずTrademark Attorneyが対応し、異議の提起はsolicitorが行い、審判官への弁論ではbaristorが対応したりします。私は、Trademark Attorney 兼Solicitorですが、このように兼務も可能です。

Q14. 読者にメッセージがありましたらお願いします

商標権はビジネスにおいて本物の価値を発揮する基本的な資産であるので、すべての必要な措置を講じて(可能なところならどこでも)登録を行い、適切に維持して、使用するべきです。

意匠商標部 草野

Alge氏

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