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2009.05.13
本事件は、一審において実用新案特許権に基づき3.3億元(48億日本円)もの損害賠償が認められた事件として中国内外において注目を集めた事件です。概要について、現地知識産権代理事務所の寄稿文をご紹介します。
本事件では、賠償額の算定方法、級別管轄(事物管轄)、海外における証拠の効力に関する問題など、日本企業にとっても重要と思われるいくつかの法律的な問題が存在しているが、今回の和解により、これらの問題に対する浙江省高級人民法院の見解は示されないこととなった。今後、本事件にかかる資料が公開され、これらの問題に対する議論、研究が進むことが期待される。
事件の背景
原告である正泰集団は、中国工業電器業界において生産販売量が最も多い企業の一つであり、温州市及び浙江省の重点企業である。一方、被告の一つである施耐徳(天津)(「施耐徳」は「Schneider」の中国語標記)は、フランスに本部を有するシュナイダーエレクトリックが中国天津で設立した低圧電気製品の合弁会社である。
シュナイダーは、1994年から正泰に対するM&Aの打診、失敗を繰り返しており、90年代後半から中国及び外国において正泰に対して20件を超える侵害訴訟を提起している。本事件のイ号物件は、施耐徳(天津)が生産する小型ブレーカーであり、本事件はシュナイダーと正泰の小型ブレーカーに関する一連の紛争における正泰側の反撃と見てとることができる。
事件の経緯
2006年8月2日、正泰が97248479.5号実用新案特許権の侵害を理由として、施耐徳(天津)等を中国浙江省温州市中級人民法院に提訴。
2006年8月21日、シュナイダー側が専利復審委員会に97248479.5号実用新案特許権の無効宣告を請求。
2007年4月29日、専利復審委員会は訂正された請求項に基づき実用新案特許を維持する第9744号無効宣告請求審査決定を下す。
2007年7月18日、施耐徳(天津)は第9744号無効宣告請求審査決定を不服として審決取消訴訟を提起。
2007年9月26日、温州市中級人民法院が、施耐徳(天津)の権利侵害成立を認め、334,869,872元の賠償を命ずる(2006)温民三初字第135号民事判決を下す。
2007年10月9日、施耐徳(天津)、一審判決を不服として浙江省高級人民法院に上訴。
2009年3月26日、北京市高級人民法院は、第9744号無効宣告請求審査決定の審決取消訴訟(二審)において、シュナイダー側の請求は成り立たない旨の棄却判決を下す(シュナイダー側は中級人民法院(一審)においても敗訴)。
2009年4月15日、シュナイダー側が正泰に1.575億元支払うことで和解が成立。
(北京北翔知識産権代理有限公司)