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2009.06.24
新しい機能として「コンパス」が加わり、歩行者などが向かっている方向に合わせて、表示される地図の向きが変化するというものらしい。更に調べると、この機能はどうやら「電子コンパス」という磁気検出原理を利用したICチップにより行われていることがわかった。
今回、この電子コンパスにフォーカスを当てると共に、同技術に関連する特許の動向を考察してみようと思う。
まずは今回のiPhoneの電子コンパスのベンダーから調べたところ、旭化成のグループ会社が製造元とのこと。ここのホームページ(Link:http://www.s3sensor.com/)では、電子コンパスの原理について分かりやすく説明されているので、参考にして頂きたい。
それではいよいよ、母集合を決めるため特許の検索を実施するが、単純にキーワード検索で“電子コンパス”というのでは調査マンとして芸がないので、以下の特許分類を使用することにした。
FI 分類説明
G01R 33/02 L ・方向の検出(方向及び大きさ、すなわち磁界ベクトルの検出も含む;M優先)
G01C 17/28 ・・電気磁気コンパス
G01C 17/32 ・・・電子コンパス
G01C 17/38 ・コンパスの試験,較正,または補償
上記のFIで検索したところ、出願年1993年以降で公開件数603件がヒットした。
今回は厳密な調査ではなく概況を知るのが目的の為、目視調査によるノイズ除去は実施せずに集合全部で分析を実施した。その為、対象とする電子コンパス自体だけでなく、それを利用した応用技術の様なものも対象の集合に含まれることをご了承頂きたい。
図1に今回の母集合603件の出願年推移を記載する(赤の部分が登録件数、青の部分が公開件数を表している)。2004年が90件とピークであり、それ以降は減少傾向にある。2004年が極端に増加している理由は定かではないが、旭化成が2004年3月19日に「3軸地磁気センサICモジュール」をプレスリリースしており、丁度この時期に開発が進み出願が多くなされたものと推測される。
次に、筆頭出願人でランキングを取ったところ上位5位は表1の様になった。更に、出願人毎の出願年別推移が図2となる。これによると、ソニーは90年代の早い段階でピークがきており、開発への着手は先行していたものと思われるが、その後は減少傾向にある。一方他の4社は2000年中期に出願が多くなされている。
携帯電話では、2002年にauから電子コンパスを搭載した端末が発売され、サービスも展開されていたが、普及と呼べる程は対応機種が増えていない様に思う。今後は対応アプリも続々と登場してくるのか、日本のメーカーからも続々と対応機種が出てくるのか興味深くwatchしていきたい。
(IP総研 技術グループ 研究員 本田竜一)
※Apple、Appleのロゴ、は、米国および他国のApple Inc.の登録商標です。iPhoneはApple Inc.の商標です。
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