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2009.07.14

■特許/権利の移転/譲渡契約の曖昧性判断と外部証拠審理の要否

(Euclid Chemical Company v. Vector Corrosion Technologies, Inc. et al., CAFC, 4/1/09) 
 特許移転契約の解釈は、州契約法の問題である。オハイオ法の下では、契約は、法律問題として、明確な法律上の意味が付与されている場合には、曖昧な点はない。一方、契約が曖昧である場合には、当事者の意図を確認するために外部証拠を考慮する。曖昧さが存在する場合とは、用語が、契約のどこからも決められない場合であるか、または契約文言が、二またはそれ以上の合理的な解釈を許容する場合である。
 本件譲渡証に表記のない争点特許が譲渡の対象であるかに関して、譲渡証に明記された特許の一部継続から発行したとことが認められるから、肯定的に解釈できる場合であっても、争点特許が譲渡の時点で既に発行済みの特許であるから譲渡の対象ではないと合理的に解釈される場合には、かかる譲渡証から、少なくとも二つの合理的な解釈が許容される以上、オハイオ法の下においては曖昧な点が認められ、ゆえに、差戻し審における略式判決か事実審において、外部証拠が、当事者の意図を確定するのに考慮されるべき場合である。
 一部反対意見では、法律問題として、唯一の帰結が合理的であるから、当事者と裁判所における費用、遅延、および証明責任を伴う差戻しによる本件の延長は必要ないとした。

事実概要
 本件は、米国特許所有の帰属に関する紛争によって生じている。Euclid Chemical Company(以下、Euclid)は、Vector Corrosion Technologies, Inc.(以下、Vector)が所有すると主張される特許に関する確認判決訴訟をオハイオ北部地区連邦地方裁判所に提起した。Euclid Chem. Co. v. Vector Corrosion Techs., Inc.事件(No. 1:05-CV-080 (N.D. Ohio Dec. 14, 2007))参照。Vectorは、反訴により侵害について請求し、本件の争点特許の内の一件である米国特許第6,217,742号(以下、’742特許)を2001年12月20日の合意(以下、Assignment)に基づく譲渡によって、所有した旨の一部略式判決を求める申立てを行なった。地裁が下した結論によると、そのAssignmentは、’742特許をVectorに曖昧な点なく移転しているから、Vectorの申立てを認めるとした。地裁は、また、Euclidは’742特許の利益を有する善意の買主であるという、その主張を含むその余のすべての請求を解消または放棄していると判断した。Euclidは、地裁判断の双方の点に対して控訴した。
 Euclidの確認判決を求める訴訟は、もともと6件の特許に関している。その訴状の最初の5件のカウントにおいてEuclidが申し立てたところによると、Vectorに排他的に許諾されたという5件の特許について非侵害と無効性に関する確認判決を受ける資格を有するとしている。これら5件のカウントは各々、判決と和解によって、控訴前に解決された。
 Euclidの残す2件のカウントが、本件控訴の争点である。第VIカウントにおいて、Euclidは、Assignmentによって’742特許はVectorに移転していないという確認判決を求めた。第VIIカウントにおいては、Euclidは、’742特許の利益を有する善意の買主であるというさらなる確認判決を求めた。
 Vectorは、一部略式判決を求める申立てを行ない、自身がAssignmentによる’742特許の正当な所有者であるとした。Assignmentは1頁の書面であり、2001年12月20日付けでJack Bennett(以下、Bennett)によって署名された。Bennettは、’742特許の唯一の記名発明者である。Assignmentの内容は、以下の通りである。

(中略)

 ’742特許は、特許第6,033,553号となった出願第09/236,731号1999年1月25日出願の一部継続である。しかしながら、’742特許が発行したのは、2001年4月17日であって、2001年12月20日付けの譲渡日より前のことである。
 地裁は、Vectorによる一部略式判決を求める申立てを認めた。オハイオ法を適用した地裁判決理由は、Assignmentは曖昧なものではなく、’742特許は米国特許第6,033,553号(以下、’553特許)の一部継続であり、また、Assignmentの平易な曖昧でない文言は、’553特許とそのあらゆるすべての一部継続に関するいかなる権利も譲渡しているとした。地裁は、Assignmentが曖昧なものではないと認めて、それを解釈するのに外部証拠を考慮することはできないと判断した。
 Euclidの訴状の第VIIカウントに言及して、地裁が留意したことは、Euclidはその善意の買主に関する請求についての略式判決を求める申立てを行なっていないこと、さらに、その代わりに、善意の買主としてその立場に関する主張を行なったのは、唯一、所有の帰属に関するVectorの一部略式判決を求める申立てに反論する書面の脚注においてであったことを挙げている。この理由によって、地裁は、Euclidが「その訴状の第VIIカウントを放棄した」と認定した。地裁は、その余の請求は裁判所に係属していないと判断して、終局判決を登録した。
Euclidは、適時、控訴した。連邦巡回区控訴裁判所は、裁判所および裁判手続に関する法律第1295条(a)(1)に基づく裁判管轄権を有する。

取消し、差戻し

以下、I.P.R.誌23巻6号参照

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