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2009.08.01
Y野氏は、最初に特許出願を行ったのが2005年5月9日、それが公開されたのが2006年11月16日と、比較的最近になって登場した未分類特許界の期待の新人である。約2年半の間に、未分類特許を3件、IPC付与特許を15件出願し、精力的に活動を続けているようだ。Y野氏の発明の特徴と言えば、KI氏と同様に『タイムマシン』と言えるのだが、KI氏のものとは微妙に異なっている。KI氏のタイムマシンは、時空を超えて人や物が移動するという、我々が連想するような通常(?)タイプのものである。
一方、Y野氏のタイムマシンは、基本的には過去と未来の情報伝達手段であり、人や物は時空を超えて移動することはない。そして、この情報伝達手段としてのタイムマシンを『Y野システム』と呼んでいる。このY野システムにより、よりよい情報を得ることが可能となり、『Y野宇宙』(Y野氏が指導的立場を取り、全宇宙を管理する特別な小宇宙)の平和が守られ、ひいては全宇宙の平和が保たれるという(ことらしい)。つまり、タイムマシン自体がY野氏の目的なのではない。その先にある、争いのない理想世界の確立こそがY野氏の真の目的であり、究極の『宇宙愛』が彼の発明の原点なのである。特開2007-209189号では、Y野氏自身が「Y野システムとは愛である」と言い切っているほどだ。
宇宙愛に燃えたY野氏であるが、己の理想に対する情熱は半端ない。特開2007-209189号には、Y野氏自身が自分の理想を具現化するタイムマシンについて、熱く語っている部分がある。以下に本文をそのまま引用した(但し名前だけは『Y野』に変換)。
【背景技術】
【0002】
Y野は、タイム・マシンを作りたい。Y野は、ラビテーション・オブジェクトを作りたい。(原文抜粋)
自分という一人称を『主語』にした文章。しかも『私』ではなく『自分の名字』を主語にするという、幼児の話し言葉的な表現手法である。非常に斬新であり意表を突かれてしまった。この幼児性を醸した表現手法により、彼のタイムマシンに対する『純粋さ』、『ひたむきさ』がより強調され、未だかつてないほどの情熱が込められた特許公報に仕上がっている。かつて、阪神タイガースの監督だった星野仙一氏が、「勝ちたいんや!」の名言でチームを鼓舞し、リーグ優勝を成し遂げた時を彷彿とさせるではないか。特許公報史に残る名言(迷言?)になるかもしれない。
さて、ここまで本稿を読まれた方ならば、興味の矛先がY野氏の最終構想である『Y野宇宙』へと向かっていることと推察する。大宇宙を管理するという『Y野宇宙』は、数件の公報からではまだその全貌は明らかとはなっていない。現在までに判明している事は、Y野宇宙は以下の4つの領域からなり、それぞれの領域は特異的な機能を果たすということである。その4つの領域とは以下の通り(原文抜粋だが、名前の部分は『Y野』に変換)。
1) Y野・ロシア・サイエンス・バード・ピープル
2) Y野・ジャパン・テクノ・アント・ピープル
3) Y野・アメリカ(アルフィアン)・フリー・トレード・ピープル
4) Y野・ユーロ・トラベル・ピープル
日本はタイムマシンを使って未来予測を担当することから『テクノ・ピープル』と命名されたのであろうし、アメリカはY野宇宙の通商を担当することから『フリー・トレード・ピープル』と呼ばれるのではないかと推測する(『アルフィアン』というのは謎で、3人組の『THE ALFEE』のファンクラブのことではないらしい)。しかし、Y野宇宙の芸術面を担当する欧州が、『トラベル・ピープル』というテレビ東京(関西ではテレビ大阪)の旅番組のようなネーミングで呼ばれることはなかなか理解し難い。さらに、ロシアにいたっては『サイエンス・バード・ピープル』である。科学鳥人間?・・・。う~ん、Y野氏の続報に期待したい。
追伸:
初回で紹介したK氏だが、その後動きがあったので報告したい。欠番となっていた「宇宙8」が、宇宙11(2009/02/12公開)の1週間後、本年の2月19日にやっと公開の運びとなったのだ。出願日を確認したところ、宇宙7と宇宙9の間に出願されていたので、公開が遅れた原因がK氏側によるもの(数え間違いや出願忘れ)ではないことが判明した。宇宙8の発明内容が、あまりにも宇宙の本質を突いてしまっていたため、公開が躊躇されてしまったのであろうか。K氏の理論では、『電子のラブ』と『陽子のラブ』は、宇宙の始まりであるビッグバンの後にできたものとされているが、宇宙8ではこれらがビッグバン以前には『電子のラブの光子』と『陽子のラブの光子』であったことが報告されている。K氏ワールド炸裂感が強い内容だが、他の宇宙シリーズと特に変わった印象でもない・・・。謎は深まるばかりである。
(IP総研 技術グループ 主任研究員 吉田秀一)