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2009.09.14

■特許/Fed.R.Civ.P.第19条/当事者適格欠如による確定力のある却下に関する判断基準

(The University of Pittsburgh v. Varian Medical Systems, Inc., CAFC, 6/9/09)
 特許の共有者が侵害訴訟を望む場合に、当事者適格欠如のゆえの却下を回避するためには、他の共有者の参加がなければならない。連邦民事訴訟手続規則第12条(b)(7)は、同第19条に基づいて、かかる却下を認めているが、それは、本案に関する判決ではなく、再訴遮断効を有するものではないから、瑕疵が治癒できる場合には、一般的に確定力のないものとされるべきである。法は、普遍的に、かかる根拠により確定力をもって事件を却下するのを好まないし、かかる却下は、不当であるという強い推定が存在し、劇的な制裁であって、原告による遅延または服そうとしない行為に関する明らかな記録が存在する場合のために、制裁としてとっておかれるべきものである。先例は、制裁としての確定力のある却下が正当であるかについての判断に、非排他的な以下の四つの要因を考慮している。(1)遅延に対する原告の個人的な責任感の度合い、(2)遅延によって生じる被告の不利益、(3)原告がわざと遅延させる方法で進めたことの経緯、および、(4)却下以外の制裁の効果である。
 地裁は、侵害訴訟開始の時点で、原告は、争点特許の共有者を参加させるべきであって、原告による共有者参加の後の試みは、「適時なものではない上に、被告に対して不公平である」という理由によって、確定力のある却下処分を行なった。原告が共有者を参加させなかったと判断して事件を斥けることはできるが、確定力をもってそうするべきではない。けだし、原告が次の訴えを提起するのに、正当な当事者の参加または必要な特許権の移転によって、当事者適格の問題を治癒できる場合であるからである。被告が引用する確定力を有する却下を支持する連邦巡回区控訴裁判所の例外的な二件の先例は、本件とは状況が異なる。一方では、第二の訴訟において瑕疵を治癒する機会を既に有していたのに懈怠しており、他方の事件では、当事者適格の瑕疵は、治癒されえたというようには思われない。
 制裁としての確定力のある却下に関して、地裁の見解は、四要因のいずれをも検討しておらず、単に却下の方が、訴訟参加させるより適切であると認めるとの主旨であって、確定力を伴うべきである理由を説明するかわりに、原告が、共有者に充当される本件特許に関する権利を知っていたことと、原告が、戦略的理由によって共有者を参加させなかったと指摘しているだけである以上、記録の支持がない見解であると認められる。共有者が、原告の訴訟に必須な当事者であるかは、複雑な問題であり、新たな事実を提示している。被告によって引用された証拠のすべては、四要因のいずれに関しても、本件に合致することを示しているものとしては、不十分である。制裁としての却下処分に関するいかなる疑義も、本案に関する決定に達するのに資するよう解決されるべきであり、確定力のある却下は、当該地区巡回区の法の下では馴染まない厳しい制裁であり、本件の記録において正当化されていないものであるので、却下は、確定力のないものとされるべきである。

事実概要
 1994年、The University of Pittsburgh(以下、Pitt)とCarnegie Mellon University(以下、Carnegie Mellon)の科学者は、肺がん患者に対する放射線治療を行なうための改良された装置を共同開発することに合意した。PittとCarnegie Mellonは、その共同開発による製品に関する知的財産権と技術移転の手順を規定する政策ガイドラインを導入した。そのガイドラインによると、双方の大学は、本件に関する発明の商業化をPittの技術移転部を担当部署とした。それで、Pittは、対象発明に関する2件の特許出願を行ない、それらは、米国特許第5,727,554号(以下、’554特許)、および同第5,784,431号(以下、’431特許)として発行した。Pittは、それらの特許に関する記名譲受人である。
 2007年4月、Pittは、Varian Medical Systems, Inc.(以下、Varian)に対して、’554特許と’431特許の侵害訴訟を提起した。2008年11月21日、Varianは、略式判決を求める申立てを行ない、Pittが訴訟提起の当事者適格を欠いている旨、主張した。特に、Varianの主張するところによると、Carnegie Mellonは争点特許の共有者であるのに、原告として参加していないから、Pittは、特許侵害訴訟に関する当事者適格を欠くとした。Int’l Nutrition Co. v. Horphag Research Ltd.事件(257 F.3d 1324, 1331 (Fed. Cir. 2001))参照(全ての共有者は、通常、侵害訴訟の原告として参加しなければならないと説示している)。いく日かして、11月26日、地裁は、その申立てを特別補助裁判官に付託した。2007年12月5日、Pittは、連邦民事訴訟手続規則第19条に基づいて、Carnegie Mellonに原告として参加するよう求める申立てを行なった。地裁は、理由を示さずにその申立てを拒絶した。
 2008年3月8日、特別補助裁判官は、地裁に対するその報告書と勧告書を示し、Carnegie Mellonは、争点特許の共有者であって、訴訟に必要な当事者であると決定した。特別補助裁判官の勧告は、地裁が、Pittの提出したCarnegie Mellonを原告に加える補正訴状を斥けて、Varianによる略式判決を認めるとするものである。代替的な勧告として、地裁は、PittによるCarnegie Mellonの参加を求める申立てを拒絶した先の命令を取り消すべきであるとした。Varianは、特別補助裁判官による勧告に異議を申し立てて、PittがCarnegie Mellonを参加させるのは遅きに失しているのであって、地裁は、事件を確定力のある決定として斥けるよう主張した。地裁はVarianに同意して、事件を確定力のある決定として斥ける根拠として、Carnegie Mellonは、事件係属開始の際に加えられているべきであり、訴訟参加者が本件訴訟のその当時になってからでは、Varianに対して不公平である点を考慮した。Univ. of Pittsburgh v. Varian Med. Sys., Inc.事件(No. 07-CV-0491, 2008 WL 1909208, at *2–3 (“Pitt I”))参照。適時にCarnegie Mellonを参加させるのをPittが懈怠したことは、訴訟提起に関するPittの当事者適格にとって、致命的であるとした。
Pittは、適時、連邦巡回区控訴裁判所に控訴した。CAFCは、裁判所および裁判手続に関する法律第1295条(a)(1)に基づいて、地裁の終局判決に対する裁判管轄権を有する。

取消し、差戻し

以下、I.P.R.誌23巻8号参照

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