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2009.09.28
「北京法院網」では一審判決も二審判決も共存して掲載されており、事件が一審なのか二審なのかは管轄裁判所(地裁 or 高裁)や判決文の記述から判断するしかありません。二審判決が掲載されないまま一定期間が経過すれば当然に一審判決が確定したものと判断してしまいます。中国(少なくとも北京)の裁判に要する時間は思いのほか短く、A社さんの場合も一審判決の数ヶ月後、2006年末には二審判決が下されたそうです。それから3年近く経っている今日現在でも二審判決は掲載されず、事情を知らないNGBは日本企業の勝訴率を20件中15件で75%と判定してしまいました。ここに80%と訂正させて頂きます(笑)。
実はA社さんからご指摘を頂く前にも、少なくとも1件明らかな掲載漏れがあることを我々も認識していました。こちらで見つけたのはA社さんの場合とは異なり、一審判決の掲載漏れです。二審があって一審がない。二審判決に記載されている一審の事件番号から検索しても、該当事件を見つけることはついに出来ませんでした。
さてこの「北京法院網」という公のデーターベース、このように頻繁に掲載漏れがあるものなのか?今後改善される見込みはあるのか?この点につき、裁判でも活躍されている現地代理人に事情をうかがったところ丁寧なコメントを寄せて頂きましたので、以下に紹介させて頂きます。
本年(2009年)3月25日、中国最高裁は「人民法院第3期5年改革網要」を発表し、審判および執行の公開制度を強化すること、裁判文書網により裁判書を公表する制度および執行事件に関する情報の検索制度導入を検討することに言及している。また同じ日、最高裁司法改革執務室副主任(責任者)は「裁判文書のインターネットによる公開は、社会の関心を引き起こした。法学上から言えば、裁判所が下した裁判文書は公開されるべきである。(中略)裁判文書の公開率が高い国であっても、秘密保持と事情を知る権利とのバランスを考慮する必要もあり、全ての裁判文書を開示することはできない。最高裁は、裁判文書の公開についてその規則を制定しようとしている」との談話を発表した。
このように裁判文書の公開については最高裁が提唱し、改革される方向であるため、更に多くの裁判文書が公開されることになると思われる。ご指摘の事件が公開されていない理由は分からないが、相手側が公開しないように請求した可能性は高いと思う。
最高裁は裁判文書公開に関する上述の規則を未だ発表していないが、安徽省高級裁判所が公表した「インターネットによる裁判文書公開の試行弁法」第5条には公表してはいけない裁判文書が次のように挙げられている。
(1)国の秘密に関わるもの
(2)商業秘密に関わるもの
(3)プライバシーに関わるもの
(4)当事者の一方または双方が未成年である場合
(5)法律に規定されている公に審理しない事件に関する裁判文書
(6)当事者の双方またはその一方がインタネットの公開をしないよう申請する場合
(7)その他の公開に適宜でない裁判文書
この規定は一地方のものであるとはいえ、基本的に中国法曹界の考え方を示しており、最高裁の規則もこれと同様のものに落着くと考える。
[コメント提供:チャイナ(華夏)正合知識産権代理事務所 所長弁理士 韓登営氏]
さて次回は、A社さんからお聞かせ頂いた貴重なびっくり経験談を(もちろんお許しを頂いた範囲で)掲載する予定です。どうぞお楽しみに!
(渉外部 柏原)