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2009.12.01

【未分類特許の紹介】(4)

過去3回に渡り、未分類特許をその発明者ごとに紹介してきた本シリーズ。最終回となる今回は、『文学演算子』でおなじみのM氏を紹介する。
M氏はこれまで、未分類特許を3件出願しており、未分類界の中堅的存在と考えられている。IPC付与特許も4件出願しているが、未分類特許とIPC付与特許のボーダーがかなり曖昧である。以下に、M氏が出願した全7件の公開公報番号とそのタイトルを示すが、どれが未分類特許で、どれがIPC付与特許か、あなたは判別できるだろうか?

1) 特開2001-190100 文学的演算子
2) 特開2004-254713 薬品等の効果の演算子文学的情報書
3) 特開2004-334821 文学演算子分布図
4) 特開2005-151784 入れ子様式構造の文学演算子
5) 特開2005-251148 定積分記号の文学演算子
6) 特開2006-158168 記号・番号・映像等を指定管理する文学演算子
7) 特開2006-221587 意向文学演算子

未分類特許は、1)、4)、6)。7件全て『文学演算子』に関するものであるので、かなり紛らわしい。この文学演算子こそ、M氏の発明の中核をなす技術なのである。文化系の代表的学問である『文学』と、理系の代表科目である数学やコンピュータ、論理学を連想させる『演算子』という、いかにもミスマッチなもの同士が合体した言葉。まさにミステリアスな響きである。この『文学演算子』とはいかなるものなのか。これを理解するためには、まずM氏が考える理想の『文学』について理解しなければならない。

通常の文学では、主人公を中心とした登場人物達の生き様、喜びや苦悩などが描かれる。M氏はこれを『表層文学』と呼んでいるが、M氏はこの表層文学だけでは決して満足しない。足りないと考えているのだ。登場人物が織りなす人間ドラマ(表層文学)に、登場人物の体内にあるDNA、細胞、タンパク因子、及び細胞集団が織りなすドラマ(これを『深層文学』と呼んでいる)を合体させた『二層文学』こそが、M氏の考える至極の文学(ドラマ)なのである。この二層文学を映像化し、表層文学と深層文学を同時に映像として表現することにより、作者の構想する登場人物の性格に上乗せしてシミュレーションを楽しめるようになるのである。そして、この体内DNAや細胞などの微少因子そのものや、それらを擬人化したものを『文学演算子』と定義しているのである。(特開2001-190100)

少々分かりづらいので、具体例で考えてみよう。刑事役である船越英一郎が、真犯人である片平なぎさを、断崖絶壁である福井県の東尋坊に追い詰めるという火曜サスペンス劇場のクライマックスシーンに於いて、本編とは違う画面左下の別画面に、船越英一郎の体内の白血球が新型インフルエンザウイルスを追い詰めるというシーンが同時に展開されるということなのだ。人質を取った片平なぎさを船越英一郎が説得し、無事に事件を解決できるかというドラマと、白血球がウイルスを撃退し、船越英一郎がインフルエンザに感染するのを未然に防げるかという2つのドラマが、何と1つの番組で同時に楽しめるということなのである。2画面表示機能があるテレビでは、別々のチャンネルのドラマを同時に表示させることは可能であるが、M氏の二層文学はこれとは全く違う。表層文学と深層文学という表裏一体のものを、同時に映像表現するということなのだ。まさに画期的。1粒で2度美味しい、お得感満載のドラマの出来上がりなのである。

さらにM氏によると、この生体内微少因子である文学演算子に、外界である視聴者が直接的に働きかけることにより、ドラマの筋書きが変化するのだという。水戸黄門が悪代官と手を組んで悪事を働いたり、暴れん坊将軍が大人しく江戸城で公務に勤しんでいたり、ジャックバウアーが途中で任務を放棄したりするのである。まさにタブーのないドラマ。面白いかどうかは別にして(少なくともM氏は面白いと思っている)、ともかく先が読めないドラマになることは間違いない。

2001年に初めて公開された文学演算子技術であるが、2005年に公開された特開2005-151784でさらなる飛躍を遂げることになる。その技術とは、文学演算子のコントロール方法に関するもので、文学演算子を入れ子人形の様式としてコントロールするというものである。以下の図1を参照いただきたい。図1中のD1、D2、D3に示されるように、大きな演算子の中に、次々により小さな演算子を含めていくと、P1、P2、P3のように大きな演算子の中により小さな演算子達を、互いに独立させて含めるなどを適宜に使用するということである。この方法により、演算子の位置的相互関係が明瞭になり、且つ機能的相互関係も明示され、演算子文学を理想的に展開することが出来るようになった(らしい)。

そして、さらにその約1年後、特開2006-158168にて、文学演算子技術は次世代の領域へと進化する。生体内微少因子とされてきた『ブンネコ』(文学演算子の別名、由来は不明)であるが、M氏は「必ずしも生体とは限らず、薬品、地質学的物質、天体などの中からも、立ち上げる事の可能な『役者』である」とその概念を拡張させたのである。そして、『ブンネコ』が60兆を超えて開発されることを想定し、高性能なブンネコ専用の管理端末装置を開発するというのである。ろ、ろ、ろ、60兆である。60兆の役者が織りなすドラマを管理する超絶的な処理性能をもつ専用端末、恐らく量子コンピュータであろうその画期的な装置が図2だ。

 現在の最速スーパーコンピュータをも遙かに凌駕する性能をもちながら、その外観は実に個性的。擬人化されたブンネコを彷彿とさせる形となっているではないか。肋骨をイメージしてシンメトリックに配置された「識別レーン(L)」などは、まさにネオゴシック様式の最終形と言っても過言ではない。もはや芸術の領域である。惜しむらくは、特許公報であるのだから、超絶的な演算性能を誇る装置の中身について、具体的な技術的説明が欲しかったところではある。果たして、これら60兆もの役者がおりなすドラマとは、一体どのようなものになるのか・・・。

図1:入れ子様式の文学演算子コントロール方法
図2:ブンネコ(文学演算子)管理専用端末

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