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2010.04.23
本稿では、前々回の日本、前回の米国と同様に中国の大学による特許出願の動向について、共同出願の面からその傾向について考察する。
図2は大学の単独出願および企業との共同出願、大学との共同出願割合の推移を表したものである。中国の大学出願における共同出願の割合は10%程度で、この傾向は近年ほぼ変わっていない。企業との共同出願が8~9%、他の大学との共同出願が1~2%となっている。
表1は2009年公開特許件数上位10大学を表したものであり、共願件数・割合を表している。清华大学(清華大学)を除き、他の大学は3%~10%代の割合を示している。清华大学は32%と高い割合を示しており、特に鸿富锦精密工业(深圳)有限公司との共同出願が198件と多い。鸿富锦精密工业は台湾に拠点を置く電子機器受託生産サービス(EMS)大手の富士康集団(FOXCONN)[別名:鸿海精密工業(Hon Hai Precision Industry)]の傘下企業である。
図3は2009年公開分について、大学全出願、大学共同出願それぞれの技術分野内訳(筆頭IPCメインクラス)を表したものである。大学全出願・共同出願ともに測定・試験や電気通信、有機化学、医学が上位を占める。なお、共同出願では電気通信、電気素子等の電気分野がより上位にきている。
中国特許出願全体が2000年以降急増するのに伴って、大学による出願も増加している傾向が明らかになった。大学と企業およびその他大学との共同出願は10%程度とそれほど高くはないが、清华大学のように積極的に企業との出願を進めている大学もみられる。
共願傾向から、大学は現在電気関連に重点を置いていることが分かったが、今後の件数の伸びとともにどの分野に注力していくのか、また質の面ではどの程度の強さがあるのかが注目となる。
(IP総研 コンサルティングソリューショングループ 研究員 伊藤寿)
参考文献
1) 「中国の科学技術力について」、JST 中国総合研究センター 中国化学技術力研究会、2008年9月