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2010.07.02
・民間企業(IBM)で特許・商標ポートフォリオの管理を行ってきた実務経験者
・IBMアジア・パシフィックの元副法務顧問
・AIPLAのメンバーであるなど、特許法曹界からの信望も厚い
Kappos氏の施策を一部ご紹介
・審査官の評価方法見直し
・面接の推奨
・PPH(特許審査ハイウェイ)の推奨
・Green Technologyに関するPilot Program導入
また審判案件の滞貨を減らすため、Kappos氏自らが担当審判官として合議に参加し審決基準を明示するなど、Kappos氏ならではの行動力発揮も注目されています。(詳細は、Kappos氏のUSPTOオフィシャルブログ:http://www.uspto.gov/blog/をご参照下さい。合議に参加したエピソードは2010年3月9日付のブログ記事)。
現地特許弁護士の声
米国特許弁護士はKappos氏の就任をどのように見ているのか、以下の3点について、3人の特許弁護士にインタビューしました。
1.Kappos氏が長官に任命されたとき、どう思いましたか?
2.Kappos氏の就任以来約8ヶ月経ち、今はどのような印象を持っていますか?
3.今後、Kappos氏に何を期待しますか?
Mr. Steve M. Gruskin氏(43歳、知財キャリア:19年、 所属:Sughrue Mion, PLLC)の声
1. I was very happy to hear the news.
2. After eight months have passed, his job confirms or exceeds our expectation.
3. I would expect him keep improving.
1. 非常に嬉しく思いましたね。私たちの事務所はKappos氏と仕事をした経験があるし、個人的にKappos氏を知っている弁護士もいるので。Kappos氏は長年知財業界で活躍しているだけでなく、多くの経験、産業界を見る目を持っているので、この視点から、USPTOを変革してくれるだろうと期待しました。
2. 8ヶ月が経過しましたが、Kappos氏は期待通り、もしくはそれ以上の仕事をしていると思います。8ヶ月はさして長い期間ではないにも関わらず、Kappos氏は数多くの施策を実行しています。彼は特許庁の哲学というものを変えたと私は思います。
3. これからも改善を続けてほしいと思います。現在の特許庁の課題の1つに審査の滞貨(backlog)がありますが、これは単なる数の問題ではないのです。つまり審査が遅れることにより、経済の発展に影響すると言えます。Kaposs氏には引き続き、審査の滞貨を減らす施策を多面的に行ってもらいたいですね。
Mr.Gary D. Fedorochko(45歳、知財キャリア:20年、 所属:Banner & Witcoff, Ltd.)の声
1. I was very pleased and thought Mr. Kappos would add an important customer’s perspective to PTO policy making.
2. Mr. Kappos has done an excellent job and quickly earned the trust and respect of the IP community as well as the examining corps.
3. I expect Mr. Kappos to continue to conduct industry round tables and solicit the comments of stakeholders and work together with the stakeholders and examining corps to improve the PTO.
1. 非常に喜ばしく、Kappos氏がPTOの方針作成に顧客からの視点を入れてくれるだろうと思いました。Kappos氏はIBMで知財弁護士として25年以上もの経験があります。IBMは毎年米国で最大の特許数を取得しており、Kappos氏は特許庁に、顧客としての視点をもらたすと期待していました。また、IPO(Intellectual Patent Owner)をはじめとする多くの団体でも熱心に活動していて知財業界で尊敬されているので、Kappos氏以前には、このような経験と視点を特許庁のポリシー策定に生かせることができた人物は、ほとんどいなかったと思います。
2. 素晴らしい仕事をしているし、審査官たちだけでなく、知財業界からも短期間で信頼と尊敬を得たと思います。Kappos氏は特許庁、出願人を含めた関係者の懸案を予見して対処し、支持を得ています。例えば、Kappos氏が長官になって間もなく、物議を呼んだ新ルールを取り下げました(http://www.uspto.gov/news/09_21.jsp参照)。また審査官の評価カウントシステムを変更するなど、数々の施策を行っています。審査官を含め、全ての関係者を巻き込んで共に改善を進めている印象を受けます。
3. これからも、業界の円卓会議を続け、関係者の意見を求め、知財関係者、審査官たちとともにPTO改善に努めてほしい。Kappos氏が得てきた圧倒的な信頼を見ても、今後もこの改革路線を続けるべきなことは明らかでしょう。Kappos氏はますます、審査の滞貨を減らすことと、庁の財源確保に焦点をあてていくことと思います。
Mr.Robert J. Gaybrick(年齢:? 知財キャリア:36年、所属:Morgan, Lewis & Bockius LLP)の声
1. I was hopeful that Mr. Kappos would provide the experience and leadership necessary to improve the USPTO.
2. Mr. Kappos is still fairly new on the job, but has shown leadership, transparency, and a commitment to improving all aspects of the USPTO.
3. I expect that Mr. Kappos will streamline USPTO operations and seek to increase revenue.
1. PTOを改善するのに必要な経験とリーダーシップを発揮してくれるだろうと思いました。ここ数年、PTOは、知財のバックグラウンドを持たない、政治任命によって選出された人に率いられていました。その間、審査官の気力は低下し、庁の収入も減少、特許査定率が40%近くにまで低下するなどのことが起き、審査にかかる時間が2倍以上にもなったのです。Kappos氏はIBMから来て、強固かつ柔軟な特許システムと、わが国の技術及び経済の安定との重要なつながりをよく理解しています。
2. まだこの仕事に就いたばかりなのに、リーダーシップ、透明性、そしてUSPTOの全ての側面について、改善のために責任を果たす姿勢を見せています。
3. PTOの業務を簡略化し、庁の収入を増やすことを期待します。Kappos氏は特許庁内の冗長な仕事を減らそうと努めています。例えばKappos氏は、審査官のトレーニングと(審査の)品質管理の改善を、審査の初期の段階で行うことを進めています。以前は、品質管理は審査が終わった後になされていて、“second pair of eyes”(品質管理のための「第二の目」と呼ばれるレビューシステム)として知られていました。
今回は、特許弁護士たちの声を一部英文のまま使用しております。
想像していた以上に「変革」は形となって現れている、そんな印象を受けるインタビュー結果となりました。今後Kappos長官がUSPTOをどのように変えていくのか、興味深いところです。弊社では今後も様々な情報を日々収集し、有益な情報を発信して参ります。
(記事担当:特許部 横倉)