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2012.01.06

【米国トレーニー日記】 第9回 Patent Agent試験について(勉強編)

ご無沙汰しておりましたが、今回はPatent Agent試験(勉強編)と称して、Patent Agent試験(Patent Bar)を受験するにあたってどのような勉強を行ったかについてお話させていただきます。なお、Patent Agent試験の一般的な情報につきましては、「第2回:Patent Agent試験について」をご参照下さい。

1.試験範囲
現在のPatent Agent試験の試験範囲は、特許庁ホームページで確認できます。基本的には、MPEPの8th edition, 8th revision(2010年7月改定版)がベースになっており、それに加えて幾つかの追加のGuidelineなども試験範囲になっています。

なお、実は今年の4月上旬までは、MPEPの8th edition, 4th revision(2005年10月改定版)をベースにした試験が行われていたので、試験勉強には少し古いヴァージョンのMPEPを使う必要がありました。このあたりは、日本ではちょっと考えにくい、アメリカっぽいところかと思います。

2.試験勉強に用いるツール
以下、試験勉強に用いるツールを順を追ってお話致します。

A.MPEP(Manual of Patent Examining Procedure)
上述のように、Patent Agent試験は基本的にはMPEPに基づいた試験ですので、MPEPは最も重要なツールの一つになります。ただし、MPEPを開いたご経験のある方であればお分かりかと思いますが、MPEPはボリュームが非常に多いので、全文を一から読むにはかなりの時間と労力が必要になります。試験勉強に限っていえば、一から順を追って読むのではなく、下記のツールと組み合わせて、必要に応じて参照するといった使い方が効率的です。

また、特許庁のサイトからはPDFヴァージョンとHTMLヴァージョンのいずれも参照できますが、試験勉強としては、PDFヴァージョンを参照することをお勧めします。というのも、実際の試験中に参照できるのはPDFヴァージョンのみで、検索機能がHTMLヴァージョンと若干異なるからです。

また、実際の試験中にはMPEPは章ごとにしか開くことができませんので、MPEPのどこに何が記載されているかについては、少なくとも章ごとには把握しておくとよいと思います。

B.過去問
試験勉強にあたり最も重要なツールのもう一つは、やはり過去問だと思います。試験勉強にあたり、駐在先の弁護士にどのような勉強をすればよいか質問したところ、とにかく過去問を解いてみることを勧められました。

過去問については、特許庁のホームページから、2003年(4月・10月)及び2002年(10月)の計3回分が入手できます。1回はそれぞれ午前50問・午後50問の100問ですので、これだけでも300問あり、なかなかのボリュームになります。

また、後述のMyPatentBar.comの“OLD EXAMS”で、それより前の過去問も入手することが可能です。

C.参考書籍(日本語)
また、日本語で書かれた参考書籍を1~2冊持っていると非常に役立ちます。特に、アメリカの特許制度にそれほどお詳しくない場合には、過去問やMPEPを使った勉強の前に、日本語の参考書籍に一通り目を通しておくとよいと思います。

なお、私の個人的なお勧めは、「MPEPの要点が解る米国特許制度解説(株式会社エイバックズーム)」です。 その理由と致しましては、(1)それほどボリュームが多くなく、コンパクトに纏まっており、(2)Patent Agent試験にも良く出題される箇所が概ね記載されており、(3)関連するMPEPやCFRがこまめに記載されていて参照しやすいことが挙げられます。

D.インターネットサイト
つづいて、便利なインターネットサイトが幾つかありますので、ご紹介致します。

(1) MyPatentBar.com (http://mypatentbar.com/)
上記Bでも少し触れましたが、このサイトから古い過去問も入手可能です。また、“REPEAT QUESTIONS”には、過去問の中から、特によく出る問題がピックアップされています。さらに、“EXAM QUESTIONS AND CONCEPTS”では、最近試験を受けた方が、「こんな問題が出ました」という書き込みを見ることができます。

上述のように、特許庁のホームページから入手できる過去問は比較的古いもののみですので、最近出題された問題の情報を入手できるという意味では、とても役立つサイトになります。ただし、情報が全て正確とは限りませんので、自分で正しい情報を取捨選択しながら、あくまで参考としてみるべきかと思います。

(2) Patent Bar Questions (http://patentbarquestions.com/Main_Page)
このサイトの“Questions reportedly asked in the Patent Bar Exam”という欄もお勧めです。

E.その他
他にも、1週間の試験対策コース(例えば、http://www.pli.edu/Patentbarreview/default.aspx)や英語の教材などもあるようですが、私はいずれも特には使用しませんでした。

3.実際の試験勉強
私は、まず、2003年の2回分、2002年の2回分、及び2001年の1回分の計500問の過去問を練習として解いてみました。そして、正解できなかった問題を中心に、MPEPの関連部分を読み込んで、理解を深めるようにしました。また、その際に、必要に応じて日本語の参考書籍も参照するようにしていました。

その後、実際の試験日が近づいてきてから、上記のインターネットサイトの情報で最近出題された問題をチェックしたり、過去問で間違えた問題を重点的に復習したりして、本番に臨みました。

実際に試験を受験した後の感想と致しましては、きちんとした準備をしていけば、あとは3時間+3時間の計6時間の試験に耐えられるかの体力勝負だと感じました。(英語の問題を6時間読み続けることは、なかなかハードです。)

4.その他
試験に一度不合格となると、30日間は再受験は不可になります。(実際は、再度の受験申請と試験会場の空きの確保で、30日以上かかるのではないかと思われます。)

なお、試験に不合格となってしまった場合には、特許庁に予約をすれば、自分が不合格になった試験の問題と解答を特許庁内でレビューできるようです。(ただし、コピーや書き写し等は不可のようです。)

5.最後に
私は幸い、駐在先の事務所に、Patent Agent試験を同時期に受験されるトレーニーが何名いらっしゃいましたので、その方々としばしば情報交換をしながら試験勉強を行っていました。そのことがいい刺激になり、勉強のモチベーションが維持できたと感じています。もしPatent Agent試験を受験される機会がございましたら、まずは勉強仲間を見つけることもお勧めです。試験後に飲むビールも、一人で飲むより美味しいです。

それでは、今回は以上となります。次回のトレーニー日記もよろしくお願い致します。

(特許部 横川)

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