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2012.03.19

【Cases & Trends】 “トロール vs. アグリゲーター” 特許管理会社がRPXを反トラスト法違反で提訴

 米国の人気知財ブログ “Patently-O”(運営者はミズーリ大ロースクールのデニス・クローチ准教授)が最近、興味深い訴訟を紹介していました。これは3月12日付の”RPX: Patent Aggregator and Alleged Antitrust Conspirator”と題する記事で、特許管理会社が「防衛的特許アグリゲーター」として知られるRPX社と、同社の会員である複数のハイテク企業を相手どり、反トラスト法(独禁法)違反を主張する訴訟を提起したというものです。
 クローチ准教授のブログ記事自体はかなり短く(訴状からの一節の紹介のみ)、「訴状はよく書かれており、一読に値する」として訴状のリンクが張られていました。早速読んでみたところ、なるほど法律論点だけでなく、「強力な投資ファンドなどのバックアップを受け巨大化する特許アグリゲーターが新たなパテント・マーケットプレイスを構築しつつある…」という最近耳にするトレンドの一端を垣間見たような気もします。もっとも、訴状であるだけに少し(かなり?)一方的な部分もあるようです(ちなみに訴状を提出した原告側代理事務所は、トロール/NPE側弁護士として広く知られるレイモンド・P・ニロ弁護士率いる事務所です)。
 以下、あくまで原告側の言い分というひとつの「情報」として、訴えの概要をご紹介します。

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カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所
原告: Cascades Computer Innovation LLC.
被告: RPX Corporation, HTC Corporation, LG Electronics, Inc., Motorola Mobility Holdings, Inc.
Samsung Electronics Co., Ltd., Dell Inc.
提訴日: 2012年3月7日

訴状
 原告Cascadesはイリノイ州法人であり、Elbrus International Ltd.およびElbrus Svaog L.P.(以下併せて”Elbrus”)が保有する米特許7,065,750号(”Method and Apparatus for Preserving Precise Exceptions in Binary Translated Code”)を含む38件の特許ポートフォリオについてライセンス供与と権利行使をする独占権を有している。
 被告RPXはデラウェア州法人であり、同社会員(現在の会員数は110社超)のために特許を収集・獲得する「特許アグリゲーター」である。RPXの会員企業は6万ドルから600万ドルの会費を支払うことにより、収集された特許のライセンスを受けられる。現在RPXは、様々な分野の特許1,600件を集めており、さらに最近ではAlcatel-Lucentの29,000件の特許について独占的なライセンス権を獲得している。
 被告HTCは台湾法人であり、本裁判所管轄地区において、携帯電話の販売、マーケティング、輸入行為を行っている。……被告HTC, LG, Motorola, Samsung, Dellは、アンドロイドOSを利用する携帯電話、コンピューター・タブレットなどの無線通信用端末を製造・販売しており、いずれも(アンドロイドOSの所有者であるグーグルと同様)RPXの会員企業である。これら被告企業は、アンドロイドOSを使う携帯電話やタブレット端末の米国販売の95%を占めており、その他アンドロイド関連市場においても重要な位置を占めている。
 当初RPXは、会員企業のためにCascades特許のすべてについてライセンスを取得すべく交渉を行ったが、会員企業の一部がライセンス取引のための出資を拒否したため、交渉は打ち切られた。その後、RPXと被告企業はCascadesのライセンシングや権利行使に対抗すべく、共同で対応することとし、個別にライセンス交渉は行わないよう申し合わせた。彼らは共同防衛協定を結び、交渉はRPXを通してのみ行うことにより、市場価格よりはるかに低い実施料を引き出そうとした。……その結果、米国アンドロイド市場の95%以上を占める被告企業に対するCascadesのライセンス交渉はことごとく失敗に終わったのである……。
 このような共同行為は、Cascadesによる同社特許技術のライセンス市場における競争を不当に制限するものであり、シャーマン法第1条違反に該当する。
 被告の行為は、Cascades特許技術のライセンス条件や価格固定を目的とした共同謀議を構成し、シャーマン法第1条に基づく当然違法に該当する。
 被告の行為は、取引に対する水平的ボイコットおよび協調的拒否を構成し、シャーマン法第1条の当然違法および合理の原則に基づく違法に該当する。
 被告の行為はまた、Cascadesが自社の特許技術をライセンスする条件に対する買い手独占の力(monopsony power)を、反競争的目的をもって獲得・維持しようとするものであり、シャーマン法第2条に違反に該当する。
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 なかなか上手くまとめることができませんので、内容紹介はこの程度とし、全体構成がわかるよう、訴状中の各見出しを以下に記しておきます。この訴訟が審理され、判決が出るようなことがあれば、またこのコーナーでご紹介していきたいと思います。

訴状および陪審審理請求(Complaint and Demand for Jury Trial) 
当事者
管轄権
Cascades and Elbrus
Cascadesの特許およびグーグルのアンドロイドOS
アンチ・トロール/アンチNPEの共同謀議
RPXのビジネスモデル
RPX主導による共同の取引拒否
第1救済請求 - 連邦反トラスト法違反
 取引を制限する団結と共同謀議
 共同謀議と団結の効果
 競争の阻害
 Cascadesの被害
第2救済請求 - 買い手独占、買い手独占の共同謀議および企て
第3救済請求 - カートライト法違反(カリフォルニア州ビジネス・プロフェッションズ法典§16700以下)
第4救済請求 - カリフォルニア州不正競争法違反(カリフォルニア州ビジネス・プロフェッションズ法典§17200以下)

⇒ 訴状原文(全23頁) http://www.courthousenews.com/2012/03/09/CascadesFix.pdf

(渉外部/事業開発室 飯野)

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