IP NEWS知財ニュース

  • 知財情報
  • アーカイブ

2012.07.26

特許出願から見た洋上風力発電の現状 (後編)

 前編では、風力発電とりわけ「洋上」風力発電について、それを取り巻く環境と特許出願状況を取り上げた。後編では、諸外国において、どのような企業が風力発電に取り組んでいるかについて取り上げる。

各企業の風力発電への取り組み
 風力発電企業としては、2010 年の世界市場シェアー順に、Vestas Window System(ヴェスタ)〔デンマーク〕、Sinovel Wind(華鋭風電)〔中国〕、GE Energy/General Electric(GE)〔米国〕、Goldwind(金風科技)〔中国〕、Enercon(エネルコン)〔ドイツ〕、Suzlon Energy(スズロン・エナジー)〔インド〕、Dongfang(東方電気)〔中国〕、Gamesa Eolica(ガメサ)〔スペイン〕、Siemens Energy/Siemens〔ドイツ〕の9社が有名だ。
 その他、ドイツNo.3(ドイツNo.1とNo.2は上記を参照)のRepower Systems(リパワーシステムズ)〔ドイツ〕やMitsubishi Heavy Industries(三菱重工)〔日本〕、ALSTOM(アルストム)〔フランス〕、DeWind〔ドイツ〕、Nordex(ノルデックス)〔ドイツ〕、Fuhrlander(ファーランダー)〔ドイツ〕、Pfleiderer Wind Energy〔ドイツ〕、Zephyros(ゼフィス) 〔オランダ〕 、Lagerwey(ラガウェイ)〔オランダ〕、Wind Masterといった企業もある。
 なお、浮体式洋上風力発電では、ノルウェーのStatoilHydro社がカルモイ沖10Kmの海域で、2009年から実証実験を行っていることが知られている。(*1)

(*1)世界初の浮体式洋上風力発電 http://www.statoilhydro.com/en/NewsAndMedia/News/2008/Pages/hywind_fullscale.aspx

 それでは、これらの風力発電参入企業について、洋上風力発電の特許出願件数と企業動向をまとめてみる。

 ここでは、表1の各企業の洋上風力発電特許出願件数と企業情報から、どのようなことが読み取れるかを紹介する。

 まず、2009年から浮体式洋上風力発電に取り組んでいるノルウェーのStatoilHydro社の風力発電特許7件のうち、6件は浮体式洋上風力発電特許であり、自国への出願は欧州特許でカバーしているように推察される。
 そして、韓国の造船企業は海洋開発事業への展開を狙っており、欧米の風力発電企業を買収し、自社のもつ海洋開発技術との組み合わせで、洋上風力発電事業開発を進めようとしている。中国とインドの各企業も、欧米企業を買収し、すでに風力発電事業に参入しているが、技術開発の傾注はこれからの段階のようだ。そして、洋上風力発電各企業は自社の拠点国だけでなく、自社が市場として意識する地域/国にも特許出願を行っている。

 さらには、各企業の拠点国以外への特許出願には微妙な差異があり、各企業の意識する市場地域/市場国に差があるものとみられる。

 特許出願動向と企業動向から、浮体式洋上発電特許の出願については、ノルウェーのStatoilHydro社が先行しているようであるが、今後の洋上発電特許/浮体式洋上風力発電特許出願は、韓国企業の進出、欧米企業のさらなる中国市場進出、中国企業の欧米企業買収による進出を反映した出願動向になると推測される。

国際技術標準化の主導権を狙う韓国
 浮体式洋上風力発電は、ノルウェーのStatoil Hydro社が2009年から実証実験を行っているが、実用レベルのものではなく、国際技術標準化の動きもこれからと思われていた。

 ところが、有機EL照明やプリンテッド・エレクトロニクスの国際標準化で、すでに積極的な活動をしている韓国(*2)は、浮体式洋上風力発電でも、いち早くIEC(International Electrotechnical Commission)に、国際標準化推進の枠組み設置を提案した。そして、2011年5月にはその提案が認められ、IECの風力発電を扱う技術委員会88(TC88)の中に、浮体式洋上風力発電を扱うワーキンググループ(WG)が設置された。(*3)

(*2)韓国の国際技術標準化活動 http://www.soumu.go.jp/main_content/000134879.pdf
(*3)韓国の浮体式洋上風力発電の国際技術標準化活動への取り組み http://www.tkfd.or.jp/admin/files/2012-01.pdf

 提案国である韓国は、WG議長国就任と、国際技術標準化の議論を主導する立場を確保したわけである。しかしながら、韓国提案の技術仕様書の内容が不十分であったため、2011年9月開催の第1回会合で、韓国案は各国の賛同を得られず、あらためて国際技術標準の基準に盛り込む内容から検討を始めることになった。とはいえ、韓国が議長国であることには変わりはない。
 しかも、浮体式洋上風力発電の実証実験に最初に取り組み、実証的なデータを持つノルウェーが2011年10月現在この委員会に参加してきていないことも気がかりである。

表1 風力発電参入企業の洋上風力発電への取り組み

関連記事

お役立ち資料
メールマガジン