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2013.01.30

【Cases & Trends】インド発、新たな南北問題の火種(?) - 外国親会社へのロイヤルティ支払い増加に高まる不満の声

 2012年12月から2013年の年明けにかけ、インドの主要紙や経済専門誌、知財専門ブログなどで「ロイヤルティ(またはロイヤリティ)支払い」をタイトルに含む記事、レポートが相次いで目に入ってきました。- 「インド企業の成長を阻害する高額なロイヤルティ支払い」(financial express 12/20/2012)、「ロイヤルティで忠誠心を示す(Showing loyalty with royalty)」(Business Standard 12/21/2012)、「子会社によるロイヤルティ支払い:少数株主の災いの元」(Spicy IP 12/23/2012)、「親会社へのロイヤルティが投資家の怒りを買う」(The Times of India 12/26/2012)、「ロイヤルティ支払いと企業統治」(India CorpLaw 12/31/2012)、「多国籍企業に吸い取られるロイヤルティ支払い ? 独立監督局と少数株主の議決権が解決策か?」(Spicy IP 1/9/2013)、「マクドナルドがインド法人により高額のロイヤルティ支払いを要求」(Business Standard 1/9/2013) ……。

 これらが扱っているテーマはいずれも同じもの。すなわち海外の親会社にインド子会社が支払うロイヤルティの額がこの2,3年で増加(高額化)しており、親会社以外の少数株主への配当(へ回るべき純利益)が圧縮される懸念もある、という問題提起です。これらの報道、レポートによると、発端は2009年12月16日に発行され、即日施行されたインド商工省・産業政策促進局(DIPP)の『プレスノート 2009年8月号』です(*プレスノートとはDIPPが発行する通達であり、外資規制のための基本法令という位置づけ)。プレスノート2009年8月号により、「1999年外国為替管理法」による技術・特許ロイヤルティや商標・ブランド使用料に関する上限が以下の通り撤廃されたのです。

*一括払い: (2009年12月16日前) 200万米ドルを超えない額(超える場合は事前承認要)
    ⇒ 制限なし(事後届出は要)
*ランニングロイヤルティ: (2009年12月16日前) 国内販売額の5%、輸出額の8%を超えない額
    ⇒ 制限なし(事後届出は要)
*商標・ブランド使用料: (2009年12月16日前) 国内販売の1%、輸出額の2%を超えない額
  ⇒ 制限なし(事後届出は要)

 規制撤廃後のロイヤルティ高額化をめぐる論争は以前から存在し、個々のケースにおいて訴訟に発展するものまでありました。今回改めて議論をわきあがらせたのが、インドの投資顧問会社 ”Institutional Investor Advisory Services (IiAS)” が発表した『ロイヤルティ支払いと少数株主』と題するレポート(12/11/2012)やBusiness Standard紙が発表した調査結果です(12/21/2012)。
 BS紙によれば、ムンバイ500種指数の採用銘柄企業75社を調べたところ、2012年度に支払った特許ロイヤルティは4年前に比べ3倍になったが、この間の売上は79.6パーセント増、純利益は31.2パーセント増にとどまっている。例えばBASFインディアが4年前に親会社に支払ったロイヤルティが2,680万ルピーなのに対し2012年度は3億400万ルピー、Akzo Novelインド法人は4年前6,500万ルピーに対し2012年度は3億6千万ルピーと5倍以上に跳ね上がっている。しかし、いずれも売上高、純利益はこれに比べるべくもない、といいます。
 このようなリポートを受けて次々と出てきたのが前掲の記事やコメントというわけです。インドの弁護士や法学者が様々な意見を寄せているSpicy IPは、少数株主が配当を得られない状況にもかかわらず主要株主(外国の親会社)がロイヤルティ支払いという形で利益を得ており、そのロイヤルティが関連法の下でいかに定められているかが不透明であると指摘しています。

 これらの指摘がどれだけ客観的で、バランスのとれたものであるかはわかりません。ひとつ言えることは、インドのような新興国では、外資を積極的に呼び込みつつも、このような不満や見解の齟齬が「知財南北問題」という形で現れるものであり、今回の議論もそのひとつとして留意しておく必要があるのでしょう。2011年4月には、インドの弁護士、法学者グループが欧米医薬メーカーによるAIDSやガン治療薬の特許に関する実施陳述書(特許法第146条に基づく要件)の記載、提出が不十分、不誠実と訴えかけて、特許庁に対する情報公開要求を認めさせ、最終的にすべての権利者が提出した陳述書をインド特許庁のオフィシャルサイトで公開させることまで実現させた事例がありました。

(営業推進部 飯野)

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